命の重さと確執と・・・

ブロロロ……ッ!!

「暫くはリコリスとしての仕事はお休みだねぇ…」

「……仕方、ないですよね………」

リコリコへの道中、助手席から外を眺めながらそう言う千束に対し、たきなは運転しながらそう言う。

「まぁ、今後のことを考えれば、梨紗姉達のに改造してもらった方が良いよねぇ……」

「………」

千束がそう言うなか、たきなは何処か思いつめた表情を浮かべる。

(梨紗さんの目的は理解できるし、手伝いたい。でも………仕方ないとはいえ、後手に回ってしまっている………このままじゃ、いつになったら………)

本部に戻れるのか……

その考えが過ったたきなのハンドルを握る手に、思わず力が入る。

(梨紗姉の傷………手当てした時から思ってたけど、あれは戦いによる『外傷』じゃない。まるで………内側から裂けた・・・・・・・みたいな『不可思議な傷』だった………)

一方の千束は窓から見える景色を眺めながら、梨紗の怪我について思案する。

(あのロボット…リーオーに蹴られてはいたけど、そんな怪我にはならないし、出血もしていなかった。なのに………)

「………あの………血溜まりができる程の大怪我は一体………」

「千束さん?どうしましたか?」

千束の呟きが聞こえたのか、たきなは運転しながらそう尋ねる。

「うぅん。別に何も………ただ梨紗姉達の所ってどういう所なんだろうって気になっただけ………」

「確かに気になりますよね。今までの話から察するに元は最新兵器…G装備の研究開発に関わっていたのは間違いないとは思いますが………」

「あんなにバターみたいに綺麗に切られちゃったデトニクスを直せるって言うし、バギー君も解析するって言ってたし………今日の地下の研究施設もアレだったけど、技術力がヤバそうだよねぇ………」

「郡さんは知っているようですが………」

「何時か、私達も連れて行ってもらえると良いよねぇ………」

「そう、ですね………」

「………」

(……そういえば、あの時、梨紗姉は何か『歌』を歌っていたような………)

そんななか、千束は現場でリリベルや自分達に瓦礫が降り注いだ時に聞こえた、梨紗の『歌』のことを思い起こす。

その後に起きた、梨紗の髪の色の変化。

更にその後のブラッディーリーフ戦や地下施設からの脱出の際、巫女の祈りに呼応するように『光』を宿した千景のソードCHGや起動したロボットバギーのことが頭に過る。

(『梨紗姉の髪の変化』、『巫女さんの祈り』、『『光』を宿した千景の剣』、タイミング良く見つかり起動したバギー君、そして………『歌』………)

「………まさか、ね………」

「?」

今回で遭遇した幾つかの不可解な出来事……それを自分なりに纏めた千束のなかで出された一つの可能性……

鳴護梨紗もまた、何らかのチカラを持っている。

その可能性に行き着いた千束は苦笑いしながらすぐさま否定する。

(あり得ないから、『奇蹟』なんだ………)

そう思いながらも頭に過るのは、回避しようがない大きな瓦礫が自分目掛けて落ちてくる光景だった。
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