ウォールナットを逃がせ!!
「いい加減機嫌を治したらどうだ?千束。」
「……事前に教えてくれても良かったんじゃないですかね?」
夕陽が完全に沈み、暗くなった頃、リコリコでそう言うミカに対し、千束はカウンターで不貞腐 りながらそう言う。
「私も正直、同意見ですね。」
「私もあの廃スーパーで指示を聞くまでずっと騙されてた訳だしね。」
そんな千束の隣にいるたきなも同じように不貞腐りながらそう言い、逆隣の千景も若干ジト目でミカの隣にいる梨紗を見ながらそう言う。
「ふぅ……三人とも、言いたいことはわかるわ。でも、『敵を騙すなら味方から』っていう諺 があるように戦場じゃこういう戦略は普通にあるのよ……」
対する梨紗はそう言いながら苺を切る。
「それに千束とたきなの二人は素直過ぎるのよ。たきななんて腹芸は苦手でしょ?先月の件もあるから知ってれば、今度はスーツケースを優先して護衛対象 を放置してしまう可能性が十分にあった。」
「うぐっ!?」
「ぐうの音も出ませんね……」
「姉さん。私は?」
「千景は二人と違って腹芸はできるから話しても良かったけれど……生憎と距離があったし、二人に聞かれる可能性があった。それに貴女なら僅かなヒントで気付いて合わせてくれると思っていたのよ。」
「………」
「ッ……あの『外に出る時は気を付けてね。』というのはそういうことですか……」
そんな梨紗からの説明に千景が納得の表情を浮かべるなか、廃スーパーでの指示の最後の一言の意味に気付いたたきなは少しだけ悔しそうな表情を浮かべながらそう言う。
「……言っておくけど、信頼してなかった訳でもないのよ?たきな。」
「え?」
「さっきも言ったけど、今回は貴女に苦手な腹芸を無理強いさせた方が失敗する可能性が高かった。寧ろその素直な性格を信頼していたからこそ、千束と一緒に自然な反応 をしてくれると思ったのよ。」
「そうそう♪例えばぁ~…こういう♪」
梨紗が改めてたきなにそう説明するなか、ミズキがそう言いながら千束の泣き顔が収められたスマホの画面を見せてくる。
「あ、あぁ~っ!?いつの間に……っ!?」
それを見た千束はそう言いながら駆け寄り、スマホを奪おうとする。
対するミズキは自身の身長を利用して、取られまいとする。
「……梨紗さんの言い分は理解しました。ですが、『命大事に』って方針はやはり無理がありませんか?」
「ん?」
「あの時、きちんと二人で動けば、今回のような結果にはならなかった筈です。」
「確かにね……」
「でぇ~も、そうされたら私が困ってたのよねぇ~。終始アテレコで喋って誤魔化す予定だったご本人様がどっかの誰かさん達 のせいでスーツケース内でKOされちゃってた訳だしぃ~。」
真剣な表情でそう指摘するたきなに千景もそう同意するなか、ミズキは間延びした声でそう言う。
「うぐっ!?それについては追々謝るとして……目の前で人が死ぬのは放っとけないでしょ?」
「リコリス は『殺人』が許可されています!敵の心配なんて」
「たきな。」
リコリス に与えられた権利と使命について、意見を述べようとするたきなの言葉を梨紗は静かに遮る。
「それってさ……DAの正義?それとも、貴女自身 の正義?」
「ッ!?」
「ふぅ……別に無理強いするつもりはないし、貴女のその任務に対する姿勢は嫌いじゃないわ。でも、だからこそ、忘れちゃいけないこともある……」
「忘れちゃいけないこと……」
いつの間にか静まり返る店内に梨紗の凛とした声と苺を切る包丁の音だけが響き渡る。
トン……ッ!
「……人を殺すということはただその人の命や人生を奪ってしまう ことだけじゃない……その人の周りの人間の人生を狂わせてしまう ことでもあるのよ……」
「……事前に教えてくれても良かったんじゃないですかね?」
夕陽が完全に沈み、暗くなった頃、リコリコでそう言うミカに対し、千束はカウンターで
「私も正直、同意見ですね。」
「私もあの廃スーパーで指示を聞くまでずっと騙されてた訳だしね。」
そんな千束の隣にいるたきなも同じように不貞腐りながらそう言い、逆隣の千景も若干ジト目でミカの隣にいる梨紗を見ながらそう言う。
「ふぅ……三人とも、言いたいことはわかるわ。でも、『敵を騙すなら味方から』っていう
対する梨紗はそう言いながら苺を切る。
「それに千束とたきなの二人は素直過ぎるのよ。たきななんて腹芸は苦手でしょ?先月の件もあるから知ってれば、今度はスーツケースを優先して
「うぐっ!?」
「ぐうの音も出ませんね……」
「姉さん。私は?」
「千景は二人と違って腹芸はできるから話しても良かったけれど……生憎と距離があったし、二人に聞かれる可能性があった。それに貴女なら僅かなヒントで気付いて合わせてくれると思っていたのよ。」
「………」
「ッ……あの『外に出る時は気を付けてね。』というのはそういうことですか……」
そんな梨紗からの説明に千景が納得の表情を浮かべるなか、廃スーパーでの指示の最後の一言の意味に気付いたたきなは少しだけ悔しそうな表情を浮かべながらそう言う。
「……言っておくけど、信頼してなかった訳でもないのよ?たきな。」
「え?」
「さっきも言ったけど、今回は貴女に苦手な腹芸を無理強いさせた方が失敗する可能性が高かった。寧ろその素直な性格を信頼していたからこそ、千束と一緒に自然な
「そうそう♪例えばぁ~…こういう♪」
梨紗が改めてたきなにそう説明するなか、ミズキがそう言いながら千束の泣き顔が収められたスマホの画面を見せてくる。
「あ、あぁ~っ!?いつの間に……っ!?」
それを見た千束はそう言いながら駆け寄り、スマホを奪おうとする。
対するミズキは自身の身長を利用して、取られまいとする。
「……梨紗さんの言い分は理解しました。ですが、『命大事に』って方針はやはり無理がありませんか?」
「ん?」
「あの時、きちんと二人で動けば、今回のような結果にはならなかった筈です。」
「確かにね……」
「でぇ~も、そうされたら私が困ってたのよねぇ~。終始アテレコで喋って誤魔化す予定だったご本人様が
真剣な表情でそう指摘するたきなに千景もそう同意するなか、ミズキは間延びした声でそう言う。
「うぐっ!?それについては追々謝るとして……目の前で人が死ぬのは放っとけないでしょ?」
「
「たきな。」
「それってさ……DAの正義?それとも、
「ッ!?」
「ふぅ……別に無理強いするつもりはないし、貴女のその任務に対する姿勢は嫌いじゃないわ。でも、だからこそ、忘れちゃいけないこともある……」
「忘れちゃいけないこと……」
いつの間にか静まり返る店内に梨紗の凛とした声と苺を切る包丁の音だけが響き渡る。
トン……ッ!
「……人を殺すということはただその人の命や人生を