理想と現実

「だけど、褒められる点もある。それは緊急事態に陥って指示を仰げない時、自らの判断で対処に踏み込める事よ。」

「!自らの判断で……」

が、続けてそう言う梨紗の言葉に、たきなは復唱しながらそう言う。

「これはフキも出来てないこと……だから選択肢を増やし、自らの判断に自信と責任を持って動けるようになりなさい。貴女ならきっとそれができる筈よ。」

「……はいっ!!」

表情を柔らかくしながらそう言う梨紗に対し、たきなは今一度気合いを入れながらそう言う。

(良かったね。たきな……)

「まぁ、今後は目的を見失わないようにね。」

そんなたきなを見て千束がそう思いながら安心するなか、梨紗はそう言いながら本当の銃取り引きの現場とブラッディーリーフの写真をテーブルの上に置く。

「あ!これ、私が沙保里さんの携帯から移してもらった写真!!」

「いつの間に……」

「昨日、千景に掛けさせていた伊達眼鏡にはカメラが付いていてね。これはそのカメラで撮った映像を現像化したものよ。」

二枚の写真を見ながらそう言う千束とたきなに対し、梨紗はそう説明する。

「へぇ~~!!」

「こっちに写っているのはひょっとして昨夜、郡さんが交戦した……」

「名前は『ブラッディーリーフ』。なんでも昨日の拉致グループに雇われた、刀使いの殺し屋のようね……」

ブラッディーリーフの写真を手に取りながらそう言うたきなに対し、梨紗は冷静にそう説明する。

「見たところ、歳は郡さんより一つ下のようですが……まさか、リコリスわたしたち以外でこのような少女の殺し屋が存在しているなんて……」

「刀を使うっていうのも珍しいよねぇ~。この写真でも今にも飛び出して斬りかかってきそうな迫力があるし……」

たきなが真剣な表情で写真を見ながらそう言うなか、千束は見えない刀で斬るような仕草をしながらそう言う。

「そんな可愛いものじゃないわ。千景の射撃を全て見切って切り捨てた上に、超至近距離にも関わらず、即座に反応して鞘で受け止めた……普通じゃあり得ない反応速度よ。」

「マジッ!?」

「それ程の手練れが今回の敵にいたってことですか……っ!?」

梨紗のブラッディーリーフについての説明に対し、千束とたきなはそう困惑の声を上げる。

「うちの千景が足止めされた。攻めに転じた超至近距離も防がれたとなれば、他のリコリスでは瞬く間に接近されて切り捨てられる可能性が極めて高い。」

そんな二人に対し、梨紗はPDIで記録したブラッディーリーフとの戦闘の様子を見せながらそう言う。

「うへぇ………マジで銃弾を切り捨てながら接近してきてる……こんなのアリィ………?」

「……梨紗さんと郡さんは対処について、どうお考えで?」

その映像を見ながら千束がそう言うなか、たきなは真剣な表情でそう尋ねる。

「リコリスの殆んどは銃撃戦がメインで、近接戦闘は護身に毛が生えた程度……姉さんの言う通り、相手にならない。」

「だから、彼女が出てきた場合、私か千景で対応するしかない。私達のCHGには近接戦闘用のソードもあるし、鍛練も重ねている……」

そんなたきなの問いに千景がそう答えながら上がってくるなか、梨紗は真剣な表情でそう答える。

「それからブラッディーリーフの刀、あれも普通じゃないわ。」

「普通じゃない?」

「確かに変わった刀だとは思うけど……」

「私と千景のCHGは特殊な金属で作られているの。だから、鍔競り合いができた訳だけど……彼女の発言と行動から考えて、通常の銃じゃ斬られていた可能性が極めて高いと思われるわ。」

千景の『普通じゃない』という言葉に首を傾げるたきなと千束に対し、梨紗は腕を組みながらそう説明する。

「ううぇっ!?」

「じゃあ、私や千束さんの銃だったら……っ!?」

「スパッと斬られてたかもね。」

そんな梨紗の説明にそう困惑の声を上げる千束とたきなに対し、千景は涼しい顔でそう答える。

それを聞いた二人は血の気が引くのを感じた。
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