理想と現実

路地裏・・・

ダンッ!!

「痛っ!?」

「護衛対象を囮にするとか一体何を考えてるの!!?」

路地裏に入った後、千景はそう言いながら、たきなを背中からブロック塀に叩きつける。

「っ……追っ手を倒すにはこれが……」

「そんなだから勝負に勝って試合に負ける!今回で言えば、追っ手は倒せても護衛対象が死んでいる!!理想と現実を一緒にするなっ!!!」

顔を少し歪ませながらそう言うたきなに対し、千景は怒りを露にしながらそう言う。

「答えなさい!今回の私達の任務は何っ!?」

「っ、沙保里さんの護衛、です。」

「護衛任務で最優先事項は何っ!?」

「護衛対象の安全、です………」

「果たして貴女はそれが出来ていたかしらっ!?」

「………」

「どうせ貴女の事だから『命は奪われない』とか考えて囮にしたんでしょうね。でも、怪我を負ったら?拷問を受けたら?四肢を失ったら?後遺症が残ったら?それで護衛任務を達成したと言えるの!?」

「それ、は…………」

怒りを露にしながらも冷静に論点を並べて詰問してくる千景に対し、たきなは思わず良い淀んでしまう。

「貴女、一体何のために銃を握ってるの?」

そんなたきなに対し、千景は真剣な表情でそう尋ねる。

「………平和の、ためです。」

「ふざけないでっ!貴女はただ、DA本部に戻りたいがために動いている!だから、手柄を欲しがって独断で動き、『対象を護る』ではなく『敵を倒す』のを優先する!!」

ドカッ!!

「痛っ!?」

千景はそう言いながら、たきなを今一度ブロック塀に叩きつける。

「くっ……」

「今日一日見てわかった。貴女、姉さんに憧れているみたいだけど………今の貴女なんかじゃ姉さんに追いつくどころか、付いていくことすらできないわよ。」

叩きつけた後、千景はたきなを睨み付けながらハッキリとそう指摘する。

「………」

「千景、もう良いかしら?」

「はい。姉さん……」

完全に論破されたたきなが押し黙っているなか、梨紗に呼ばれた千景はそう返事しながら路地裏から出ていく。

「……ッ!!」

ガンッ!!

その場に一人残されたたきなは悔しそうにしながら、背後のブロック塀を思い切り殴り付ける。

殴った左拳から僅かに血が流れる。

「たきな……」

そんなたきなを見守りながら、千束は真剣な表情でそう呟いた。
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