ウォールナットを逃がせ!!

「女が三人乗ったぞ。邪魔なら皆殺しで構わない……」

その頃、机の上に何台もディスプレイが設置された部屋にて、ロボットの被り物をした男が一台のディスプレイに映る車を観ながらそう電話相手に伝える。

『すまない。公園辺りでワゴン車のタイヤがパンクしている隙に振り切られた。』

「ちっ!使えねぇな……給料分働けよ。」

ブツッ!!

が、電話相手である武装集団のサブリーダーからの報告にハッカーの男、ロボ太はそう嫌味を言いながら電話を切る。





ツゥー……ツゥー……

「……ちっ!いけ好かねぇ野郎だ!」

ロボ太との通話が切れた後、サブリーダーであるロン毛に赤いキャップ、サングラスをした男は思わずそう悪態を吐く。

「落ち着け。気持ちはわかるがカネを貰った以上、奴が雇い主だ。」

「リーダー……」

そんなサブリーダーに対し、白髪に軍用キャップを被った、ガタイの良い髭面のロシア系の初老の白人男性は腕を組みながらそう言って諌める。

「スティング。タイヤの交換は後、どれくらいで終わる?」

「すぐにワゴン車のトランクに積んでいた替えタイヤと交換を始めたからな……五分もかからん。」

そう尋ねる白人男性に対し、緑髪の青年、スティングはそう答える。

「よし。あの妙に対象の抹殺にこだわっていた奴のことだ。俺達が体制を立て直して向かう間に何らかのアクションは起こすだろう。まだ完全に逃げ切られた訳じゃない。」

「だが、そのアクションってやつで対象が死んだら『金返せ。』とか言うんじゃないか?」

「心配するな。俺の経験上、奴が直接殺すのは無理だ。精々ご自慢のハッキングで足止めできれば良い方だ。」

「そうか……」

「とにかく、タイヤの交換が完了次第、奴から送られてくるGPSを頼りに追う!良いな!?」

力強くそう指示を出すリーダーに対し、サブリーダーやスティング、他の部下達は一斉に頷いた。
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