神の毒

ノゾミside・・・

「そ、そんな………」

「人が……炭に………」フラッ

「ヴィオラちゃんっ!!」ガシッ!!

「一体何がどうなってるの!?」

「………」

セッテが哀しみの表情を浮かべ、涙を流しながらふらつくヴィオラちゃんをエレンちゃんが支えたり、そう言うラミを始めとした他の皆がパニックになるなか、私は嫌にはっきりしない意識でセッテが助けようとした二人――だった炭を見つめる。

さっきまでの『左』からの痛みは嘘のように消え、茫然とする私の脳裏に二つの光景は過ってくる。

一つは『ウェズペリアこっち』が元に戻ってからもずっと悪夢ゆめでも見続けてきた、『ハルシオン世界向こう』で私が『助けようとして逆に滅ぼした国』、『シャングリラ』で見た、他でもない私の攻撃で燃え盛る街、殺してしまった人々の死体が至る所に転がる光景。

もう一つは『ハルシオン世界向こう』でも経験していない筈の光景きおく……

何処かの神社で、私と同い年で勝利(かつとし)君と同じ日本人だと思う子ども達が、今までの怪人やノイズとは違う、『白い異形』に食い荒らされていく光景。

「………どうして………だよ………」

「!?ノゾミちゃん?」

その二つの光景が過った瞬間、私の中で『戻ろうとしていたもの』がまた崩れ始め……

「どうしてだよォォォォォォォッ!!!」

『!?』

また、自分じゃ止められなかった……どす黒い『ナニか』が噴き出してしまった………
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