初デートと家出少年

「このホットケーキ、クリームの甘さとフルーツの酸味が程よく合って美味しい!!」

「このロースカツサンド……肉厚なカツとサクサクな衣に柔らかいパンに濃厚なソース……完璧だな……」

それから少しした後、みゆきとマコトはそう言いながらホットケーキとロースカツサンドを堪能する。

「マコトさんのロースカツサンドも美味しそうですね。」

「一個、食うか?」

「良いんですか?」

「あぁ、代わりにホットケーキを一切れもらうけど。」

そうしてみゆきはマコトのロースカツサンド一個を、マコトはみゆきのホットケーキ一切れを食べる。

「なるほど……確かにこいつは美味いな……」

「このロースカツサンドも確かに美味しいです♪」

(どうでもいいけど、他にもお客がいることはわかってるのかしら。この二人は……)

アリスがそう思いながら見ているなか、微笑ましい雰囲気の二人は楽しそうに談笑しながら食事を続ける。

「ふぅ……美味かった……」

「美味しかったですね。」

「はい。デザートのレアチーズケーキよ。」

十数分後、食事を終えたマコトとみゆきの前にアリスはそう言いながらワンホールのレアチーズケーキを置く。

「え?」

「?頼んでないですよ。」

「あちらのお客様からのサービスよ。」

「よっ。」

「「蒼牙さん!?」」

アリスがそう言いながら指差した先にいた、っていうかマコトとみゆきが来る前からいた蒼牙にマコトとみゆきはそう困惑の声を上げる。

♪~♪~

そんななか、何処かから音楽が聞こえてくる。

「ん?この曲………」

「前に何度か聞いたことあるような……」

「あぁ、今日はあの日だったわね。」

その音楽を聞いて、マコトとみゆきが首を傾げながらそう言うなか、アリスは洗ったカップを拭きながらそう言う。

「?」

「?アリスさん。『あの日』というのは?」

「週に一度、彼女がお客様のために歌いに来てくれるのよ。キーボードを弾きながらね。」

首を傾げながらそう尋ねるみゆきにそう答えながら、アリスはある方を見る。

そこにはキーボードで演奏するカオリの姿があった。

「「カオリさん!?」」

「(chorus)ペガサス♪遠い宙♪」

「(chorus)グローリア♪届くように♪」

ワァァァーッ!!

マコトとみゆきがそう困惑の声を上げるなか、カオリは歌い始め、その歌声に他の客が湧き始める。

「君のつけた足跡は♪長い雨に消えたよ♪」

「なつかしい声♪やさしさは♪いつか星になるでしょう♪」

「夏は一瞬の♪鼓動で時を打つ♪」

「私は生まれた♪」

ワァァァーッ!!

「なんか遊園地でのパレードの時のことを思い出しますね。」

「まぁ、歌ってる曲は違うけどな。っていうかカオリさん本人の生声で『グローリア』を聞くことになるとは……」

カオリの歌う『グローリア』を聞きながら、みゆきとマコトはそう言う。

その後、二人はカオリの歌を聞きながらレアチーズケーキを堪能する。

「ふぅ……」

「美味しかったですね。レアチーズケーキ。」

「あぁ。そうだな……」ゴソゴソ

レアチーズケーキを食べ終えた後、笑顔でそう言うみゆきにそう言いながら、マコトは上着のポケットに手を入れてまさぐり始める。

「?」

「……本当はもう少し後で渡すつもりだったけど……」

「!?これは……」

マコトはそう言いながらみゆきに渡したのは白い羽で囲われた綺麗なピンクのハートのペンダントだった。

「マコトさん。これは……」

「さっきのマミゾウさんの店でおまえにと思って買ったんだよ。おまえは柾のせいで真っ赤になってたけど………」

ペンダントを見ながらそう言うみゆきに対し、マコトは恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言う。

「えっと……似合いますか?」

「お、おう……」

ペンダントを身に付けた後、恥ずかしそうにしながらそう尋ねるみゆきに対し、マコトも恥ずかしそうにしながらそう答える。

「フフ……ありがとうございます♪」

チュッ♪

対するみゆきはそう言いながらマコトにキスをする。

「ッ!?」

「い、今は他のお客さん達はカオリの歌に夢中になってますから……///」

「……たくっ……///」

顔を真っ赤にしながらそう言うみゆきに対し、マコトも顔を真っ赤にしながらそう言う。

(この二人は……目の前にいる私のことを忘れているんじゃないかしら……)

そんな二人を見ながら、アリスがそう思っているなか、二人の微笑ましい初デートの時間は過ぎていった。

尚、この時の様子はサーチャーによって外にいる和也達には筒抜けであり、また、写真や動画も撮られていたのはまた別のお話・・・
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