力の意義

現在、『安らぎの縁側』・・・

「………」

「……最終的に答えを出すのはノゾミだが、俺の方からも助言はしといてやるよ……お祖母ちゃんからの受け売りだが……」

「うん。お願いね。天道君。」

「すいません。この『ブリナタの照り焼き定食』をください。」

「はい。畏まりました。」

ノゾミを見ながらリサと天道がそう話をするなか、革ジャンをハードに着こなした黒髪のナイスガイがそう注文し、ノゾミは笑顔でそう承った。

十五分後・・・

「お待たせしました!!『ブリナタの照り焼き定食』です!!」

十五分後、ノゾミはそう言いながら間宮の作った『ブリナタの照り焼き定食』をナイスガイの前に置く。

ブリナタの照り焼き定食の内容:ブリナタ(ブリによく似た魚)の照り焼き、白米、キュリー(きゅうりのような野菜)の浅漬け、トーフの味噌汁

「おぉ。メニューの写真でも見たが美味そうだ。味噌汁の匂いが懐かしい……」

(懐かしい?)

「それじゃあ、いただきます。」

ナイスガイが言った『懐かしい』という単語にノゾミが首を傾げるなか、ナイスガイはそう言いながら照り焼き定食を美味しそうに食べ始める。

(あ……)

そんななか、ノゾミはナイスガイの近くに置かれてあるカメラを見つける。

「あの。失礼ですが、写真がお好きなんですか?」

「ん?あぁ、まぁ、趣味と仕事の両方といったところだな。色んな所を渡り歩いてはそこで出逢った景色や人達をカメラに収めてるんだ。」

「へぇ~~~」

「お嬢さんも記念に一枚……と言いたいところだが……」

「?」

「いや、どうせ撮るならお嬢さんの本当の笑顔を撮りたいと思ってね。お嬢さん、なんか今、悩んでいるみたいだから……」

「!?」

初対面なのにも関わらず、自分が悩んでいることを見透かしたナイスガイにノゾミは驚愕の表情を浮かべる。

「え?いや、その、なんで……!?」

「色んな人を見て撮ってきたからな。一目見たら多少のことがわかるんだよ。」

「失礼します。デザートの抹茶ケーキです。」スッ

思わず戸惑いを隠せないといった感じでそう言うノゾミにナイスガイが笑顔でそう言うなか、リサがそう言いながら抹茶ケーキをソッと置く。

「ん?頼んでないけど?」

「これはオーナーである私からのサービスです。それともし、お客様がご迷惑でなければ、この子の悩みを少しだけでも聞いてあげてくれませんか?」

「リサさん!?」

突然、ナイスガイにそうお願いをするリサに対し、ノゾミはそう困惑の声を上げる。

「?まぁ、サービスとして抹茶ケーキをご馳走してもらう訳だから俺は構わないけど……」

「ありがとうございます。」

「り、リサさん。私、まだお店の手伝いが」

「店の方は俺やハル、凰翔さん達でなんとか間に合ってるから心配するな。」

「ほらほら。」

突然のお願いを了承するナイスガイに頭を下げながらそう言うリサにそう言うノゾミの言葉を遮りながら、天道がそう言うなか、ハルがそう言いながらナイスガイの正面の椅子を引き、ノゾミをそこに座らせる。

その後、ノゾミ達の会話が他の客達には聞こえないようにリサが然り気無く結界を張る。

(ん?こいつは結界か?)

「あの……なんかすいません……」

リサが張った結界に気付いたナイスガイが密かにそう思うなか、ノゾミはそう謝罪する。

「ん?あぁ、別に大丈夫だ。で、お嬢さんの悩みは?」

「え、え~と……」

完全に話を聞く体制に入ったナイスガイに対し、ノゾミは相談するべきか悩む。

「……私……今はここでお手伝いしているんですけど、ほんの一ヶ月前は魔導師として色々な敵と戦ってたんです……」

が、次の瞬間、ノゾミは詳しくとはいかないものの自分が抱えている苦悩について、話し始める。

「その色々な敵から大切な人達を護るために私は戦ってきました。」

「………」

「でも一ヶ月前、戦いの最中、新しい“力”が目覚めたんですけど、その“力”に意識を持ってかれて……ッ……!!」

その時、ノゾミは肩を震わせ、その瞳からは涙が零れる。

その様子も他の客には見られないよう、リサが結界で密かにカバーする。

「私は……大切な人を三人程、手にかけてしまったんです……ッ!!」

(ん?あれは……)

そんななか、ナイスガイはノゾミのスカートのポケットからはみ出ているエボルトラスターを見つける。

(そうか……この子は今代の『光』の継承者か……)

「幸い、義妹が持っていた不思議な“力”のおかげで三人は一命を取り留めることはできました……でも……ッ!!」ギュッ!!

ノゾミは涙を流しながら、そう言いながら両膝の上に置いた両手を強く握り締める。

「わ、私……大好きな皆を護るためにも強くなろうって頑張ってきたのに……その“力”で皆を傷つけちゃったら……その“力”の意味って一体何なんですか……ッ!?」

「………」

「大好きな皆を傷つける位なら……こんな“力”……ッ!!うぅ……」

感情を抑えきれなくなったノゾミはさらに大粒の涙を流した。
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