夜天の王と二人の帝王

「ガッ……はぁ……っ!?」

はやてが浴びせたリメンズ・ハーツでの強力な一撃に『佳奈多』の視界が真っ白になる。

徐々に遠退いていく意識のなか、『佳奈多』はその真っ白な世界で今いる次元の本来の『自分』と邂逅した。

『……自分を犠牲にしてまで娘に尽くすなんて……』

『それが『佳奈多』という人間よ。あなただってわかってるでしょ?』

『でも、ここであなたが死んだら、あの子が悲しむわよ?』

『心配いらないわ。私は死なないもの。』

『何故、そう言い切れるの?』

『至って簡単なことよ。娘であるあの子を信じているから。』

『!あぁ……』

この時、『佳奈多』は気付いた。

はやてが『母』を助けることを諦めてはいなかったことを。

最後の強烈な一撃は腰のドライバーのみを斬り裂いていたことを。

そして、ドライバーの破壊と同時に自分は消え、本来の『自分』に身体を返すのだということを。

『佳奈多』は佳奈多に自分の想いを語る。

『あなたは手放すんじゃないわよ。私みたいに。でないと、あの子は私の娘のように道を違えてしまう。』

『わかってるわよ。ヒトならざる身体とはいえ、家族を失う悲しみを知っているあの子を決して悲しませたりはしない……『佳奈多』の名に誓うわ……』

『そう……なら良かったわ……』

現実・・・

パァァァ・・・バシュウッ!!ドサッ!!

「!?」

「………」

オーガの中から佳奈多が弾き出される。

パァァァ・・・

次の瞬間、オーガはドライバーと共に光の粒子になって消滅した。

「お母さん!!」

オーガが消滅した後、はやてはそう言いながら佳奈多に駆け寄り、抱き起こす。

「うっ……くっ……はや、て……」

「!?」

対する佳奈多は朦朧とした意識のなか、なんとか双瞼を開け、はやてを見ながらそう言う。

「苦労、かけたわね。はやて……おかげで目が覚めたわ……」

「あ……あぁ……」

はやての眼に思わず涙が浮かび上がる。

「ただいま……はやて……」

「ッ!!お帰りなさい!!」

佳奈多とはやてはそう言いながら互いに抱きしめ合う。

その姿は誰が見ても『親子』の姿だった。

「またしても、私から……家族を奪ったわね……!!」

そんな二人の姿を物陰から見ながら、闇梨紗は苛立ちをあらわにしながらそう言った。
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