力の意義

「………」スッ

「す、すいません……」

そんなノゾミに対し、ナイスガイはハンカチを手渡し、ノゾミはそう言いながら受け取ったハンカチで涙を拭う。

「一つ聞くが、君はその“力”を罰か呪いだとでも思っているのかい?」

「……わかりません……わからないんです……この“力”にどう向き合えばいいのか……」

「ふむ……」

顔を俯かせながらそう答えるノゾミに対し、ナイスガイはそう言いながら抹茶ケーキを食べる。

「……確かに君がしてしまったことは取り返しはつかないことかもしれない……」

「ッ……」

「だが、過去は変えられなくても、未来は変えられるかもしれない……」

「え?」

「俺が自分に言い聞かせ、時には戦友にも聞かせた言葉だ。」スッ

ナイスガイはそう言いながら懐から一枚の写真を取り出す。

その写真には一人の少女が笑顔で映っていた。

「?」

「この子はセラ。俺が行った紛争地域で暮らしていた難民の子どもで……俺が死なせちまった子だ……」

「!?」

「セラは優しく、強い子でな。写真を撮りに行って勝手に戦闘に巻き込まれて負傷した俺を助けてくれた……その後、一緒に暮らす内にセラは俺にとっては『妹』のような存在になった……」

「………」

「だが、戦闘が再開されたある日、カメラマンとしての血が抑えきれなくなった俺はセラの制止を振り切り、戦場に出て悲惨な現場を写真に収めていった……」

「………」

「セラはそんな俺を心配して探し回った結果、攻撃に巻き込まれて爆死した……俺の目の前で……」

「………」

「俺は激しく後悔した。あの時、セラの制止を聞いて、一緒に逃げていればセラは死なずに済んだんじゃないかと……そして、それまで戦場で人の死ばかりを撮ってきた自分に嫌気が刺した……撮った写真の中の人達の中にはもしかしたら助けてあげられた人がいたんじゃないかと……」

「………」

「セラを失ってから何年かした後、俺に怪物と戦うための『光の力』が与えられた……」

「俺は最初、この“力”は俺に課せられた罰だと思った……人々を護るために怪物と戦い、死んでいくことが俺の償いなんだと……」

「………」

「だが、戦いの最中、俺の精神世界に現れたセラがそれは違うと気付かせてくれた。この“力”は『希望の力』、『希望を決して諦めない人達のための力』なんだと……」

「希望の力……」スッ

ナイスガイが言った『希望の力』という言葉を反芻しながら、ノゾミはリサから『龍の力』を制御するために渡された龍石を取り出し、眺める。

「お嬢さん、名前は?」

「ノゾミです。ノゾミ・ナカムラ……」

「ノゾミ・ナカムラ…良い名前だ………」

ナイスガイはそう言いながら抹茶ケーキを食べ終える。

「ノゾミ。君が諦めなければ、君に目覚めた『新しい力』も『希望の力』になるかもしれない……」

「………」

「それともう一つ……」

「?」

「光は絆だ……君が諦めなければ、その光は誰かに受け継がれ、再び輝く……」

「光は絆……」

(『……助けて……助けてっ!!』

『助けるよ……何時だって、どんな時だって!!』)

この時、ノゾミはミラーワールドでのセッテとの会話を思い出す。

「その様子だと君にもいるみたいだな。助けたり、時には助けられたりする仲間ともが……」ガタッ!!

その様子を見たナイスガイは笑顔でそう言いながら立ち上がる。

「ご馳走さん。お勘定はここに置いとくよ。」

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしています。」

「あっ……!!」

そう言いながら店を出ていくナイスガイに対し、ノゾミはそう言いながら慌てて追いかける。

「あの、お客様!!ハンカチ!!とお名前は?」

慌てて追いかけたノゾミはそう尋ねながらハンカチを返そうとする。

「俺は姫矢准。今はただの通りすがりのカメラマンだ。」

対するナイスガイ改め姫矢准は振り返りながら笑顔でそう名乗る。

「姫矢准……さん……」

「やるよ。そのハンカチは。じゃあな。諦めないで立派な光を継いでくれよ。『後輩』。」

「は、はい!!って後輩?」

首を傾げながらもそう返事をするノゾミに微笑みながら、姫矢はその場を去っていった。
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