感覚を掴み取れ!!

「「ノゾミちゃん(さん)!!」」

「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……」

「ノゾミ。取ったボールは袋に入れなさい。」

浮上した後、立ち泳ぎしながら息を整えるノゾミに対し、翼はそう指示する。

「はい……!!」

「それと大丈夫か?まだやれそうか?」

「ふぅ……大丈夫です……まだやれます……!!」

ザブンッ!!

ノゾミはそう言いながら再び潜水する。

「ふむ。なら少しだけ難易度を上げてみようか。立花、ちょっと頼みが……」

「?はい?」

翼はそう言いながら響に耳打ちである頼み事をする。

水中・・・

(ちょっと慣れてきた……かも……)

ノゾミはそう思いながら二個目のボールを拾い、網袋に入れる。

パシャパシャ

(え!?)

プールサイド・・・

パシャパシャ

「……翼さん、これって意味あるんですか?」

プールサイドの端に腰を下ろし、両足だけをプールに入れてばた足しながら、響は不思議そうな表情でそう尋ねる。

「無論あるとも。今のノゾミは視界を封じられ、必然的に聴覚と触覚が敏感になる。それ故、水中の些細な変化でも情報としては多く感じて混乱を引き起こしやすいんだ。」

水中・・・

パシャパシャ

(な、なに!?なんで波が……っ!!?)

「ッ!?」

ザバァッ!!

「ぷはぁっ!!?」

「「ノゾミさん(ちゃん)!!」」

翼がそう解説するなか、水中でパニックになったノゾミは慌てて浮上する。

「はぁ……はぁ……」

「大丈夫か?ノゾミ。」

「つ、翼さん……今、凄い波に流されそうになって周りがわからなくなったんですが……」

「うえっ!?そんなに!!?」

「ふむ、恐らく音による錯覚だな。普段よりも音が大きく聞こえ、そこから脳が強い波が起きていると誤認して感じたのだろう。」

息を切らしながらそう言うノゾミの言葉にそう困惑の声を上げる響に対し、翼は冷静にそう解説する。

「戦場というものは常に流動的だ。それは水の中も同じ。変化し続ける状況下でも常に把握し続けることが大事なんだ。」

「変化し続ける状況下でも常に把握し続ける……」

続けて翼が言った言葉を、ノゾミはぼんやりとしながらも反芻する。

「そうだ。それを念頭に置いて、どんな変化が起きても冷静に見極め、それらも把握した上で目標を探すんだ。」

「……はいっ!!」

ザブンッ!!

優しい笑顔でそう言う翼にそう返事しながら、ノゾミは再び潜水した。
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