杯の少女

「「「キシャアアアァァ……ッ!?」」」

シュウウウ………

ヴィヴィの“柳緑花紅”でジルの螺湮城教本が粉砕された
瞬間、海魔達が断末魔を上げながら消滅していく。

「!?私の本がっ!?海魔がぁぁぁっ!!?」

「アインハルトさん!!」

「!イタチさん!全速力で来てください!!」

その光景にジルがそう困惑の声を上げるなか、ヴィヴィはそうアインハルトに呼びかけ、アインハルトはそう言いながらイタチの進行方向に立つ。

「?わかった……」

対するイタチは首を傾げながらも言われた通りに全速力でアインハルトの方に向かっていく。

「後はお願いします!!」ガシッ!!

「!?」

「はあああぁぁぁーーーっ!!」ブンッ!!

「なっ!?」

次の瞬間、アインハルトはそう言いながら巴投げの要領でイタチをジルの方に向かって投げ飛ばす。

(普通、味方を投げ飛ばすか!?)

「くっ……!!」

アインハルトに投げ飛ばされてくるイタチにジルがそう困惑の声を上げるなか、イタチも内心困惑しながらも印を結ぶ。

「“千鳥”!!」

バチチチチチチチッ!!

次の瞬間、そう言うイタチの右手に強力な雷の魔力チャクラが纏われ、イタチはその右手を突きだしながら、アインハルトに投げ飛ばされた威力とスピードを上乗せしながらジルに向かって飛んでいく。

「!?」

(ま、マズい!!あれを食らったら………!?)

アインハルトに投げ飛ばされたイタチが突きだす右手に纏われた雷の輝きを見てジルが内心焦るなか、イタチの“千鳥”は目前へと迫る。

「何を遊んでいるのですか?『キャスター』。」

『!?』

ドカァァァンッ!!

「くっ!?」

が、そう言う凛とした女性の声と共にジルとの間に割って入ってきた紫の影がイタチを弾き飛ばす。

「くっ………」スタッ

「「「「イタチさん!」」」」

「大丈夫だ。」

「咄嗟の判断で魔力を纏わせた腕をクロスさせるとは……やりますね………」

弾き飛ばされ、上手く着地した後、そう言ってくる詩音、ヴィヴィ、アインハルト、アリサの四人にそう言うイタチに対し、イタチを弾き飛ばした影―黒を基調としたボディコン服に身を包み、バイザーで目元を覆った、紫のロングヘアーの女性はそう言う。

(くっ……ここにきて新手か………)

「……何者だ?貴様は………」

またしても突然現れた新たな敵にイタチは内心で舌打ちしながらも村正を構えながらそう尋ねる。

「………」

シュウウウ……

『!?』

が、バイザーの女性はイタチの質問には答えずに先程、ヴィヴィに粉砕されたジルの螺湮城教本の残骸に右手をかざし、紫の魔力を流し込む。

シュウウウ……パキィィィンッ!!

次の瞬間、残骸はひとりでに女性の手に集まり、元の螺湮城教本に修復される。

『!?』

「なっ!?魔導書を修復しただと!?」

「感謝しますよ、『ライダー』………」

「どうやら『時空管理局』の戦力を甘くみていたようですね。一旦引き上げますよ、キャスター。」

螺湮城教本が修復されたことにイタチがそう困惑の声を上げるなか、そう礼を言うジルに対し、バイザーの女性―ライダーはそう言いながら螺湮城教本を手渡す。

「!?そんな……ジャンヌが目の前にいるのに……!!」

「そのジャンヌを取り戻すためにもここは一旦退いて体制を整えろというのが『英霊』である私達を顕現したマスターソロモンからの命令です。彼の命令を無視することが何を意味するのか……私と同じく彼の魔力によって『クラスカード』から顕現された貴方もよくわかっているでしょう?」

騎兵ライダーを通じて告げられた契約主であるソロモンからの撤退命令に食い下がろうとする魔術師ジルに対し、騎兵ライダーは冷静に且つ冷徹にそう言いくるめる。

「!?ソロモン……!それにクラスカード………!?」

「ッ……仕方ないですね………」

パァァァ………

ライダーが口にしたソロモンの名前や『クラスカード』という単語になのはが反応するなか、ジルはそう言いながら自分達の足元に魔法陣を展開する。

「次こそは必ず!『聖杯』共々お迎えに上がりますよ!ジャンヌ!!」

次の瞬間、魔術師ジルはそう言いながら騎兵ライダーと共にその場から消えた。
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