力の意義

『カセドラル王国』、何処かの公園・・・

「さて、大切な人に手を出した感想はどうかしら?」

辺りに人の気配がない何処かの公園まで来た後、闇梨紗は振り返りながらそう尋ねる。

「ッ……」

「フフフ……結局はあなたも同じなのよ、私と。護りたいものを護るための“力”で護りたいものを傷つける……フフフフ、本当に同じね。」

対するノゾミが思わず辛い表情を浮かべるなか、闇梨紗は不敵な笑みを浮かべながらそう言う。

「フフフ……もうそっちにはいられないんじゃない?周りが赦しても、あなた自身が赦せないでしょ。なら、私と一緒に来ない?」

「!?」

「私と一緒に来た方がその苦しみから逃れられるわよ……どう?」

「………」

「お祖母ちゃんは言っていた……『悪魔の囁きは時として天使の声に聞こえる。』と……」

「「!?」」

闇梨紗が不敵な笑みを浮かべながらそう誘うなか、何処からか、そう言う声が聞こえてくる。

「お祖母ちゃんはこうも言っていた……『人が人を愛すると弱くなる。だが、恥じることはない。何故ならそれは本当の『弱さ』じゃないから。』と……」

「天道さん……」

次の瞬間、何処からか、ノゾミを心配して着けて来ていた天道がそう言いながら現れる。

「ノゾミ。絆とは決して断ち切ることのできない深い繋がりだ。例え、離れていても心と心は繋がっている……姫矢さんやセッテの言葉をもう一度思い出してみろ……」

「………」

(『過去は変えられなくても、未来は変えられるかもしれない。』

『諦めるな!!』

『君が諦めなければ、君に目覚めた『新しい力』も『希望の力』になるかもしれない。』

『この想いがある限り、私は絶対に諦めない……私なんかを友達だと言ってくれたあなたがそうだったように……』

『光は絆だ……君が諦めなければ、その光は誰かに受け継がれ、再び輝く……』

『助けるよ……何時だって、どんな時だって!!』)

「絆、ねぇ……そんなもの、本当にあると思う?私は思わないわ。そんなもの、あるのなら私の佳奈多さんは死ぬことはなかった。絆なんてものがあるなら、仲間が助けてくれた筈だしね……」

ノゾミが姫矢やセッテの言葉を思い出すなか、闇梨紗は不敵な笑みを浮かべながらそう挑発する。

「そのおまえの言う仲間達は本当に佳奈多さんを見殺しにしたのか?」

「……なんですって?」

「おまえと同じように、助けたくても助けられなかったんじゃないのか?そして、佳奈多さんの死を受け入れなかったおまえはそのことを信じきれなかった。佳奈多さんが死んだ後も遺していた『繋がり』をおまえは怒りのあまり、自らの手で断ち切ったんだ。」

「ッ……知った風なことを……言うな!!!」

ドンッ!!

闇梨紗はそう言いながら蝶炎を抜き、天道に斬りかかる。

ガキィィィンッ!!

「「!?」」

「………」

が、いつの間にか天道の前に出たノゾミが龍化させ、NSの風を纏わせた両腕をクロスさせて受け止める。

「くぅ……はあああぁぁぁっ!!」

「!?」

ブオオオォォォーーーッ!!

次の瞬間、ノゾミはそう言いながら両腕に纏わせた風を暴風に変え、闇梨紗を吹き飛ばす。

「はぁ……はぁ……」

「ノゾミ……」

「今度は自分の意思で両腕を龍化させただけでなく、風で私を吹き飛ばすとはね……それで?それがあなたの答えなのかしら?」

吹き飛ばした後、肩で息をするノゾミに対し、闇梨紗は体制を立て直しながらそう尋ねる。

「はぁ……はぁ……あなたの言う通り、私は今でも自分が赦せない……理由はどうあれ大切な人達を傷つけたから……」

「………」

「でも、セッテはそんな私を友達だと言って止めてくれた……こんな弱い私を信じて助けてくれた!!」

「………」

「だから、私も信じてみる……セッテや皆が信じてくれた私自身を……」

「ノゾミ……」

「………」

セッテ、リサ、姫矢、天道の言葉から『皆が信じた自分を信じる』という答えを見出だしたノゾミは迷いが消えた表情でそう言う。

「……流石は『希望』の担い手……考え方がまだまだ甘いわね……」

そんなノゾミが出した『答え』を聞いて、闇梨紗はため息混じりにそう言う。

「……希望や絆なんてくだらない!!この醜い世界においてそんなもの、所詮幻想まぼろしに過ぎないのよ!!!」

ズバァァァンッ!!

闇梨紗はそう言いながら蝶炎を振るい、楝獄を放ってくる。

「ッ!!」

バサァッ!!ズガァァァンッ!!

対するノゾミは龍の翼を出現させ、闇梨紗の楝獄を防ぎきる。

「ッ!?」

「あなたが言うことは正しいんだと思います……人間ヒトはどうしようもないところがいっぱいある不完全な生き物だし、どうしようもないことが常に起こるのが現実です……」

「そうよ。だから、そんな希望や絆なんて幻想に拘ったところで」

「だからこそ、私は諦めたくない!!!」

「ッ!?」

闇梨紗の言葉を遮りながら、ノゾミは真剣な表情でそう言う。

(何故なの……ノゾミ……あなたは私と同じ『護りたかったものを傷つけた者』なのに……)

「………」

「何故、あなたはそう言い切れる?……自分は変わらないと信じられる……?」

「……私が諦めたら……信じられなくなったら、私が私でなくなっちゃう……そうなったらセッテや皆との『繋がり』を……『大切なもの』を本当の意味でなくしちゃう……」

真剣な表情でそう尋ねる闇梨紗に対し、ノゾミはセッテや皆のことを思い浮かべながらそう答えた。
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