夜天の王と二人の帝王

「ッ……ここは……」

気が付くと、セッテはいつの間にか、何処か薄暗い森の中にいた。

イージスエヴァとしての姿も何故か解除されている。

「!?ノゾミと雪那、フェイトさん……ガミジンは!?」

セッテはそう言いながら、すぐさま辺りを見渡す。

が、辺りには誰もいない。

(『友』を助け、護るための“力”を欲するか?)

「!?」

そんななか、頭の中にそう問いかける男の声が聞こえてくる。

(ならば、我が“力”を貸してやろう……汝が我を見つけられれば……)

「この声は一体……」

セッテはそう言いながら、その声に導かれるように森の中を歩き始める。

「!?」

少しすると、黒い肉の柱に辿り着く。

「これは一体……」

セッテはそう言いながら柱に触れる。

パァァァ・・・

「!?」

するとその瞬間、触れた箇所を起点にまたしても光が発生し、セッテはその光に包み込まれる。

「!?」

気が付くと、セッテは今度は白一色の世界にいた。

「一体何がどうなって」

「漸く、我と釣り合う器の主が現れたか……」

「!?」

辺りを見渡しながらそう言うセッテの言葉の最中、先程まで頭の中に聞こえていた声が聞こえてくる。

バサァッ!!

「!?」

「………」

次の瞬間、セッテの目の前にFGOの魔神王ゲーティアを全身黒くしたような怪物が姿を現す。

「セッテ・クロハラ……奴が組んだ組織の元メンバーで今はノゾミ・ナカムラの『友』として生きる道を選び、死を司る龍や封印剣、『進化』にも選ばれた戦闘機人の娘か……『世界』もまたなかなかの者を寄越したものだ……」

「悪魔……ッ!!」

黒ゲーティアもとい悪魔が目を細めながらそう言うなか、セッテはそう言いながらブーメランブレードを出そうとする。

「!?」

が、何故かブーメランブレードが出ない。

それ処かエイラからの応答もない。

「無駄だ。この空間並びに我が生えていたあの森には『世界』が時間を止めて、汝の精神のみを呼び出した。そして、ここは我と対話するための空間……我に戦いの意志がない以上、武器は必要ない……」

「戦いの意志はないって……あなたは一体……」

『戦いの意志はない』と言う悪魔に対し、セッテは困惑しながらそう尋ねる。

「我が名はアンドロマリウス。かつて、ソロモン王に遣えし72柱。序列72位の悪魔である。」

対する悪魔、アンドロマリウスはそう名乗る。

「アンドロマリウス……それが私に一体何の用で」

「ガミジン……」

「!?」

「奴は『Xマジンラー』と手を組み、我らソロモン72柱を裏切った……既に半数以上の同胞達がガイアメモリに変換され、奴に吸収された……」

アンドロマリウスはガミジンに対する怒りをその瞳に宿しながら、セッテに事情を話し始める。

「悪魔の暴走は悪魔が止めねばならん……奴を処罰するために汝ら人間に味方することを決意し、奴を追ってこの世界に来たのだが……」

「だが?」

「その際、『世界』から『人間と契約し、一体化すること』を条件に出されてな。『世界』が選別した契約者に相応しい器の主が現れるまで我は樹の姿となって、あの『世界樹の森』で生えて待っていたのだ。」

「……なるほど……それに私が選ばれたってことですか……」

「今一度聞こう。セッテ・クロハラ……汝は『友』を助け、護るために“力”を欲するか?その“力”で自らの創造主であるジェイル・スカリエッティや二人の『姉』と戦う覚悟はあるか……?」

アンドロマリウスは真剣な表情でそうセッテに問いかける。

「……そんなの……ノゾミと共に生きると決めた時から決めていました……ドクターやウーノ、トーレとも戦う覚悟を……」

対するセッテは強い覚悟を秘めた目で見ながらそう答える。

「……良い眼だ……良かろう。今、此処に汝と契約を交わそう……」

パァァァ・・・

アンドロマリウスがそう言った瞬間、辺りが再び光に包み込まれた。
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