プロローグ

「逃走用の装甲車輌か……乗り込まれたら面倒だな。梨紗、頼む。」

『了解。』

ズガァァンッ!!

「!?」

そう指示を出すフキに梨紗がそう返事した直後、何処からか轟音が響き渡る。

「い、今の音は……?」

「行くぞ。」

突然の轟音にそう言いながら自分の愛銃であるM&Pを構えるたきなを他所にフキはそう言いながら先に歩いていく。

「え?あの……」

「さっきの音はすぐに答えがわかる。」

「?それはどういう……」

首を傾げながらもフキに着いていくこと数分後、大破して煙を上げている装甲車輌が目に入ってくる。

「!?あんな硬い装甲車輌を一撃で……っ!!?」

「彼奴の愛銃は対物用ライフルのヘカートだからな。それに彼奴の技量なら僅かな隙間から確実にウィークポイントを撃ち抜くことも可能だ。」

大破した装甲車輌を見てそう困惑の声を上げるたきなに対し、フキは冷静にそう説明する。

「対物用ライフル……ということは私達が先程までいた廃ビルの屋上は今………」

「……まぁ、私達が作ったのよりも酷(むご)い血の海になっているな………」

「………」

「フキ!たきな!!」

「あれ?まだ廃工場に入ってなかったの?」

二人がそう話をするなか、別ルートから廃ビルから下りてきたエリカとヒバナがそう言いながら合流してくる。

「あぁ、梨紗が狙撃でぶっ壊した敵の逃走用装甲車輌を見て、たきなが軽く固まっていたんだ。」

「……あぁ……」

「梨紗、また派手にやったね……」

フキにそう説明された後、煙を上げる装甲車輌を見て、エリカとヒバナは苦笑いしながらそう言う。

「……二人も梨紗さんと付き合いが長いんですか?」

「まぁ、フキとコンビを組んでから一緒に仕事することが多くなった程度かな……」

「って言っても梨紗がDAに入ってからだから二年ぐらいの付き合いだね。」

「……は?二年?」

「話はそこまでにして、行くぞ。」

梨紗がDAに加入してまだ二年だということにたきなが軽くフリーズしかけるなか、フキはそう言いながら先頭を歩く。

『フキ!中から敵意!攻撃がくるわよ!!』

「え?」

廃工場内に入った直後、インカム越しにそう警告してくる梨紗の言葉にたきながそう呆けた声を上げる。

「ッ!!」

そんなたきなを他所にフキは背中に背負っていたサッチェルバックを手に取り、傍目には見えづらい細い紐を引っ張って防弾性の高いエアバッグを展開する。

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

「「「!?」」」

その直後、前方の暗闇から大量の銃弾が放たれる。

「全員、近くの遮蔽物に逃げ込めっ!!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァンッ!!

フキがそう指示を出した直後、銃弾の雨は着弾し煙に包まれる。

「ハハハハハハハハッ!!ドウダ!クソガキ共!!トアル筋カラ手ニ入レタコノ『リーオー』ノ威力ハ!!!」

直後、銃弾を放った存在と部下と共に何らかのリモコンを持った、部下と同じ黒いスーツに身を包んだ恰幅の良い髭面に煙草を咥えた低身長なボスが片言の日本語でそう言いながら現れる。

「ちっ……!!」

「フキッ!!」

「大丈夫!?」

「ッ……あれは……」

先程の銃撃で右肩にかすり傷を負ったフキにエリカとヒバナがそう言うなか、たきなは遮蔽物から僅かに顔を出し『リーオー』と呼ばれたそれを見て息を飲む。

それは頭部には赤い液晶テレビのようなモニター、深緑の装甲に包まれた『戦車』を思わせるボディー、背中には外付けのジェネレータとニ門の大型キャノン砲、脚部にはミサイルポット、右腰には散弾バズーカ、左腰には大型ガトリングガン、両手にはマシンガンを一丁ずつ装備した、常人の1,5倍程の体格を持つロボットだった。
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