武人の国

城・・・

ドオオオォォォンッ!!

『!?』

確たる情報が集まり、佳奈多達が吉良邸に乗り込む準備をしていた頃、轟音と共に強大な魔力反応が出現する。

「この感じ……まさか!?」

『!?』

「………」

そう言うなのはを始めとした一同が外に出てみると、暗雲が空を覆い尽くし、吉良邸の上空にはバリアジャケットの代わりに赤いラインが入った紫の光が身体のラインがわかるように全身を包み、双眼は白目の部分が黒に、瞳の部分が金に変わり、髪も白髪に変わり、帽子の代わりに天使のような紫の光の輪が出現し、背中からは右が白、左が黒の三対の翼が生えたはやてが無表情で飛行していた。

「!?あれってもしかして、はやてさん!?」

「でも、様子がおかしい………」

「な、なんだ!?あの姿は!?いくら『闇の書の闇』の欠片に侵食されたとしてもあれでは似ても似つかん別物ではないか!!」

「嘘でしょ。あれってまさか………」

変わり果てたはやての姿にノゾミ、セッテ、ディアーチェの三人がそう困惑の声を上げるなか、今のはやてから発せられる“力”にかつて、自分も体験させられたものと同じものを感じ取った美琴はそう言いながらはやてを凝視する。

「あの状態に何か心当たりがあるのか!?」

「えぇ。私の考えが正しければ、今の彼女は昨日、あなたや佳奈多さんが言っていた『闇の書の闇』じゃない………」

そう尋ねるディアーチェにそう答えながら、はやてを凝視しながら美琴は言葉を紡ぐ。

「……多重能力デュアルスキル以上に実現不可能と云われた幻の存在……絶対能力レベル6……!!」

「?絶対能力?」

『?』

「絶対能力って確か、『学園都市』が目指した超能力レベル5の先だったわね。」

「はい。昔、能力を暴走させることで私を一時的に絶対能力に進化させようとしたマッドサイエンティストが言うには『人の身でありながら『神の領域』に達する』と言っていました。今の彼女からはあの時、私も体感させられたものと同じものを感じます。」

美琴が言った『絶対能力』という単語にノゾミやディアーチェ達が首を傾げるなか、そう尋ねる佳奈多に対し、美琴は真剣な表情でそう説明する。

「でも、はやてちゃんは超能力者じゃなくて魔導士です。それなのにどうして……」

「……ネットワークだ……」

「え?」

「これまでの情報から推測するにはやては身体の中の『闇の書の闇』の欠片と子ども達の脳波のネットワークによって絶対能力に進化させられたんだ。再調整ではやてにもネットワークを繋げ、そこから刺激を与えて欠片を意図的に暴走させると同時にネットワークから子ども達のサイキックも与えることでな。」

「ッ……できることなら連中がはやてを狙った理由は欠片じゃないことを祈りたかったけど……」

「最悪な形で当たってしまったな……小鴉の阿呆が……!!」

はやてが絶対能力に進化した理由について、龍斗がそう推測するなか、佳奈多とディアーチェは悔しそうな表情でそう言う。

「………」

ズガガガガガァァァンッ!!

『!?』

そんななか、暗雲から紫の雷・・・“夜天の雷”が降り注ぎ、街を攻撃し始める。

「!?街が!!」

「急いで住民達の避難を!!」

「心配はいらない。既に何日か前から移動系のサイキックを持つ武人達を数名ずつ、各区画に常駐させ、異常が起きた時はすぐさま国外にサイキックで民を避難させるよう、手配させている。」

「?徳田様?」

ノゾミとセッテがそう言うなか、吉宗がそう言いながら尚美と共に現れる。

「先程、民達の避難が完了した報せが入っている。少なくとも、人的被害が出ることはない。」

「徳田様。その格好は確か」

ドサッ!!

『!?』

「!?ルーミア!?」

そんななか、突然、ルーミアが倒れ込む。

「ルーミア!!急にどうしたの!?」

「うっ……む、胸が……!?」

慌てて駆け寄りながらそう尋ねるシュガーに対し、ルーミアは冷や汗を流しながら、苦しそうに胸を押さえながらそう答える。

シュウウウ・・・ッ!!

そのルーミアの身体から僅かな闇が溢れ始めた。
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