プロローグ

とある廃ビル・・・

フキ達が襲撃を受けた廃工場から1500m離れた廃ビルの狙撃ポイント。
たきなやエリカと同じ蒼い制服に身を包んだ少女が身の丈近くもある対物ライフル、『ウルティマラティオ・ヘカートⅡ』を構えていた。

その右脚は機械的だが動きやすさを重視しているのか、スリムで少女のか弱い脚にフィットした銀色のパワードスーツに包まれている。

「こちら、エコー05。誰か現場の状況を教えてくれない?」

一房だけ白髪の黒髪をポニーテールにした彼女は少しだけ翳りがある空色の瞳でスコープを覗き込み、戦闘が起きているであろう廃工場を見ながらインカムでそう呼びかける。

『こちら、エコー02。井ノ上たきなです。現在、目標が起動させた例の最新兵器と思われるロボットの襲撃を受けています。』

「ッ!?そいつの特徴は?」

『頭部は赤いモニター、全身は深緑の装甲で覆っていて、背中には外付けのジェネレータとニ門の大型キャノン砲、脚にはミサイルポット、右腰に散弾バズーカ、左腰には大型ガトリングガン、マシンガンを片手に一丁ずつ装備しています。体格の大きさとしては平均男性の1,5倍程の巨体かと……』

「!?それって……」

ズガァァァンッ!!

「!?あれは……っ!!」

たきなから聞いた最新兵器の特徴について、少女がそう声を漏らすなか、廃工場の天井に大穴が空く。

そこからスコープで中を覗くと、現在進行形でマシンガンで銃撃している最新兵器、リーオーの姿が目に入ってくる。

(あれはヘビーHウェポンWシステムS!!)

「………」

廃工場の天井に空いた大穴からスコープ越しにリーオー…

HWSリーオーの姿を視認し、その性能を『知っている』少女…フキの相棒であるセカンドリコリス、鳴護梨紗はすぐさま狙撃ポイントから離れ、ヘカートを手にしたまま前線メンバーの元へと駆け出す。

(HWSは代わり映えのないリーオーの強化プランとして私と父さんが考案したもの。だから装甲の堅さも、保有する火力も、現代における危険性も、その弱点も知っている。そして、破壊できるのは私だけ……)

駆けながら、梨紗はそう思いながらヘカートを担ぎ、サブアームとして一丁だけ持ってきていたハンドガンを手に取り後ろにマウントしてあるアタッチメントに挿し込む。

「………」

そんななか、梨紗の頭に浮かぶは幼き頃に何度も見た、純粋に且つ真摯に研究に励む父親の笑顔……

「ッ……」

カートリッジCハンドHガンGを握る手に力が籠る。

(アレは……私が破壊するっ!!)

梨紗はそう思いながら廃工場へと向かっていった。
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