ウォールナットを逃がせ!!

「たきな!ちょっとスーツケースを貸してっ!!」

「ッ!はいっ!!」

『ちょっと待てっ!また盾にする気かっ!?』

時を少し遡り、慌てる着ぐるみウォールナットを他所にたきなはキャリアを利用して勢いつけ、千束目掛けて一気にスーツケースを走らせる。

「どっせぇぇえいっ!!」

ブンッ!!

「「なっ!?」」

『嘘ぉっ!!?』

千束はそのキャリアの勢いも利用し、ハンドルを掴み持ち上げて一回転してから思い切りぶん投げる。

「………」

ガッシャァーーンッ!!

「ぐはぁっ!!?」

光学迷彩で姿を消していた深沙希が思わず口元に手をやるなか、一人の傭兵にスーツケースが直撃してダウンする。

「くっ!この外道っ!!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

残った傭兵はそう言いながら、アサルトライフルを乱射する。

「………」

「!?」

が、千束は軽やかな動きで避けながら、歩いて距離を詰めていく。

(あっ、当たらねぇ……っ!?)

「うおぉぉおおおぉっ!!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

まるで弾の方が避けていく・・・・・・・・・かのようなその光景に戦慄した傭兵は雄叫びを上げながら、乱射を続ける。

「………」

ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!

「がっ!?ぐぅっ!?がぁっ!?」

ドサッ!!

対する千束は避けながら十分に距離を詰め、顔の前で斜めに構えたデトニクスから三発のフランジブル弾を食らわせ昏倒させる。

ドォンッ!!

昏倒させた後、千束は更におまけの一発を食らわせる。

「………」

「………」

圧倒的と言えるその光景にたきなと姿を消して見ていた深沙希が唖然とするなか、千束はマガジンを交換する。

ドォンッ!!

「うおっ!?」

そのまま千束は流れるように横にいるフォレストに威嚇射撃し、

「とうっ!!」

ドカッ!!

「ぐはっ!?」

蹴りを食らわせる。

「ぐぅ……」ガクッ!!

食らったフォレストは戦意を喪失したのか、その場で片膝を着く。

先程、たきなに負わされた右脇腹の傷から血が滲んでいる。

「そのまま。手当てするから。」

「!?何を!?ぐぅっ!?」

「血ぃ出てるでしょ!!」

それを見た千束はそう言いながら有無を言わさずに治療を始める。

『………』ガラガラ……

「千束さん、急いで梨紗さん達と合流して脱出しましょう。二人なら大丈夫でしょうが、新手が来る可能性があります。」

投げ飛ばされたスーツケースを着ぐるみウォールナットが静かに回収するなか、たきなはそう千束に進言する。

「少し待って。」

「囲まれますよ。」

「死んじゃうでしょっ!?」

冷静にそう言うたきなに対し、千束は即答でそう声を上げる。

『千束、たきな。店内に敵意も悪意もないわ。今の内に対象を連れて離脱しなさい。千景は私と合流を。』

そんななか、梨紗からそう言う特殊無線が入ってくる。

『了解、姉さん。』

「こっちも了解だよ、梨紗姉。たきな、先に行ってて。私も手当てが済んだら、すぐに追いかけるから。」

「……わかりました……」

外に出る時は気を付けてね・・・・・・・・・・・・。』

そうしてたきなは千束と別れ、着ぐるみウォールナットと共に先へと進む。

「……何の真似だ?」

「さっき言ったでしょ?応急処置。」

「やめろ……からかってるのか?」

「じゃあ、死にたいの?」

治療を拒否しようとするフォレストに対し、千束はそう言いながらデトニクスの銃口を米神こめかみに軽く当てる。

「や、やめてくれ……」

「ん。今日、夕飯は誰と?」

「……家族だ……今日が六歳になる娘の誕生日会でな……」

「おぉ……良いね♪そういうの。」

「……うっ……うぅ……」

そんななか、千束のフランジブル弾でダウンされていた傭兵が痛みに悶えながらも意識を取り戻した。
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