命の重さと確執と・・・

「千景、落ち着きなさい。」

「!?姉さん……」

「今の貴女の一番の任務は囚われている巫女の救助……それを忘れないで。」

「……はい……」

「クルミ。一応聞いとくけど、この遺体については……」

『……悪いな……ボクがドローンで見つけた時には既に手遅れだった……』

「……そう……」

「二人が殺された瞬間は観ていないんですか?」

二人の遺体について、梨紗にそう答えるクルミに対し、今度はたきながそう尋ねる。

『残念ながらそれも観ていない……傷口から凶器が刀だということはわかっていたがな………』

「……そっか……」

「さっきの私達の話を聞いていたと思うけど、これを殺ったのはブラッディーリーフである可能性が高いわ。」

対するクルミからの答えに千束が少しだけ哀しげな表情でそう言うなか、梨紗は真剣な表情でそう言う。

『ブラッディーリーフ……あの時の刀使いか?』

「えぇ、これ程の切れ味を持つ業物とそれを扱う技量を持つ人間なんてそうそういない……」

「ん?クルミにブラッディーリーフのことを話したっけ?」

そんななか、クルミの言い回しに引っかかりを覚えた千束が首を傾げながらそう尋ねる。

『え、え~と……』

「例の銃取り引きを追うための追加情報として後日、私が映像を渡しておいたのよ。」

そんな千束にわかりやすく動揺するクルミを他所に梨紗がしれっとそう伝える。

「あ。なるほど……」

「とにかく、現状から考えて地下したは今、リリベルとG装備、そしてブラッディーリーフによって乱戦状態になっている可能性が高い……
クルミ、トラゴス並びにリーオーの動きを観測すると同時にブラッディーリーフの捜索をお願い。可能ならどちらも先手を討ちたい……」

『わかった。』

「ノアもお願い。ブラッディーリーフの顔や出で立ちは前に映像を送ってあるからわかるわよね?」

『はい。お任せ下さい。梨紗姉さん。』

「姉さん、ブラッディーリーフは……」

「わかってるわ。でも、巫女の救助を成功させるために立ち回る必要がある……それはわかるわね?」

「……はい……」

「千束とたきなはブラッディーリーフに遭遇した場合は即座に後退しながら私と千景に連絡。前に話した通り、対処できるのは私達二人しかいないから、近場にいるどちらかと合流しましょう。」

「了解。」

「わかりました。」

「それじゃあ、行くわよ。」

そうして四人は侵入者用の罠等を警戒しながら、隠し階段を降りていく。

(千景さん………こちらです………っ!!)

「「!?」」

地下三階に到達した瞬間、再び巫女からの思念が伝播でんぱし、感じ取った梨紗と千景は顔を見合わせる。

「「………」」

そして頷きあった後、千景はそっと地下三階の扉を開け、一人姿を消した。
梨紗はハンドサインで自分についてくるように千束とたきなに伝え、再び階層を降りていく。

「ちょちょ………梨紗姉、千景が………っ!!」

「今の階に巫女がいる。だから、向かわせたのよ………ノア、千景のサポートをお願い。」

『わかりました。そちらもどうかお気をつけて……』

『因みにそのまま進んだ先はG装備の性能を診るための大試験場……そこでリリベルの小隊とG装備が戦ってるぞ。』

特殊無線越しにそう言うクルミの声を聞きながら、梨紗は千束とたきなの二人を連れて先へと進んでいった。
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