杯の少女

『わかったわ。こちらからはギンガとヒューイを向かわせるからそれまでなんとか持ち堪えて!!』

「了解!!」

「ジャンヌを惑わせる者共めぇ……私が一人残さず、駆逐してみせましょう!!」

インカムの向こうからそう言う佳奈多にアリサがそう言うなか、そう言うジルの意思に従って海魔達が向かってくる。

「「「ッ……」」」

向かってくる海魔を見て、ヴィヴィとアインハルトは拳を、アリサはクレイドルを構え直す。

「……なるほど………」

「?イタチさん?」

「何が『なるほど』なんですか?」

そんななか、一人だけ納得したような声を上げるイタチに対し、ヴィヴィとアインハルトはそう尋ねる。

「貴様の“力”……その本が源になっているようだな………」

対するイタチは写輪眼でジルの手にある螺湮城教本を見据えながらそう指摘する。

「!?」

「「?」」

「?あの男が魔法の行使にあの本を使っているのは見てわかりますが」

「いいえ。イタチさんが言いたいのはそういうことじゃありません……そうですよね?イタチさん………」

そんなイタチの指摘にジルは動揺の表情を浮かべ、ヴィヴィとアインハルトが首を傾げるなか、首を傾げながらそう言うアリサの言葉を遮りながら詩音はそう言う。

「……召喚魔導士に限らず、魔導士は自身の魔法をデバイスによって安定、高速化させている。デバイスの有無で安定性も発動速度も違うからな。形式は違えど、それは奴の魔導書も同じ筈だ。特に召喚となれば、補助なしではまともに使えない程に時間がかかる………」

「言われてみれば……」

「この召喚のスピードは速すぎます……!」

「だから、俺はこの『眼』で奴の魔力の流れを視てみた……そして、わかった。奴は自分の魔力ではなく、あの魔導書そのものに宿っている魔力を利用しているということにな。」

自身が感じた、ジルの魔法に対する違和感に関する解説を聞いて、ジルの召喚の異様な速さに気付いたヴィヴィとアインハルトがそう言うなか、イタチは写輪眼でジルの螺湮城教本を見据えながらそう断定する。

「ということはあの魔導書を破壊すれば……ヴィヴィ!!」

「うん!!」

螺湮城教本そのものがジルの魔術を発動させるための魔力源だというイタチの推測を聞いたなのははそうヴィヴィに言い、ヴィヴィはそう返事しながら両手で拳を握り、両足を横に向けながら腰を落とし、身体を縮めたような状態を保った構えを取る。

ドンッ!!

次の瞬間、ヴィヴィは真っ直ぐにジルの方に向かっていく。

「「「「「シャアアアァァァッ!!」」」」」

そんなヴィヴィに対し、数体の海魔が行く手を阻もうとする。

「“シャイニングブレード”!!」

「火遁、“鳳仙花の術”!!」

ズババァァァンッ!!

ズガガガァァァンッ!!

「「「「「シャアアアァァァッ!?」」」」」

が、アインハルトが“シャイニングブレード”を、イタチは先程の“豪火球の術”よりも小さな火球、“鳳仙花の術”を放ち、海魔を撃破しながらヴィヴィを援護する。

その間にヴィヴィはジルの目前へと迫る。

「フッ!!」

「!?」

ズガァンッ!パキキキ……ッ!!

ヴィヴィがジルの目前まで迫るなか、アリサは通常のバスターから氷属性に特化させたアーツに換装させたクレイドルで青い撤甲榴弾をジルの足元に撃ち込み、凍り付かせて身動きを封じる。

「はあああぁぁぁーーーっ!!」

「くっ!私を護りなさい!禍鏡アイルミラー!!」

目前まで迫ったヴィヴィが拳を振り翳してくるなか、ジルはイタチの“豪火球の術”を反射するのに召喚した鏡、禍鏡で防御しようとする。

「虚刀流、“柳緑花紅”!!」

「!?」

ドカァァァンッ!!

が、ヴィヴィがそう言いながらジルの禍鏡に拳をぶつけた瞬間、衝撃が貫通してジルの手にある螺湮城教本を粉砕した。
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