杯の少女

『ムラシマ』前・・・

「………」

「はい、セレナちゃん。」

ティアナ達と別れた後、ベンチに静かに座るセレナに対し、スバルは近くの売店から購入したアイスを差し出す。

「あ。ありがとうございます……スバルさんのは高いですね……」

対するセレナはお礼を言いながら三段アイスを受け取るもスバルのもう片方の手にある七段アイスを見て、目を丸くしながらそう言う。

「えへへ……あたし、アイスが好物なんだよねぇ……」

対するスバルはそう言いながら、隣に座りながら一番上のアイスを一口で頬張る。

「んん~~♪」

「………」

美味しそうに食べるスバルを見て、セレナも三段アイスの一番上の苺アイスを一舐めする。

「!美味しい……!!」

「でしょう♪」

二人がそう話しながらアイスを堪能するなか、

「たくっ……あんだけ人気なら変装くらいしろよ………」

「ごめんなさい。私もまさか、あんなことになるとは思わなかったわ………」

少し疲れた様子のクリスとマリアがそう話しながら店から出てくる。

「マリア姉さん!!」

「セレナ……さっきはごめんなさい。怪我とかしてないかしら?」

「うん。スバルさんが咄嗟に庇ってくれたから大丈夫……」

「そう……ありがとう、スバル。セレナを護ってくれて………」

「いえいえ……クリスさんもお疲れ様です。」

「あぁ……こいつと一緒にあの人混みから脱出すんのはマジでしんどかった………」

セレナを護ってくれたことについて、そうお礼を言うマリアにそう返した後、そう労いの声をかけるスバルに対し、クリスは疲れた様子でそう言う。

「そういえば、他の皆は?」

「あ。暁さんと月読さんとティアナさんは響さんと未来さんを探しに一旦店の中に……」

「あ。そうだ。ティアに連絡しないと……マッハキャリバー。」

『Yes.』

首を傾げながらそう尋ねるマリアにセレナがそう説明するなか、スバルはそう言いながらティアナと通信を繋げる。

『スバル?どうしたの?』

「あ。ティア。今さっき、マリアさんとクリスさんが出てきて合流したよ。」

『そう。なら、丁度良いわね。こっちも響と未来の二人を無事に保護したわ。後でそっちで合流しましょう。』

「OK!」

ブツンッ!!

「ティア達も無事に響ちゃんと未来ちゃんを見つけたみたいです。」

「そう……良かったわ……」

『とりあえずお二人もアイスを食べて、お待ちしてはどうでしょう?』

「うぉっ!?」

ティアナとの通信を終えた後、そう言うスバルの言葉にマリアが安堵するなか、そう提案するマッハキャリバーの声にクリスは思わずそう声を上げる。

「あぁ、その魔法のアイテムの……デバイスって言ったっけ?のAIか………」

「うん。昨日もフェイトさんから聞いたと思うけど、マッハキャリバーはAI…『心』を宿したインテリジェントデバイスであたしの相棒なんだ……」

『驚かせてしまい、申し訳ありません。』

直後、落ちつきながらそう言うクリスに対し、スバルとマッハキャリバーはそう言う。

「それにしても、マッハキャリバーもそんなことを言うようになったんだねぇ!昔なら絶対に言わなかったのに……」

『相棒の影響ですよ。あれから数年も経っているんですから、私も学習します。』

「あははは♪そっかぁ……あれからもう数年も経っているのかぁ……」

「………マリア姉さん……」

「ん?」

「私達のシンフォギアにもマッハキャリバーさんみたいなAIを付けられないかな?」

楽しそうに言葉を交わすスバルとマッハキャリバーを見て、セレナはそうマリアに尋ねる。

「そうね……多分、できるかもしれないわね。今はまだ研究中だけど、そう遠くない筈よ……」

「そっかぁ………」

頭を撫でながら優しい笑顔で可能性を示唆するマリアの言葉にセレナは目を輝かせながらアガートラームを見つめる。

「それじゃあ、私達もアイスでも食べながら待ちましょうか。」

「そうだな……すいません。オススメは何ですか?」

「そうですね。今の時期なら旬の林檎が入った林檎バニラが一番のオススメですね。他にはこのマシュマロが入ったチョコマシュマロはどうですか?」

オススメについて、そう尋ねるクリスに対し、店員は笑顔でそう薦める。

「じゃあ、あたしはこの林檎バニラで……マリアは?」

「私はちょっとこのチョコマシュマロに挑戦してみようかしら。」

「林檎バニラお一つとチョコマシュマロお一つですね。合計で730Gです。」

「じゃあ、これで……」

「はい。ちょうどですね。では、少しの間、お待ちください。」

そうしてマリアとクリスもアイスを購入し、四人はベンチに座って、食べながら待つことにした。
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