杯の少女

「んん~?そこを退きなさい。銀髪のお嬢さん………」

「退きません。仲良くなったばかりの子を貴方のような人に引き渡したり等しません!」

「!?」

(お兄ちゃん………)

首を傾げながらそう言うジルに対し、睨み付けながらそう言うアリサの背中に、美遊は元いた世界で自分を『運命の鎖』から解放するために『ミッドチルダ』に逃がしてくれた『兄』の背中を垣間見る。

「おおっ………おおおおおっ!ジャンヌぅぅぅ!!容姿は違えど、その声は正しくジャンヌぅぅぅぅぅぅ!!!」

そんななか、偶然にもアリサの声が自らが恋い焦がれる盟友、ジャンヌダルクの声とよく似ていることにジルはそう言いながら身悶える。

「「「「「え?」」」」」

(……なんなんだ?こいつ………)

「ッ………」

そんなジルの様子にヴィヴィ、アインハルト、リオ、コロナ、ミウラの五人は思わずそう言い、イタチもそう思いながら若干引くなか、アリサは睨み付けながらクレイドルを強く握り締める。

「あぁ……貴女は『時空管理局そちら』にいるべき方では、ないいいいぃぃぃーーーっ!!!」

ズオオオォォォーーーッ!!

そんなアリサに対し、ジルはそう言いながら海魔の群れを向かわせる。

「はあああぁぁぁーーーっ!!」

ズバァァァンッ!!ズバァァァンッ!!

対するアリサはクレイドルで向かってくる海魔を次から次へと斬り伏せていく。

「美遊ちゃん、四人の拘束を解いてあげて。」

「ッ……はい!」

その間になのははそう言いながら、美遊と協力してイタチやヴィヴィ達に施した“レストリクトロック”を解除する。

「申し訳ありませんが、次元は違えど同じ管理局職員。共闘を願えますか?」

「元よりそのつもりだ。」スッ

「えぇ……先もお伝えした通り、私達は『最悪の未来』を回避するため、衛宮美遊その子を護るために来たんですから!!」スッ

真剣な表情で共闘を要請するなのはにそう答えながら、イタチは腰に差してある自身のインテリジェントデバイスである刀、村正を引き抜いて構え、詩音は数枚のタロットカードを取り出し、構える。

パァァァ……ッ!!

すると次の瞬間、タロットカードに魔力とは違うエネルギーが纏われる。

「!?」

(この感じは……魔力じゃ…ない………っ!?)

「“アルカナ・シューティング”!!」

シュパパパパパァァァンッ!!

タロットカードに纏われていくのが魔力とは違うエネルギーだと感じ取ったなのはがそう困惑するなか、詩音はそう言いながらタロットカードを投擲する。

投擲されたタロットカードは誘導操作弾の如く飛び回り、数体の海魔を貫く。

「あああっ、ジャンヌぅ!何故ですぅぅぅ!!何故、そのような者達のために戦うのです!?」

詩音がエネルギーを纏わせたタロットカードで数体の海魔を撃ち抜いた後、ジルはそう言いながらイタチ達にも海魔を向かわせる。

「いくぞ、村正……」

『御意、マスター。』

「大丈夫ですか?ヴィヴィさん……」

「だ、大丈夫です………ちょっと前のことを思い出しただけなので………それに、なのはママは私が護るんだ………!!」

シュウウウ………

「!?」

向かってくる海魔を見て、イタチは村正を、アインハルトとヴィヴィは拳を構えながらそう言うなか、詩音は先程、自身やアリサが撃破した海魔から赤い障気のようなものが噴き出していることに気付く。

(まさか……毒………っ!?)

「待ってください!皆さん!!今のまま、その使い魔を相手にするのは危険です!!」スッ

海魔から噴き出る赤い障気…一度吸えば、肺を腐らせる臓物臭の危険性に気付いた詩音はそう言いながら『節制』、『審判』、『恋人』、『悪魔』の四枚のタロットカードを取り出す。

「ミカエル!」ヒュッ!!

取り出した後、詩音はそう言いながら『節制』のカードを南に投げる。

カァァァ……

『節制』は青い光を纏いながらアーチャー宅の敷地内の南の位置でひとりでに停止する。

「ガブリエル!」ヒュッ!!

続けて、白い光を纏わせた『審判』を投げ、西の位置で停止させる。

「ラファエル!」ヒュッ!!

続けて、緑の光を纏わせた『恋人』を東に。

「ウリエル!『博麗はくれい浄祓じょうふつ結界けっかい』!!」

パアアアァァァーーーッ!!

『!?』

最後に赤い光を纏わせた『悪魔』を北の位置に停止させ、両手を合わせながらそう言った瞬間、四枚のタロットカードを起点に各々の光が拡がり、アーチャー宅敷地内全体を覆う程の結界へと変わる。

「え?なにこれ!?結界!!?」

「ですが、魔力は全く感じません……どちらかと言えば、私がシャトラさんから受け継いだガイアの“力”に近いような……」

シュウウウ………

「!?我が海魔の臭いが!!?」

展開された詩音の『博麗浄祓結界』にヴィヴィとアインハルトがそう驚きの声を上げるなか、海魔の臓物臭が消えていくことに気付いたジルはそう困惑の声を上げる。

「『博麗浄祓結界』は私が『毒』と認識したモノ全てを浄め祓います……四大天使に置き換えた四枚のタロットで位置付けする必要がありますがね………」

(この感じ………通常の結界とは違う、けど、この感じは………霊夢さんの『フィールド キャプチャー』と似ている………?)

『博麗浄祓結界』で海魔の臓物臭を無効化した詩音がそう説明するなか、なのはは詩音の『博麗浄祓結界』が霊夢の『フィールド キャプチャー』に似ていることに気付く。

「詩音さん……あなたは一体………」

「改めて、私はこの世界を含む『全ての次元』を護るために産み出された『博麗シリーズ』のNo.04……博麗詩音です………!!」

戸惑いながらそう尋ねるなのはに対し、詩音はジルを睨み付けながらそう名乗る。

「博麗シリーズ………!!」

対するなのははそう言いながら二ヶ月前、霊夢から受けた『依頼』のことを思い起こした。
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