理想と現実

「……随分と厭らしい戦い方をする……」

「褒め言葉と受け取っておくわ。」

実に攻め入れない千景の戦法に悪態を吐くブラッディーリーフに対し、千景はそう言いながらデザートイーグルを再び逆手に持ち換える。

(にしても、どうにかこの場を切り抜けないと……)

今の戦闘スタイルは近距離戦に強みを持つが決定打を持たず、迎撃に特化しているが故に攻めに転じ難いスタイルであることに千景も内心焦りを感じ始める。

「聞いてんのか!?ゴラァァァァァッ!!」

そんななか、曲がり角の向こうから再びリーダー格の怒声が響き渡り、

パァァンッ!!…カタァーーンッ!!

「「!?」」

直後に銃声と何かを破壊する音が響き渡ってくる。

(今のは何かを破壊した音ね。でも車じゃない……方向からして空中?まさか、ドローンか何かかしら……)

(ドローンが落とされたか。なら、バックアップは期待できそうにないな。あちらも失敗する可能性が高そうだ……)

響き渡ってきた二つの音について、千景とブラッディーリーフは各々でそう分析しながら互いに警戒する。

「ッ!!」

そんななか、ブラッディーリーフが肉簿しながら再び右から斬りかかってくる。

「ッ!!」

ガキィィィンッ!!

対する千景は先程と同様に左手のナイフで受け止める。

が、ここで攻めに転じた千景は受け止めたナイフで後ろへと受け流しながら前へと一歩踏み込む。

ドォンッ!!

同時に持ち換えた右手のデザートイーグルを突きだし、発砲する。

「ッ!!」

ガキィンッ!!

千景が仕掛けてきた眼の前の発砲に対し、ブラッディーリーフは後ろに飛び退きながら咄嗟に左手で引き抜いた鞘で銃弾を受け止める。

「!?」

(受け止めた!?なんて反応速度なの!?)

(やはり強い……!隙があれば、すかさず突いてくる……!!)

千景とブラッディーリーフは互いにそう思いながら武器を構え、睨み合う。

『ブラッディーリーフ。撤退しろ。』

そんななか、ブラッディーリーフのバイザーに何者かからの通信が入る。

「よろしいのですか?」

『他の奴等が制圧された。これ以上手を貸してやる必要はない。』

「了解しました。」

スゥゥ……キン……ッ!

「!?」

突如、凶星を納め戦闘態勢を解いたブラッディーリーフに千景は困惑する。

「……どういうつもり?」

が、相手にもう戦闘の意思がないことを理解した千景も戦闘態勢を解きながら、警戒しながらそう尋ねる。

「引き分けだ。これ以上の戦闘に意味はない……私は撤退させて貰う。」

「へぇ……仲間を見捨てるの?」

「仲間ではない。私はあくまで雇われだ。奴等がどうなろうと知ったことではない……いずれまた会おう。リコリス……」

(やはりリコリスのことを知っていたみたいね……)

千景はそう思いながら曲がり角の方を一瞥する。

「………今の私の任務は彼女の護衛。だから見逃してあげるわ。それと……『Cシャドウ』とでも名乗っておくわ……」

「……ブラッディーリーフだ……」

ブラッディーリーフはそう名乗るや否や高く跳躍し、その場から姿を消す。

「千景!!大丈夫!?」

その直後、曲がり角の方から千束がそう言いながら駆けてきた………





ドォンッ!!

「!?じゅ、銃声!?それに千景ちゃんは……っ!?」

時を少し遡り、追跡してくるブラッディーリーフに千景が銃撃した頃、たきなと共に曲がり角で曲がって駆けていた沙保里はそう困惑しながら足を止める。

「ッ……」

(今のはデザートイーグル……ということは郡さんは一人で戦闘を……!?)

「私が様子を見に行きます。沙保里さんはここで。」

「う、うん……気を付けてね。危なかったらすぐに逃げてね。」

そうしてたきなは沙保里をその場に残して来た道を駆けていった。
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