小さくなった新たな仲間

『SONG』、本部・・・

「くっ……」

「大丈夫ですか?クリスさん……」

本部に無事帰還した後、九人の装者全員とスィン博士、梨紗博士、風鳴司令、エルフナイン、緒川、ポッピーの十五人による報告会を兼ねた会議のなか、頭を抱えるクリスに対し、雪那がそう尋ねる。

「あぁ、ちょっと頭が痛くなっただけだ……」

対するクリスはそう答えながら、膝の上で大人しくしている千景を撫でる翼と餌をあげているマリア、過保護気質が発動したセッテの膝の上に赤らめながら座っているノゾミの二組を見ながら更に頭を抱える。

「うぅ……翼さんとマリア、羨ましいデス……」

「……良いなぁ……」

「……クリス君、被害状況の報告を頼む……」

「あぁ、人的な被害はあたしらより数ヵ月前に先に入った調査隊六名だけ。ノゾミ達やスィン博士の奮闘や本部からの梨紗博士の『ZERO-SYSTEM』によるバックアップ、更には突然の助っ人のお陰で負傷者も出さずに済んだ。最後のデカブツのせいで遺跡は崩落しちまったが……」

切歌と調が羨ましそうに千景を見ながらそう言うなか、クリスがそう風鳴司令に報告する。

「あればかりは俺達も予想外だったからな……数ヵ月前に自動人形の軍勢の犠牲になった調査隊には申し訳ないが、皆が無事だったことを素直に喜ぼう……」

「あの……遺跡の調査はどうなるのでしょうか?」

「直接の調査はもう無理だろうな。発掘するにもかなりの時間がかかる……」

「でも、貴女達が回収してくれた調査隊が所持していた、壁画の映像記録や今回の戦闘記録から遺跡に関する分析調査はできそうよ。」

崩落した遺跡の調査について、そう尋ねる雪那に対し、風鳴司令と梨紗博士はそう答える。

「そうですか……」

「ただ、ねぇ……」

「『棺』の中身に関しては米国の方で調べることになった。」

「え?そっちも梨紗博士とスィン博士が調べるんじゃ……」

「ッ……『上』から圧力があったのよ……」

「先史文明期より遥か昔の歴史的遺物だし、それを護っていた『棺』も含めて技術を独占したいんでしょうね……」

『『棺』の中身は米国が調べる』ということに首を傾げながらそう言う響に対し、梨紗博士が苦い表情でそう言うなか、スィン博士はそう言って補足する。

「そんな……」

「ちょっと待つデス!その『棺』を含めた遺跡のことを見つけたのはスィン博士や梨紗博士達、南極支部で身体を張って自動人形や『棺』を止めたのは私達デスよ!!」

「必死になって止めたもんを横からかっ浚うとか……ハイエナみたいな連中だな!!」

「それが政治、国家間のお付きあいというものよ。我慢なさい、私もスィンも納得していないんだから……」

「……スィン博士達も米国へ行くんですか?」

横から圧力をかけて『棺』に関する調査権を奪取した米国政府のやり口に憤慨する切歌とクリスに梨紗博士がそう言って諭すなか、ノゾミはそうスィン博士に尋ねる。

「いいえ。米国へ行くのは『棺』だけ。私も梨紗もまだ暫くは『SONGこっち』であの人が遺してくれた記録からアヌンナキに関する分析調査をするつもりよ。あの人の故郷で葬儀もしてあげたいしね。」

「という訳だからスィン博士と梨紗博士は『SONGこちら』に滞在することになった。今回の調査を始める際にも説明したが、アヌンナキはフィーネやアダム、更には異端技術のルーツとも云える先史文明、果ては人類の誕生に大きく関わりを持つ存在……その実態を探るのは俺達、『SONG』にとっても非常に意義のあるものだ。故に何かわかることがあれば、俺達にも情報が共有されることになった……構いませんね?スィン博士、梨紗博士……」

「えぇ。」

「勿論、何かわかれば知らせるわ。」

「エルフナイン君も必要があれば、手を貸してあげてほしい。」

「わかりました。」
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