間章・備えと思惑

「はい。ミカさんが制作したものをモデルにFドックこちらの職員であるホリィさんが改良版を制作しました。」

「おぉーっ!新しい弾!!ねぇ、試し撃ちして良い?」

そんなミカにノアがそう説明するなか、千束は目を輝かせながらそう言う。

「勿論です。近くに射撃場があるんですか?」

「いや。店の地下に防音性が高い射撃場ものを造ってある……カネは掛かったがな………」

「そうですか……」

「たきな!折角だから、一緒に試し撃ちしよっ!!」

「はい。」

ミカがそう説明するなか、千束とたきなはそう言いながら地下射撃場に向かう。

「それと……こちらはクルミさんに……」

その後、アコがそう言いながら今度は顔らしきデザインがある、ソフトボールよりやや大きめの黄色い球体を取り出し、梨紗に手渡す。

「ありがとう。アコ……クルミ。」

ガラッ!…スタッ!!

「なんだぁ?梨紗……」

梨紗に呼ばれたクルミはそう言いながら、押し入れから出てくる。

「……はい。これ、約束していた報酬よ。」

そんなクルミに対し、梨紗はそう言いながら球体を手渡す。

「なんだこれ?玩具か?」

受け取ったクルミは首を傾げながら、そう言いながら球体を観察する。

「テヤンデーイ!」

が、次の瞬間、球体の目の部分が青く点滅し、左右から耳のようなものがパカパカと動き出すと同時に球体が機械の声を発し始める。

「「「!?」」」

「!?うわっ!?」

そのことにミカとミズキ、ひなたの三人が驚愕の表情を浮かべるなか、クルミも驚きながら思わず放り投げる。

「ハロデーイ!」

が、球体はそう言いながら、ピョンピョンと跳ねる。

「「………」」

「……ハロ。」

ノアとアコがカフェラテとブレンドを堪能するなか、梨紗がそう言いながら差し出した右手に球体は飛び乗る。

「ハロ、ゲンキ。リサ、ゲンキカー?」

「えぇ、元気よ。」

「り、梨紗。なんだ?そいつは……」

「この子は『ハロ』。Fドックうちで造られたペットロボよ。」

「ハロ、ゲンキ。オマエ、ゲンキカー?」

困惑しながらそう尋ねるクルミに梨紗がそう説明するなか、球体…ハロはそう尋ねてくる。

「えっと………クルミ、元気だ。」

対するクルミは戸惑いながらもそう答える。

「ハロハロ、クルミデーイ!」

「うおっ!?」

次の瞬間、ハロはその目を二、三回点滅させるや否や、そう言いながらクルミの周りをピョンピョンと跳び跳ねる。

「フフ……遊んでほしいのだと思いますよ。」

「そ、そうなのか?」

「マイドマイド!!」

「ハハ……なかなか個性的なロボットだな……」

「っていうかなんで関西弁なのよ………」

「でも、可愛らしいです。」

クルミの周りを跳び跳ねるハロを見て、ミカは乾いた笑みを浮かべながらそう言い、ミズキがそうツッコミを入れるなか、ひなたは純粋な笑顔でそう言う。

「ノア、例のこと・・・・でちょっと………」

「はい。あちらで少し話しましょうか………」

そんななか、梨紗とノアがそう話しながら、密かにミカ達から少しだけ離れた位置に移動する。

「ノア。データの確認は取れた?」

「はい。ただ、不正なアクセスログは確認出来ませんでした……」

移動した後、真剣な表情でそう尋ねる梨紗に対し、ノアはそう答える。

「そう………だとしたら、あの機体は一体何処から………」

「わかりません………ですが、Sレベルへのアクセス権があるのは………」

「私と貴女の二人だけ。千景にもまだAレベルまでしか渡していない………」

「そうですよね……ですが、Fドックうち情報データは全て、『ゼロシステム』によって管理されています。それに加えてSレベルは私達の生体認証も必要です。ログも残さずに不正アクセスすることは不可能です………」

「同感よ。何故、あの機体が………」

約十日前の地下研究施設内に突如現れ、リーオーや施設そのものを破壊し尽くした謎の仮面の男ウイングガンダムについて、梨紗とノアはそう話し合いながら頭を悩ませる。

(恐らくウイングガンダムあのおとこも私達と同じように『G装備の破壊』を目的に動いている………だけど、DAやFドックわたしたち以外で一体誰が何のために………)

仮面の男ウイングガンダムの真意について、梨紗はそう思いながら考えを巡らせる。

「梨紗姉!千景!凄いよっ!このタマっ!!先生のタマと同じ非殺傷弾なのに、狙った所に真っ直ぐ飛ぶっ!!」

そんななか、千束が興奮した様子でそう言いながら、たきなと共に戻ってくる。

「フフ……Fドックこちらで開発した強化プラ樹脂と強化金属で重さのバランスの安定化、更に形状を通常の実弾に近付けつつも非殺傷能力を維持。結果、弾速・弾道が安定した非殺傷弾が完成したとホリィさんが仰ってましたが……上手くいったみたいですね。」

「この銃も正直凄いです……軽くなっているから発射時の反動が上がっていると思ってましたが……反動を全く感じないどころか凄く扱いやすいです………」

そんな千束を見て、アコが笑顔でそう言うなか、たきなは新生M&Pを見ながらそう言う。

「まぁ、中身もかなり弄ってあるからね。反動が内部に抑え込めるように、Fドックうちの技術が詰めてあるのよ。」

「見た目は普通でも、中身はトンデモ技術の塊ってことね。」

「……中がどうなっているのか、気になるけど……」

「元に戻せる自信がないですね……」

「ですので、定期メンテナンスの際は必ず梨紗姉さんに渡して下さいね。」

「………」

新生デトニクスと新生M&Pを見ながらそう言う千束とたきなにノアがそう言うなか、ひなたは窓から空を見上げる。

(若葉ちゃん……何時いつか必ず千景さんと共に迎えに行きますからね………)

今は敵側に回ってしまっている想い人おさななじみを想いながら、ひなたは静かにそう誓った。
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