戦場に響き渡る歌声

「バカナッ!?相殺サセタダトッ!!?」

相殺されたことに『何か』が困惑の声を上げるなか、シュガーはルーミアへと突っ込む。

無意識に頭に浮かぶ歌を口ずさみながら。

『破壊ノ願イ』 歌い手:シュガー 作詞作曲:作者の友人、月詠(作者)さん

「楝獄にあるような、黒い炎
それを身に纏う貴女は
まるで、八岐大蛇に仕えし巫女のよう…」

「歌イナガラ突ッ込ンデクルダト?・・・フザケテイルノカッ!?」

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

「翼に、龍に
次々と変わる黒の炎
あぁ、何故…?
貴女の中に何が起きたの…?」

『何か』はそう言いながら炎弾を放ってくる。

が、シュガーはその炎弾を避けながら、歌いながら突き進む。

「分からない
分かることが出来ない
それでも
私が出来ることは…

Ah―――…………」

「ソノ・・・不快ナ歌ハ止メロオオオォォォーーーッ!!!」

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

『何か』はそう言いながら炎弾の数を増やしてくる。

「この歌は……」

「「止めさせない!!」」

が、分身達がそう言いながら弾幕やスペカを放って炎弾を撃ち落とし、シュガーを援護する。

「喜び、怒り、悲しみ
三人の私の分身
三人の私の感情
協力してくれなかった彼女達を
説得してくれたのは貴女」

「チィッ!!羽虫共ガッ!!」

『何か』の注意が分身達に向いている間にシュガーはさらに歌を紡いでいく。

「助けたい、救いたい
いつもの貴女に、戻ってほしい
だから、だから…

Ah―――…………」

「!?」

(フォニックゲインが高まっていく!?)

「人間の本質は闇?
確かにそうかもしれない
けれど
人間は光でもある」

シュガーの歌でフォニックゲインが高まっていくのにマリアは驚愕する。

「人間なんて矛盾に満ちている
光も闇も、希望も絶望も、優しさも残酷さも
いっぱい、いっぱい!」

「ッ!!」

(これなら!!)

マリアは咄嗟にアガートラームの特性を活かし、シュガーの歌によって上がっていくフォニックゲインを自身とシュガーの強化に回す。

「貴女は大切な友達
だから、私は手を伸ばす」

「クッ!!」

バキィィィンッ!!

歌いながら向かってくるシュガーから逃げるように『何か』は飛翔し、マリアが作り出した光のドームから無理やり脱出する。

シュガーもその後を追い、飛翔する。

「ドームノ外デナラ!!」

ボオオオォォォーーーッ!!

ドームの外にある大空へと飛翔した後、『何か』はそう言いながら真上へと両手を掲げ、黒い太陽のような巨大な炎弾を作り出す。

「なっ!?ドームの外に出たからってまだあれ程の“力”を」

「裁キノ闇ヲ・・・受ケ入レロオオオォォォーーーッ!!!」

ズガアアアァァァーーーンッ!!

『何か』はそう言いながら、作り出した黒太陽弾をシュガーに向けて、投げつけ、シュガーは黒太陽弾に呑み込まれる。

ドカアアアァァァンッ!!

「貴女の中にある闇を
私が破壊してみせる!
例え、破壊が出来なくとも
少しでもいい、分かち合うことなら出来る!」

「!?ナニッ!?」

が、次の瞬間、黒太陽弾が内側から木っ端微塵に弾け飛び、中から帽子だけが無くなったシュガーが飛び出し、突き進む。

カァァァ・・・ッ!!

普段は白一色だった羽の宝石が虹色に輝き出す。

「貴女は大切な友達
だから、私は手を伸ばす」

「クッ・・・来ルナアアアァァァーーーッ!!!」

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

向かってくるシュガーに脅威を感じた『何か』はそう言いながら炎弾を乱射してくる。

が、シュガーの羽の宝石の虹色の輝きが、『何か』の炎弾を尽く破壊していく。

「!?身体ガッ!?」

そんななか、『何か』に呑み込まれそうになっているルーミアが抵抗しているかのように『何か』の身動きが止まる。

「一緒に笑おう
いつものように、日常の中で
一緒に遊ぼう
いつものように、日常の中で

Ah―――……!」

「ツゥゥゥッ!?」

シュガーは『何か』の懐まで潜り込む。

ポス・・・ッ!!

「!?」

「お願い、戻ってきて…
貴女がいないと、寂しいよ…」

次の瞬間、シュガーはそう言いながら『何か』・・・ルーミアの胸に拳を軽く当てた。

「シュガー・・・」

パアアアァァァンッ!!

その瞬間、ルーミアの背中から出現していた八本の黒炎龍の頭がガラスのように砕け散る。

「ッ!!今のうちにっ!!」ヒュッ!!

カァァァ・・・ッ!!

その一瞬の隙を突いたマリアは短剣を投げつけて、ルーミアとシュガーを取り囲むように三角錘のエネルギー力場を形成する。

カアアアァァァッ!!

「うっ……!?」

「「「シュガー!?ルーミア(ちゃん)(さん)!?」」」

その直後、二人を取り囲んだエネルギー力場が光り輝いた。
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