杯の少女

アトラン王国・・・

「急いで!ヴィオラちゃん!!授業が始まっちゃう!!」

「う、うん!!」

ノゾミ達より登校時間が遅れてしまったエレンとヴィオラの二人はそう話しながら学園へと駆ける。

「あれ?」

「どうしたの?エレンちゃん。」

「彼処に女の子が……」

「どうなってんだよ。この学園………四方八方、塀に囲まれて出入口ないじゃん………」

そんななか、二人は学園の塀の前で項垂れる、茶髪のロングヘアーに黒い瞳の(身長的な意味で)小学生くらいの少女が目に入る。

「どうしたんだろう?」

「迷子かな?」

ヴィオラとエレンはそう言いながら項垂れている少女に歩み寄っていく。

「マジでどうなってんだよ。この学園………」

一方の少女、月音はそう言いながら項垂れる。

「昨日、街で聞いた通りの道で学園には着いたもののかれこれ三十分くらい辺りをグルグル回ってるのに出入口が見付からないとか……どうやって登校しろってんだよ……マジで軍の要塞か何かか?この学園は………」

月音がそう言いながら項垂れるなか、

「ねぇ。どうしたの?」

「お腹でも痛いの?」

「ん?」

そう話しかけてくる二人の少女の声が聞こえてくる。

振り向くと、金髪の三つ編みに緑の瞳の少女と銀髪のロングヘアーの少女がこちらを不思議そうに見つめている。

(同じ制服……ということはここの生徒か………)

「いや、お腹は別に大丈夫なんだが……私は転入生なんだが、学園への入り方がわからなくて………」

「転入生?」

「?」

二人の制服を見ながらそう事情を話す月音の言葉に二人の少女・・・ヴィオラとエレンは首を傾げる。

((初等部なんてあったっけ……?))

「………言っておくが、私の年齢は17歳だぞ………」

「「嘘っ!?」」

そんな二人の疑問に薄々気付いた月音の言葉に二人は思わずそう困惑の声を上げた。

『フォールテ学園』内、廊下・・・

「ここが職員室だよ。」

「じゃあ、私達はこれで……」

「わかった。え~と……」

「あ。私はヴィオラ・ダンテライ。この子は幼なじみで親友のエレン・デュークちゃん。」

「よろしくね。」

(あ。この世界だと名字は後ろに付くのか……)

「私は月音・星宮。二人には本当に助かった。感謝してる。」

その後、学園に入り、職員室前まで二人の案内で辿り着いた後、三人は互いに自己紹介する。

(まさか、魔力認証で出入口が現れるセキュリティシステムだったとは……学園が建てられたのは結構昔らしいけど……設計者を殴りたい……)

「困った時はお互い様だよ。」

「ヴィオラちゃん、急がないと本当にヤバい!!」

「そうだった!じゃあ、またね!!星宮さん!!」

学園のセキュリティシステムについて、月音が内心そう思っているなか、ヴィオラとエレンはそう言いながら自分達の教室へと駆けて行く。

「そういえばあの二人は遅刻しそうになってたんだっけ………なんか悪いことしちゃったかな………」

(それにしても不思議な『繋がり』がある二人だったな………)

「……と、いけないいけない……早く担任の人に挨拶しないと………」

コンコンッ♪

ガラッ!!

「失礼します。今日から転入する月音・星宮という者なんですが………」

「あぁ、貴女が星宮さんね。私が貴女が転入する1年Sクラス担任のヴィヴィオ・ナカムラ。よろしくね。」

二人と別れた後、そう挨拶しながら職員室に入ってきた月音に対し、担任のヴィヴィオがそう挨拶しながら歩み寄ってくる。

「よろしくお願いします。ナカムラ先生。」

「ごめんね。本当なら出迎えに行かなきゃいけなかったんだけど……今日、やる参観会の準備がちょっと手間取っちゃって………」

「大丈夫です。学園の生徒二人に助けてもらったので。」

「そうなの?その子達の名前は?」

「ヴィオラ・ダンテライさんとエレン・デュークさんです。」

「あ。その子達も1年Sクラスだから馴染みやすいかもね。」

(あ。あの二人も同じ1年Sクラスなんだ………)

「それじゃあ、行こうか。」

「はい。」

そうして二人は1年Sクラスの教室へと向かった。
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