理想と現実

「大丈夫かしら……」

たきなが駆けていった後、一人残された沙保里は不安そうにしながらそう呟く。

「さっきの銃声のこともあるし、やっぱり警察に……」

キキィッ!!

「!?」

そう言いながら携帯を取り出した直後、白いワンボックスカーが走ってきて真横で急停車する。

ガラッ!!ガバッ!!

「きゃあっ!?」

直後、バックドアから飛び出してきた黄色い髪に頬が痩けた、作業着にサングラスの男に麻袋を被せられる。

「んーっ!?んーっ!?」

「おいっ!手伝えよっ!!」

「は、はいっ!!」

「そっちじゃねぇっ!足持てっ!!バカッ!!」

そうして沙保里は拘束され、無理やり乗せられる。

キュルキュル……

「………」

その様子を、来た道を逆走するふりをして路地裏を通って先回りしていたたきながM&Pにサイレンサーを付けながら見ている。

ワンボックスカー内・・・

「写真あったか!?」

「ありました!!」

「じゃあ消せっ!!」

テロリスト達は沙保里から奪った携帯から例の写真を削除する。

「他にはないか?拡散もしてないか!?」

「どうなんだよ!?」

黄色髪は苛立ちを顕にしながら、拳銃を突きつけ尋問する。

「ひっ……うぐっ……」

が、沙保里は恐怖で泣き、喋れなくなっている。

「なに止まってんだ!?出せよ!例の黒髪眼鏡はブラッディーリーフが押さえてる!もう一人はいつの間にかいねぇんだから!!」

「へ、へいっ!!」

リーダー格に急かされた運転手はそう言いながら、車を走らせようとする。

パァッ!!

「「「「!?」」」」

「………」

が、フロントライトを点けた瞬間、たきながいてサイレンサー付きM&Pを突きつけてくる。

パシュッ!!パシュッ!!

ガシャンッ!!ガシャンッ!!

「ぐわっ!?」

「うわっ!?」

「「!!?」」

次の瞬間、たきなは二発の銃弾を放ち、フロントガラスが割れると同時に運転手が左肩に被弾する。

「取り引きした銃の所在を吐きなさいっ!!」

パシュッ!!パシュッ!!

ガシャンッ!!ガシャンッ!!

「無茶苦茶撃ってくるぞ!?」

「なんで取り引きのこと知ってんだ!?」

「もしかして、例の武器商人達を皆殺しにした奴じゃ……さっきの黒髪眼鏡も銃持ってたし……」

パシュッ!!

バスンッ!!ガタンッ!!

「「「「うぉっ!?」」」」

「んーっ!?」

そんななか、たきなが放った銃弾がタイヤをパンクさせ、車を傾かせる。

「ッ!!」

その直後、たきなは姿勢を低くし、マガジンを交換して構える。

ガッ!!

「!?」

が、次の瞬間、右から伸びてきた手にM&Pを押さえ込まれる。

右を見るといつの間にか駆け寄ってきていた千束が真剣な表情でたきなを見ている。

「なぁ~にしてるの!?」

「あっ……!?」

次の瞬間、千束はそう言いながらたきなを近くの路地裏に引きずり込む。

「!?梨紗さん……!?」

「………」

引きずり込まれた路地裏にはリコリコから応援として駆けつけた、制服姿の梨紗もいることにたきなは目を丸くしながらそう言う。

「たきな……千景はどうしたの?」

そんなたきなに対し、梨紗は真剣な表情でそう尋ねる。

右足にはPAユニットを装着している。

「郡さんは今、曲がり角の向こうで敵の一人と交戦中です。」

「ちょいちょいちょい!?沙保里さんは!?」

「車の中です。」

「まさか、囮にしたの!?」

「貴女……」

千束が思わずそう困惑の声を上げるなか、梨紗は額に手を当てながらそう言う。

「彼らの狙いはスマホの画像データです。殺す意図はないと思います。」

「人質になっちゃうでしょ!?」

「この女がどうなっても良いのかぁーっ!?」

「ほらぁ……」

「言わんこっちゃない……」

リーダー格の怒号が響き渡るなか、千束と梨紗は頭を抱えながらそう言った。
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