杯の少女

『ささめゆき』・・・

「暇だなぁ~・・・」フリフリ

「♪」シュッ!シュッ!

「………」

『ささめゆき』にて、客が来なくて暇を持て余した戦兎がそう言いながら猫じゃらしで兎と遊ぶなか、龍我は兎をジィッと見つめる。

(うーん……なぁーんか既視感?っつうもんを感じんだよなぁ……)

カランカラーン♪

「本当にここなの?なんか喫茶店みたいだけど………」

「でも、確かに魔力を感じるよ。」

「もしかしたら保護されてるかも……すいませーん。」

龍我がそう思いながら首を傾げるなか、今は自分達にいる筈のアキ、レイラ、ツキトの三人がそう話しながら入ってくる。

「!?」

(ジニア!?)

「あ。いらっしゃい。お好きな席にどうぞ。」

入った直後、かつて、自分も巻き込まれた『ジニア動乱』の首謀者であるジニア・ロックディールとよく似た容姿の戦兎を見てツキトがそう思いながら固まるなか、戦兎はそう言いながら兎との遊びを終え、カウンターに立つ。

「?ツキト。どうかした?」

「あ、あぁ、別に何も……」

(似ているけど、雰囲気が全く違う……別人か……)

「見つけた……!!」

首を傾げながらそう尋ねるアキにツキトがそう思いながら答えるなか、レイラはそう言いながら兎に近付いていく。

「ん?その兎、君のペット」

「探したわよ!エボルト!!」

「はぁぁぁっ!?」

「エボルトォォォッ!?」

そう言いながら兎を捕まえるレイラの言葉に戦兎と龍我の二人はそう困惑の声を上げながら兎の方を見る。

「………久しぶりだなぁ。戦兎、万丈………」

対する兎………戦兎がホワイトパネルの“力”で創造した『新世界の地球』で人知れず兎の姿になった後、レイラに召喚され使い魔契約した星狩り族、エボルトは不敵な笑みを浮かべながらそう言う。

「で、なんでまた兎に化けてこの世界にいるんだよ?」

数分後、一先ず落ち着いた龍我はテーブルに腰掛けながら、真剣な表情でそうエボルトに尋ねる。

「正確には戦兎が造り出した『新世界の地球』でこの姿で生き延びたのち、魔法世界、『ムンドゥス』にレイラの使い魔として召喚され、散歩の最中に次元断裂と呼ばれる現象に巻き込まれてこの世界に迷い込んだ……だな。」

「あたし達はこいつを連れ戻すためにこの世界に来たの。」

「え?君達、この世界の人間じゃないの?」

対するエボルトはレイラにお仕置きとして着せ替え人形にされながらそう答えるなか、そう説明するレイラやツキト達に対し、戦兎はそう尋ねながら月音が予めポットに淹れていたホットコーヒーが注がれたカップ三人前を運んでくる。

「はい。私達は魔法世界、『ムンドゥス』の人間なんです。この世界には遊びにきたりしてますけど……レイラとエボルトは初めてで私は二回目でツキトは四回目ですが……」

「なるほど・・・」

「異世界ってそんな気軽に渡れるもんなのか……?」

「まぁ、あたし達の場合、ツキトやアキの親が次元を渡れる“力”を持ってるし、この世界にいるツキトの友達の親達も逆に次元を渡れるからね。(ズズッ)あ。このコーヒー、美味しい!」

「ほんと、砂糖なしでも美味しい!」

「うん。良い豆使ってるね。」

目を丸くしながらそう尋ねる龍我にそう答えながらレイラ、アキ、ツキトの三人は月音が淹れておいたホットコーヒーを堪能した。
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