ウォールナットを逃がせ!!

ピーポーピーポー……

同時刻、夕陽が沈んでいくなか、一台の緊急車輌が街中を走っている。

「「「「………」」」」

車内では事切れた着ぐるみウォールナットの遺体を前に梨紗達四人の間に暗い空気が流れる。

「……すいません。今回も私がまた」

「たきなのせいじゃない!!」

「そうね……今回は私の判断と指示ミスよ……皆に辛い思いをさせてごめんなさい……」

「!?梨紗さん……」

「梨紗姉……」

俯きながらそう言う梨紗の謝罪に、更に空気が重くなる。

「はぁ……こんな悪趣味な茶番劇・・・はもういいんじゃないかしら?」

パンッ!

「そうね。もう動いて良い・・・・・ですよ。」

そんななか、ため息混じりにそう言う千景の言葉に梨紗も顔を上げ、手を叩きながらけろっとした表情でそう言う。

「「え?」」

ムクリ

「「!!?」」

「………」

次の瞬間、遺体だった筈の着ぐるみ・・・・・・・・・・・がむくりと起き上がる。

グググ……スッポォーン

その光景に千束とたきなが動揺の表情を浮かべるなか、着ぐるみは被り物を外す。

「ぷっはぁーーっ!!」

次の瞬間、着ぐるみの中からウォールナットもとい別行動していた筈のミズキが汗だくの顔を現す。

「あっつぅーっ!ビール頂戴っ!!」

「梨紗。そこのクーラーボックスに入っている。取ってやってくれ。」

「……はい。どうぞ。」

「サンキュー♪」

「!!?」

「え?ミズキ!?なんで!!?」

「落ち着け、千束。」

「えぇええええっ!?先生ぃーーーっ!!?」

ゴッゴッゴッ……

「ぷはぁっ!うっめぇーっ!!」

運転席でマスクを外しながらそう言うミカに千束がそう困惑の声を上げるなか、ミズキは梨紗から受け取った冷えたビールを堪能する。

「あぁ、着ぐるみこれは防弾。派手に血糊が出る特注品ね。その分マジクソ重いけどっ!!」ドンドンピュー

「うわっ!?飛ばすなっ!!」

「っていうか……ウォールナットさん本人は!?」

「ハッ!?そうそう!何処行ったっ!?」

今まで行動を共にしていた着ぐるみの中身がミズキで本人ウォールナットが不在だということに気付いたたきなと千束は慌てながらそう尋ねる。

「本人は……そこ・・ですよね?姉さん。」

「えぇ。もう目を覚ました頃でしょ?栗鼠リスの眠り姫……」

『眠り姫ならもう少し優しく扱ってほしいものだ……』

「「!!?」」

ガチャッ!ギィィ……

『追っ手から逃げ切る一番の手段は『死んだと思わせる・・・・・・・・』こと……そうすれば、それ以上捜索されない……」

次の瞬間、スーツケースの中からVRゴーグルを着けた癖のある長い金髪の少女、ハッカー・ウォールナットの正体であるクルミがそう言いながら姿を現した。
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