ウォールナットを逃がせ!!

「!?光学迷彩……」

「さてと……」

深沙希の姿が消えた後、少女がそう呟くなか、梨紗はそう言いながら対面するように隣のベッドに腰掛ける。

「改めてはじめまして、ウォールナットさん。私は鳴護梨紗。リコリコ所属のファーストリコリスよ。」

「鳴護梨紗………DA最強と名高い『鷹の目』がボクの護衛に就いてくれるとは嬉しいね。」

「DAへのハッキング、そして先日の事件……やっぱり私のことを見ていた訳ね。ウォールナット……」

一瞬で落ち着きを取り戻しながら冷静にそう言う少女…ウォールナットに対し、梨紗は敢えて右足のPAユニットを見せつけるように組みながらそう言う。

「無知であることは嫌いなんだ。だから君にも興味がある。」

「それは光栄ね。」

「君と君の相方の銃、そして君のその右足………気になって調べてみたけれど、一つ以外、情報が見つからなかった。」

「………」

梨紗の右足のPAユニットを見ながらそう言うウォールナットの言葉を、梨紗は黙って聞く。

「数十年前の鳴護桜歌という女性と朝鳴佑人という技術博士の婚姻関係、という以外はね。」

「ッ……」

が、その二人の名前を出した瞬間、梨紗の片眉が僅かに動く。

「鳴護なんてそうある名字じゃないし、朝鳴博士は次世代技術者として技術界隈じゃ有名だった……二人の戸籍に子どもがいた、というデータはなかった。けど……」

ウォールナットはそこまで言うと、改めて梨紗のPAユニットに目をやる。

「君達のその装備は、現行の技術ではない筈だ。」

「……私のデータは全て消したのに、両親の戸籍から辿り着くなんて………流石ね。」

チャキ……ッ!

そう言うウォールナットに対し、梨紗はそう言いながら立ち上がりCHGを突きつける。

「ボクと取り引きをしないか?君の目的に、ボクも全面的に協力する。見返りとして、護衛と君の家の技術を教えてほしい。朝鳴の忘れ形見。」

対するウォールナットは先程までとは打って変わって物怖じせずにそう持ちかける。

(さっきの一人の時とは大違いね……)

そんなウォールナットの様子に梨紗はそう思いながらCHGを下ろす。

「……良いわ。但し、全ては教えられない。どこまで教えるかは、今後の私達の関係次第。」

「勿論だとも。」

「それじゃあ契約成立ね。改めてよろしくね。それで貴女の本名は……」

「クルミ。それで良いだろ。」

「……日本語にしただけじゃない……まぁいいや、よろしくね。クルミ。」

「よろしく。梨紗。」

こうしてウォールナット改めクルミとの密約が交わされた。
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