棺を護りしもの

『SONG』、本部・・・

「あの障壁、やはりノイズの位相差障壁とは違います!!」

「このパターン………まるで、障壁というより次元が壁になっているような………!!」

「次元の壁………っ!?」

(まさか、フォールド断層………!?)

「いずれにせよあの障壁をどうにかしないと………!!」

『梨紗、聞こえてる!?』

そんななか、スィン博士から通信が入ってくる。

「えぇ、聞こえてるわ。スィン!そっちの状況も見えてる!!」

『なら、話が早いわね!データを随時送るから、解析を手伝って!!』

「了解。でも、スィンは戦闘を重視して!解析に集中し過ぎて被弾なんて笑えないわ。」

『えぇ……お願い。』

「それと……アレは使っちゃダメよ……」

『……わかってる……』

そうしてスィン博士が装着しているフリーダムから『棺』や障壁に関する観測データが送られてくる。

「パソコンを借りるわね。」

「は、はい!!」

カタカタ……ッ!!

パソコンの前に座った梨紗博士は片手で操作しながらスィン博士から送られてきたデータを元に解析を始める。

「……ちっ………」

が、程なくして舌打ちしながらその片手を止める。

「?梨紗博士、何か……」

「このままじゃ解析に時間がかかり過ぎる……」スッ

次の瞬間、梨紗博士はそう言いながら白と濃い青のツートンカラーの、丸みを帯びた縦長の箱状の端末を取り出す。

「?梨紗博士。それは?」

「……父の形見よ………」スチャ

首を傾げながらそう尋ねるエルフナインにそう答えながら端末…PETリンクと『SONG』のパソコンを赤外線で繋ぎ、ポケットから取り出したインターフェース・ヘッドセットを装着する。

「コード『ZERO』、起動。ゼロよ、私達を導いてみせて!!」

『認証。『ZERO-SYSTEM』、起動。』

パッパッパッパッパッ……

サァァァ……

パッパッパッパッパッ……

『!?』

梨紗博士がそう言った瞬間、PETリンクと繋がったパソコン画面に幾つかウィンドウが開き、英数字羅列が流れては閉じ、開き、流れ、閉じを繰り返す。

「………」

その画面を梨紗博士は身動きどころか瞬きすらせずに見入る。

「り、梨紗博士?」

そんな様子の梨紗博士にエルフナインは思わず狼狽える。

その瞳は黒から白に変化し、光が横から流れている。

「これが、吉田家のシステムか………!」

「それに、この演算速度………い、一体どんなシステムなんですか?」

「黙ってて……この子は扱いが難しいのよ………!」

今は亡き自らの父、吉田佑人博士が開発して遺した超高度演算システム、『ZERO-SYSTEM』の演算速度に困惑しながらそう尋ねるエルフナインにシステムの影響からか、梨紗博士が冷や汗を流しながらそう答えるなか、『ZERO-SYSTEM』は『棺』の障壁を解析し、貫通プログラムを構築する。

「っ、スィン!プログラムができたわ!転送するけど、すぐに全員後退して!!」

『ありがとう!でも、どうして……』

「ゼロの予測よ!このままだと全滅するわ!!」

『ッ!了解!!』

プツンッ!!

「……ふぅ………」ドサッ!!

「梨紗博士!?」

「大丈夫ですか!?」

「なんか凄い汗ですが!?」

『ZERO-SYSTEM』が構築した貫通プログラムを転送すると同時にゼロが予測した『未来』を通信で伝えた後、大量の汗を流しながら倒れ込むように座り込む梨紗博士に対し、藤尭、友里、エルフナインの三人はそう心配の声を上げる。

「ッ……私のことは良いから、今は自分達の仕事に集中なさい………!!」

対する梨紗博士は睨み付けるようにそう言った後、『棺』と戦う親友と装者達の姿が映し出されているモニターに目を向ける。

(どうすれば良い………私は、どうすれば良い………お願い……助けて………)

「…………ヒイロ………」

コンソールに手を着きながら立ち上がった後、その手を握り締めながら、梨紗博士はそう思いながら弱々しい声でそう呟く。

「っ、弱気になんてなってられない!………私は、私にできることをするだけ………!!」

が、すぐさまそう言いながら改めてモニターを観る。

モニターには『ZERO-SYSTEM』からもたらされる情報である数字の羅列が流れていた。
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