神の毒

(まだ、あんなものを使ってくるなんて……っ!!)

「く、くくく………」

デスガンが使用してきたデバイスの形状を見て、フェイトが胸の内で怒りを露にするなか、デスガンは嗤いながら完全に起き上がる。

「?何がおかしいんですか?」

『貴方は仮面ライダーの“力”を失ったのよ?さっきは不意を突かれたけどまさか、その小さな銃剣擬きで仮面ライダーに勝てるつもりかしら?』

「くくく……やはり、この『ゲーム』は、面白い……対戦相手も、そうだが、ゲーム、マスターが、良い……こうなる、ことを、想定、して、『新アイテム』を、くれて、いるんだ、からな………」ガチャンッ!!

その様子に胸の内の怒りを抑えながらフェイトや千景がそう尋ねるなか、デスガンはそう言いながらバックルが黒い銀のベルトを取り出し、装着する。

『!?新たなベルト?』

『クラッシュライザー!!』

新たに装着したベルト…『ホルスターベース』を見て、千景が首を傾げるなか、デスガンは手にしていた黒星に酷似したデバイス…ソロモンがショットライザーとスラッシュライザーのデータを組み合わせ、デスガンに合わせて製作した『ソロモンクラッシュライザー』をホルスターベースにセットする。

「まさか………」

「………」スッ

続けて、デスガンは今まで使用していたガイアメモリとは違う、『十二枚の翼を持つ深紅の蛇』が描かれた漆黒の長方形の箱のようなものを取り出す。

『ヴェノム!!』

『フォールライズ!!』

長方形の箱のようなもの…ソロモンが製作して渡した、『『楽園』でアダムとイヴを唆した『蛇』』のロストモデルを内包した『イーヴィルスネークゼツメライズキー』を起動させた後、デスガンはクラッシュライザーに挿入する。

『Kamen rider……Kamen rider……』

「変……身……」

『クラッシュライズ!!』

ズオオオォォォーーーッ!!

『キシャアアアァァァーーーッ!!』

音声が鳴り響くなか、デスガンがそう言いながら挿入したイーヴィルスネークゼツメライズキーのキー部分を手動で展開し、トリガーを引いた瞬間、クラッシュライザーから『十二枚の翼を持つ赤黒い大蛇』のロストモデルが飛び出してくる。

「『ッ!?』」

飛び出してきたロストモデル赤黒い大蛇フェイトと千景勇華・彼岸花フォームが思わず後方に飛び距離を取るなか、ロストモデル赤黒い大蛇はその巨大な身体で召喚主デスガンに巻きついてから十二枚の翼で包み込む。

ドロオオオォォォンッ!!

『イーヴィルスネーク!!』

パキィィィンッ!!

「………」

次の瞬間、ロストモデル赤黒い大蛇の身体は泥々に溶け、中から新たな仮面ライダーに変身したデスガンが現れる。

その姿は一見スカルにも見えるが、身体のラインは深紅の蛇に、口元はシャドームーンのようなクラッシャーに、複眼も赤黒く変化している。

右腕と胸、両足には深紅の、背中には漆黒の軽鎧を身に付け、左腕には深紅の蛇が左腕から絡みついて頭にかぶりついているような意匠があった。

『The poison is invisited to taboo.』
(その毒は禁忌へといざなう。)

最後に流れる英文が示すようにその姿は『ソロモンの毒に冒され、禁忌にいざなわれて『悪』に堕ちたスカル』の様だった。

「『!?』」ゾクッ!!

(こいつはヤバい……っ!?)

『姉さん……あいつは本当に『人間』なの……?』

変わり果てたデスガンの姿にそう思いながら戦慄するフェイトに対し、千景は恐怖と緊張が入り交じった声色でそう尋ねる。

(悔しいけど、こいつからはバーテックス以上に『死』を感じる……!!)

「人間の筈だよ。ただ、『人の死』に魅せられて狂った人間だけどね……」

「さぁ……『第二ステージ』に、入ろう、か……!!」

対するフェイトがそう答えるなか、こちらも英文通り、『人の死』という『毒』に冒され、『殺人の快楽』という『禁忌』にいざなわれたデスガンという一人の男が変身した新たな凶戦士、『仮面ライダーサマエル』はそう言いながらゆっくりと歩み寄ってきた。
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