ウォールナットを逃がせ!!

「それでたきな、千景。そのウォールナットってハッカさんと梨紗姉の二人と合流した後はどうするの?」

「本当に何も聞いてないじゃないですか……」

「後、ハッカじゃなくてハッカー……」

「あぁ!もう一回お願いします!たきな様!千景様!!」

住宅街で合流地点である駐車場に向かっている最中、呆れながらそう言うたきなと千景に対し、千束は慌ててそう懇願する。

「店長が車を用意してくれているそうです。」

「マジで!?はいはい!千束が運転しまぁー」

「私が運転します。」

「えぇ~?なんでぇ~?たきな、運転できるのかよぉ~?」

「できなきゃリコリスになれないでしょ……」

「右に同じ。」

三人がそう話しながら駐車場に着くと、赤いスーパーカーが目につく。

「スーパーカーじゃん!!」

「目立ちますね……」

「目立つわね……」

「あぁ~、やっぱり私が運転するぅ~!!」

その見た目にたきなと千景がそう言いながら引くなか、千束はフェンスにしがみつきながらそう言う。

ブロロロ……ッ!!

「ん?」

ドォンッ!!キキキィィィッ!!

「うわっ!?なになに!?」

そんななか、反対車線から軽自動車が飛んできて三人の目の前で急停車する。

運転席には動物の着ぐるみを着た人物、助手席には黄色いスーツケースを抱えた梨紗が座っている。

『ウォール!』

「ナット。」

「早く乗りなさい。追跡されてるから。」

「はい。」

「えぇ~!?あっちじゃないの!?」

着ぐるみウォールナットと合言葉で確認した後、そう急かす梨紗にたきながそう返事しながら乗り込むなか、千束はスポーツカーを指差しながらそう言う。

「……スポーツカータイプなんて目立つに決まってるでしょ。自ら早く見つけて下さいって言ってるようなものよ。」

「いいから早く乗って…!」

「うわっ!?」

対する梨紗が呆れながらそう言うなか、千景がそう言いながら千束を押し込み、自身も乗り込む。

ブロロロ……ッ!!

三人が無事に乗り込んだ後、着ぐるみの運転する軽自動車は再び走り始める。

ブロロロ……ッ!!

「なんで護られる側が颯爽と車で現れんのよ?普通、逆でしょ~。あぁ……スーパーカー……」

「まだ言ってる……」

「人生はそう思い通りにいかないってことよ。」

「それにあれは目立ちますから、こちらの方が良いですよ。」

まだ未練があるのか、住宅街を走る軽自動車の車内でそう言う千束に対し、千景と梨紗、たきなの三人は呆れながらそう言った。
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