花の確執

「ところでイチカ。さっき話していたDQN先輩ってなにかしら?」

「あぁ、そうそう……さっき話した通り、梨紗先輩と入れ替わりに地方から異動とファーストへの昇格を果たしてきた先輩ひとがいるんスけど……これが性格に難ありなDQNで………」

「実際は梨紗先輩がリコリコに行って空いた席を保険・・として埋めるための異動と昇格なんですが……どうも『自分の方が優秀だから呼ばれた』と勘違いしているようでして……」

「フキ先輩程じゃないッスけど、指揮官能力が高く、おまけに口も上手いもんだから……前々からたきなちゃんに敵対心を持っていた子達をあっという間に丸め込んで自分の取り巻きにしちゃったッス……」

「なるほど……でも、それがなんでたきなの悪い噂の拡散に繋がるのかしら?」

「どうやらDQN先輩が取り巻きにした子達を使って、たきなちゃんのあることないことを織り混ぜた噂を吹聴しているみたいッス。」

「はぁ?勘違いで調子に乗るのはともかく、なんで態々わざわざそんなことをするのよ?」

『DQN先輩』という方が取り巻きの方達を使ってたきなさんの悪い噂を流しているという話に対し、梨紗さんは怪訝な表情でそう言う。

確かに……どうしてそんなことを……

「あぁ……来弥がこの間、盗み聞きしたことなんスけど………『面白いから』……らしいッス……」

「………は?」

「………」

気まずそうにしながらそう答えるイチカさんの言葉に梨紗さんは無表情になりながらそう言い、千景さんも無表情になりました……

………え?

「あの人が言うには『自分の口車に周りが乗せられて、一人の人間を攻撃するのが面白い』ってことらしいです。」

「一人の人間を攻撃……ってそいつが来た時にはたきなは既に本部ここにはいなかったじゃない。」

「それが……」

「確かに本人はいなかったッスけど、たきなちゃんが本部ここに来た時に『自分の『居場所』がない』って知った時の顔を見るのが楽しみで仕方がないってことらしいッス。」

「そんな………何故、そんなことを………」

「………歪んだ環境、心を持って育ったのね………」

「………嫌なことを思い出したわ………」

申し訳なさそうにそう教えてくれる来弥さんとイチカさんの言葉に私と梨紗さんがそう言うなか、千景さんはしかめっつらをしながらそう言う。

もしかして、千景さんは現代このじだいでも何か……

「……そいつは何て言うのかしら?」

私がそう思っているなか、梨紗さんがそうイチカさんと来弥さんに尋ねる。

「え~と、あの人、何て言ったッスかね……井原いばら……」

井原いばら椿つばき。」

「あぁ!そうそう!井原椿ッス!いかにも女王様気質で嫌な先輩ッス!!」

「!?井原……椿……っ!!」

「?千景さん?」

急にどうしたのでしょうか……?

「その井原椿って……アレ・・のことかしら?」

何処か嫌悪感をあらわにしながら名前を反芻はんすうする千景さんに首を傾げるなか、梨紗さんがある方向を指差しながらそう尋ねる。

見ると、長い黒髪に梨紗さんや千束さんと同じ赤い制服姿の女性が意地悪そうな笑みを浮かべながら、こちらを見ていました。

「ーーーーーー、ーーーーーー。」

「ッ……」

井原椿その女性はこちらに向かって何かを呟くや否やクスクスと笑いながら奥の方へと消えていきました。

「あちゃー……」

「あの様子だとさっきのたきなのことも見てたわね……趣味が悪いわ………」

「正直、あの人を野放しにして、たきなさんの噂が充満されたら風紀が乱れるとフキ先輩も問題視していて、私達と協力してせめて嘘の部分・・・・だけでも払拭ふっしょくしようとはしたんですが……」

「梨紗先輩の言う『悪意の拡散』を一定の人数まで抑えることはできたんスけど、見てわかる通り、空気は最悪。フキ先輩もライセンスの更新が遅れて、今日がギリギリになっちゃったッス。」

「そう……それにしても珍しいわね、千景。貴女がそこまで怒りをあらわにするなんて……」

「………あの女とは嫌な面識があるの。」

嫌な面識…?まさか………っ!?

「もしかして、リコリスになる前からの知り合いッスか?」

「小学校の時の同級生よ………学校の皆をまとめあげて、散々痛め付けてくれたわ。」

「そう………」

未だに嫌悪感を露にしながらそう答える千景さんの言葉に、梨紗さんは冷たい怒りの眼になりながらそう言う。

「そうッスか………」

イチカさんも同じ気持ちなのか、その細い眼を僅かに開けながら冷たい怒りを宿しているのがわかります。

「お待たせしました、鳴護さん、郡さん、上里様。司令は現在、会議を終え、医療棟の休憩室に顔を出しているとのことです。」

そんななか、受付の人がそう声を掛けてきました。

……自分が呼び出したのにそっちに行ったんですか?
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