ウォールナットを逃がせ!!
「さてと……」
Prrr……Prrr……
時を少し遡り、梨紗が千束達に特殊無線で指示を出した直後、ミハエルの懐からスマホの着信音が鳴り響く。
Prrr……Prrr……
「……出ないの?」
「出ても良いのか?」
「構わないわよ。出たところで電話の相手に助けを求めるなんて真似しないでしょ?貴方は。」
怪訝な表情でそう尋ねるミハエルに対し、梨紗はそう言いながら先程まで突きつけていたCHGを一旦下ろす。
「(ピッ!!)もしもし?」
『あぁ、あなた、まだお仕事中かしら?』
「あぁ、仕事中だが、今は大丈夫だ。どうした?」
『帰りにいつものケーキ屋さんに寄って、予約していた晶 の誕生日ケーキを受け取ってきてほしいの。お願いできる?』
「あぁ、わかった……」
『それじゃあお願いね。お仕事頑張ってね。』
そうして電話が切れる。
「……今のは奥さん?」
「あぁ、日本 の出身でもう四十年になる……今日が孫娘の誕生日でな……」
「そう……熱は冷めてるわね……その上着、ちょっと借りるわよ。」
「?何をする気だ?」
「そんな腕じゃ孫の誕生日会行けないでしょ。一先ず応急処置だけするからじっとしてて。」
梨紗はそう言いながら先程、斬り落としたアサルトライフルのバレルを副木にして患部に当てて、サッチェルバッグから取り出したテープで固定させる。
更にミハエルから剥ぎ取った上着をアーマーシュナイダーで裁断し、そうして作った布を包帯代わりにして巻きつける。
「……手慣れてるな……」
「まぁね。でも、誕生日会に出る前に副木はバレルから別のものに代えることを勧めておくわ。」
「姉さん。こっちも終わったわ。」
「………」
「ッ!?スティング!!」
「安心して。気絶しているだけだから。」
そんななか、千景がそう言いながら、気絶しているスティングを担ぎながら合流してくる。
見たところ、スティングもあばら骨が二、三本折れ、左腕も骨折している。
「お疲れ様。千景、貴女も派手にやったみたいね。」
「それより姉さん。さっきの通信のことだけど……」
「……まぁ、そういうことよ。
貴女なら意味がわかる でしょ。」
「……まったく……」
梨紗の真意に気付いた千景はため息混じりにそう言いながら、スティングの手当てを始める。
「おい。スティングと……息子と一緒に行動していた他の連中はどうした?」
「向こうで全員、ノびているわ。」
「そうか……変わってるな、お前ら……殺 ろうと思えば、できただろ?」
部下達が無事であることを聞かされた後、ミハエルは真剣な表情でそう尋ねる。
「そうね。そうした方がより早く終わったでしょうね。」
「なら、何故………」
「リコリコ のルールが『命大事に』だから。それに………」
「それに?」
「……貴方にも帰りを待ってくれている家族がいるでしょ。」
「………」
「どうしようもない悪党なら容赦しないけれど、あなた達は雇われでしょうしね。」
ミハエルの手にあるスマホを見ながらそう言う梨紗に続くように、スティングへの手当てを終えた千景がそう言う。
「行くわよ、千景。」
「はい、姉さん。」
「それじゃあね、傭兵さん。お孫さんの誕生日会、楽しんでね。」
「………ミハエルだ。今さっき、手当てを受けたのは息子のスティング、恐らく向こうでお前らの仲間に倒されているのは娘婿のフォレスト……」
「……そう……私は梨紗、こっちは千景。」
真剣な表情でそう名乗るミハエルに対し、梨紗もそう言って名乗り、千景も静かに頷く。
「それじゃあね、ミハエル。
次に会う時は『敵』じゃないことを祈るわ。」
「こっちの台詞だ。お前らとは二度と殺 り合いたくねぇ……早く行け、クソガキ共……」
そうして梨紗と千景はその場から離れ、裏口へと向かった。
「……『命大事に』か……まさか、戦場で敵にそんな甘い言葉を言われる日がくるとはな……」
Prrr……Prrr……
時を少し遡り、梨紗が千束達に特殊無線で指示を出した直後、ミハエルの懐からスマホの着信音が鳴り響く。
Prrr……Prrr……
「……出ないの?」
「出ても良いのか?」
「構わないわよ。出たところで電話の相手に助けを求めるなんて真似しないでしょ?貴方は。」
怪訝な表情でそう尋ねるミハエルに対し、梨紗はそう言いながら先程まで突きつけていたCHGを一旦下ろす。
「(ピッ!!)もしもし?」
『あぁ、あなた、まだお仕事中かしら?』
「あぁ、仕事中だが、今は大丈夫だ。どうした?」
『帰りにいつものケーキ屋さんに寄って、予約していた
「あぁ、わかった……」
『それじゃあお願いね。お仕事頑張ってね。』
そうして電話が切れる。
「……今のは奥さん?」
「あぁ、
「そう……熱は冷めてるわね……その上着、ちょっと借りるわよ。」
「?何をする気だ?」
「そんな腕じゃ孫の誕生日会行けないでしょ。一先ず応急処置だけするからじっとしてて。」
梨紗はそう言いながら先程、斬り落としたアサルトライフルのバレルを副木にして患部に当てて、サッチェルバッグから取り出したテープで固定させる。
更にミハエルから剥ぎ取った上着をアーマーシュナイダーで裁断し、そうして作った布を包帯代わりにして巻きつける。
「……手慣れてるな……」
「まぁね。でも、誕生日会に出る前に副木はバレルから別のものに代えることを勧めておくわ。」
「姉さん。こっちも終わったわ。」
「………」
「ッ!?スティング!!」
「安心して。気絶しているだけだから。」
そんななか、千景がそう言いながら、気絶しているスティングを担ぎながら合流してくる。
見たところ、スティングもあばら骨が二、三本折れ、左腕も骨折している。
「お疲れ様。千景、貴女も派手にやったみたいね。」
「それより姉さん。さっきの通信のことだけど……」
「……まぁ、そういうことよ。
貴女なら
「……まったく……」
梨紗の真意に気付いた千景はため息混じりにそう言いながら、スティングの手当てを始める。
「おい。スティングと……息子と一緒に行動していた他の連中はどうした?」
「向こうで全員、ノびているわ。」
「そうか……変わってるな、お前ら……
部下達が無事であることを聞かされた後、ミハエルは真剣な表情でそう尋ねる。
「そうね。そうした方がより早く終わったでしょうね。」
「なら、何故………」
「
「それに?」
「……貴方にも帰りを待ってくれている家族がいるでしょ。」
「………」
「どうしようもない悪党なら容赦しないけれど、あなた達は雇われでしょうしね。」
ミハエルの手にあるスマホを見ながらそう言う梨紗に続くように、スティングへの手当てを終えた千景がそう言う。
「行くわよ、千景。」
「はい、姉さん。」
「それじゃあね、傭兵さん。お孫さんの誕生日会、楽しんでね。」
「………ミハエルだ。今さっき、手当てを受けたのは息子のスティング、恐らく向こうでお前らの仲間に倒されているのは娘婿のフォレスト……」
「……そう……私は梨紗、こっちは千景。」
真剣な表情でそう名乗るミハエルに対し、梨紗もそう言って名乗り、千景も静かに頷く。
「それじゃあね、ミハエル。
次に会う時は『敵』じゃないことを祈るわ。」
「こっちの台詞だ。お前らとは二度と
そうして梨紗と千景はその場から離れ、裏口へと向かった。
「……『命大事に』か……まさか、戦場で敵にそんな甘い言葉を言われる日がくるとはな……」