間章・備えと思惑
???side
アラブの豪商、『ウィナー財団』が日本での技術研究のために住宅街から離れた土地を購入し建設したオフィスビル…『ウィナーテクノカンパニー』……
「………」
十日前の深夜、そのビルの屋上にて、数人の作業員を引き連れた一人の青年が夜空を見上げる。
「……戻ってきたか……」
長い前髪で片目を隠したその青年が呟いた直後、地下研究施設を壊滅させた仮面の男 が目の前に降り立つ。
直後、その胸元から開いていき、まるでスーツを脱ぐかのように中からダークブラウンの髪にプルシアンブルーの瞳の青年が出てくる。
「ご苦労だったな……ヒイロ。」
青年が出てきた後、直立不動で停止しているG装備 を作業員達がビル内へと運び入れるなか、前髪の青年はダークブラウンの青年にそう話しかける。
「あぁ、トロワ……他の三人は?」
対するダークブラウンの青年…ヒイロ・ユイはそう前髪の青年に尋ねる。
「もう既に揃っている……」
対する前髪の青年…トロワ・バートンはそう言いながら、ヒイロと共に専用エレベーターへと乗り込む。
ポォーン
専用エレベーターで下ること数分後、地下一階で降りた二人は『特殊開発部門』と書かれた扉の前で立ち止まる。
中には金髪の少年とパソコンにかじりついている茶髪を三つ編みにした少年、中国人系統の黒髪の少年がいる。
「やぁ、ヒイロ。ウイングはどうだった?」
部屋に入ってきた二人を確認した金髪の少年…『ウィナーテクノカンパニー』の現社長であるカトル・ラバーバ・ウィナーがそうヒイロに尋ねる。
「機体に性能含めて問題ない……デュオ、状況はどうだ?」
対するヒイロはそう答えながら、三つ編みの少年にそう尋ねる。
「以前、ウォールナットが空けてくれた穴 を使ってDAにハッキングかけてみたが……やっぱおまえがぶっ潰してきたあの地下研究施設のことは『地盤沈下による自然災害』ということにするつもりらしい。」
対する三つ編みの少年…デュオ・マックスウェルは椅子の背凭 れに凭 れ込みながら、両手を後頭部にやりながらそう答える。
「世間には知られない、水面下での戦いになるということか……」
「まぁ、DA が勝手に情報を隠してくれる分、俺達は楽になるから良いけどな……治安維持の為に孤児を集めて、俺達 みたいなのに仕立て上げているっつうのは気に入らねぇけど………」
中国人系統の少年…張 五飛 が腕組みしながらそう言うなか、デュオはDAに対する嫌悪感を顕 にしながらそう言う。
「………」
「DA にとってはそういう生き方 しか知らないということだろう。」
「決して許される行為ではないが、目下の敵ではない。」
そんなデュオの言葉に同意しているのか、ヒイロが険しい表情を浮かべるなか、五飛とトロワがそう言う。
「わかってるよ。
俺達だって前世 は似たようなもん だしな。」
「話を戻そっか……ヒイロが以前、鹵獲 したリーオー、それからウイングの戦闘データを元に残りの四機 も僕の方で着手しているよ。」
そんな二人にデュオがそう言うなか、カトルがそう報告する。
「流石社長♪仕事が早い♪」
「五飛、そっちはどうだった?」
そんなカトルにデュオが揶揄 いながらそう言うなか、ヒイロがそう五飛に尋ねる。
「この世界 における厄介になる組織を三つ確認した……一つは『ホワイトファング』だ……」
「ッ……ホワイトファング……」
「この世界 にも彼奴 らがいるのかよ……」
「実態は俺達が知るものとは違うようだがな……火種になり得ることには変わらん……」
対する五飛からの報告にヒイロとデュオがそう言うなか、事前に聞いていたトロワは真剣な表情でそう言う。
「ついでに言うとヒイロ、おまえが先程、壊滅させた地下研究施設も奴らの所有物とみて間違いなさそうだ。」
「そうか……」
「もう一つは『アラン機関』。表向きは慈善団体だが、裏ではコソコソと妙な動きが多く信用ならん。」
「あぁ~、今、テレビでよく観るアレかぁ……」
「世間でも、お金の出所 や支援対象の選定の仕方とか色々と言われてますもんね……」
「………」
「そして、最後の一つ。此処がリーオーを始めとするMS 擬きを開発した組織だ。数年前にホワイトファングからの襲撃を受けて壊滅、MS擬きもその時に奪取されたそうだ。」
「けど生き残った娘を中心に再始動。密かに奪われたそれらを破壊しているそうだよ。だけど、彼女達の技術力はハッキリ言ってオーバーテクノロジー。警戒はしておいた方が良いかもしれないね。」
「因みにヒイロ、おまえはその娘とさっきの地下研究施設で会ってるぜ。」
「………」
そう言うデュオの言葉に、ヒイロは先程の地下研究施設で出会した梨紗のことを思い起こす。
「喫茶リコリコに所属しているリコリス、鳴護梨紗が組織の中心だ。」
「……組織としての名は?」
「元々の名前は『朝鳴技術研究所』。この世界のプリベンターの支部だったそうだよ。だから、『朝鳴技研』とでも呼ぶべきかな。」
梨紗達の組織の名前について、そう尋ねるヒイロに対し、カトルはそう答える。
「そうか……」
「で、ヒイロは何か収穫はあったか?」
「あぁ……地下研究施設を破壊している最中に回収したものだが……」
そう尋ねるデュオにそう答えながら、ヒイロは懐から折れた刀身の切っ先…ブラッディーリーフに折られた千景のソードを取り出した。
アラブの豪商、『ウィナー財団』が日本での技術研究のために住宅街から離れた土地を購入し建設したオフィスビル…『ウィナーテクノカンパニー』……
「………」
十日前の深夜、そのビルの屋上にて、数人の作業員を引き連れた一人の青年が夜空を見上げる。
「……戻ってきたか……」
長い前髪で片目を隠したその青年が呟いた直後、地下研究施設を壊滅させた
直後、その胸元から開いていき、まるでスーツを脱ぐかのように中からダークブラウンの髪にプルシアンブルーの瞳の青年が出てくる。
「ご苦労だったな……ヒイロ。」
青年が出てきた後、直立不動で停止している
「あぁ、トロワ……他の三人は?」
対するダークブラウンの青年…ヒイロ・ユイはそう前髪の青年に尋ねる。
「もう既に揃っている……」
対する前髪の青年…トロワ・バートンはそう言いながら、ヒイロと共に専用エレベーターへと乗り込む。
ポォーン
専用エレベーターで下ること数分後、地下一階で降りた二人は『特殊開発部門』と書かれた扉の前で立ち止まる。
中には金髪の少年とパソコンにかじりついている茶髪を三つ編みにした少年、中国人系統の黒髪の少年がいる。
「やぁ、ヒイロ。ウイングはどうだった?」
部屋に入ってきた二人を確認した金髪の少年…『ウィナーテクノカンパニー』の現社長であるカトル・ラバーバ・ウィナーがそうヒイロに尋ねる。
「機体に性能含めて問題ない……デュオ、状況はどうだ?」
対するヒイロはそう答えながら、三つ編みの少年にそう尋ねる。
「以前、ウォールナットが空けてくれた
対する三つ編みの少年…デュオ・マックスウェルは椅子の
「世間には知られない、水面下での戦いになるということか……」
「まぁ、
中国人系統の少年…
「………」
「
「決して許される行為ではないが、目下の敵ではない。」
そんなデュオの言葉に同意しているのか、ヒイロが険しい表情を浮かべるなか、五飛とトロワがそう言う。
「わかってるよ。
俺達だって
「話を戻そっか……ヒイロが以前、
そんな二人にデュオがそう言うなか、カトルがそう報告する。
「流石社長♪仕事が早い♪」
「五飛、そっちはどうだった?」
そんなカトルにデュオが
「
「ッ……ホワイトファング……」
「
「実態は俺達が知るものとは違うようだがな……火種になり得ることには変わらん……」
対する五飛からの報告にヒイロとデュオがそう言うなか、事前に聞いていたトロワは真剣な表情でそう言う。
「ついでに言うとヒイロ、おまえが先程、壊滅させた地下研究施設も奴らの所有物とみて間違いなさそうだ。」
「そうか……」
「もう一つは『アラン機関』。表向きは慈善団体だが、裏ではコソコソと妙な動きが多く信用ならん。」
「あぁ~、今、テレビでよく観るアレかぁ……」
「世間でも、お金の
「………」
「そして、最後の一つ。此処がリーオーを始めとする
「けど生き残った娘を中心に再始動。密かに奪われたそれらを破壊しているそうだよ。だけど、彼女達の技術力はハッキリ言ってオーバーテクノロジー。警戒はしておいた方が良いかもしれないね。」
「因みにヒイロ、おまえはその娘とさっきの地下研究施設で会ってるぜ。」
「………」
そう言うデュオの言葉に、ヒイロは先程の地下研究施設で出会した梨紗のことを思い起こす。
「喫茶リコリコに所属しているリコリス、鳴護梨紗が組織の中心だ。」
「……組織としての名は?」
「元々の名前は『朝鳴技術研究所』。この世界のプリベンターの支部だったそうだよ。だから、『朝鳴技研』とでも呼ぶべきかな。」
梨紗達の組織の名前について、そう尋ねるヒイロに対し、カトルはそう答える。
「そうか……」
「で、ヒイロは何か収穫はあったか?」
「あぁ……地下研究施設を破壊している最中に回収したものだが……」
そう尋ねるデュオにそう答えながら、ヒイロは懐から折れた刀身の切っ先…ブラッディーリーフに折られた千景のソードを取り出した。