「すいません…遅れました……」

その頃、ナカムラ家前で集まっていたティアナ、アインハルト、雪那、クリス、イタチの五人に対し、左手首から脇までの部分に包帯を巻いたノゾミが少しだけ暗い表情をしながら、そう言いながら屋敷から出てくる。

「良いわよ、別に。気にしないで。」

「っていうか大丈夫か？顔色悪いぞ。」

そんなノゾミにティアナが優しい笑顔でそう言うなか、クリスがそう尋ねてくる。

「だ、大丈夫です……あ…」

対するノゾミがそう答えるなか、バランスを崩したのか、よろめきだす。

が、すかさず雪那が支える。

「あ、ありがとう……雪那ちゃん……」

「いえ……」

「おいおい……本当に大丈夫か？」

「……それで遅れた理由は？何かあったのか？」

クリスが心配そうにそう言うなか、今度はイタチがそう尋ねてくる。

「はい……昨日の件で学園から校舎だけでなく先生や生徒、保護者にも被害が出てしまったので暫く休校するという連絡が直接きたので、それを受けると同時に当事者として事情聴取も受けてました………」

対するノゾミは少しだけ分厚いスマホのような通信端末を見せながらそう答える。

「こういった魔法世界にも通信端末（そういったもん）があるんだな……っていうかそういうのって連絡網とかで来るんじゃないのか？」

「………昨日のことで精神的にショックを受けている生徒もいるだろうからってことで、今回は学園からの直接連絡と聞き取りということらしいです……」

通信端末を見ながらそう尋ねるクリスに対し、ノゾミは辛そうな表情でそう答える。

「ッ……そう、だな……悪いことを聞いた………」

対するクリスはノイズが出す被害の深刻さを知っているだけに罰が悪そうな表情でそう謝罪する。

「い、いえ、クリスさんが謝ることじゃ……あれ？シャトラさんは？」

「絶賛会議中よ。フェイトさんが倒れた以上、シャトラさんが仕切るしかないからね。」

「そう、ですか……」

そう答えるティアナの言葉に、ノゾミは再び暗い表情を浮かべながらそう言う。

ポンポン

「……“力”も使い方次第だってわかったでしょ？私もヒナタ教官から散々叩き込まれたわ。『誰かを護る“力”は、見方を変えれば誰かを傷付ける“力”。常に自分を客観的に見ることを忘れるな。』ってね。」

そんなノゾミに対し、ティアナは頭をポンポンしながら優しい笑顔でそう言う。

「常に自分を客観的に見る……」

「さて、ノゾミもまだまだ本調子じゃないだろうし、少しだけゆっくりしながら行きましょうか。」

そうして六人は学園へと向かっていく。

「………」

その際、イタチはノゾミの後ろ姿をじぃ…っと見つめていた。