「そ、そうですか……(ﾎﾞｿｯ)あまり深追いしない方が良いのかも……」

『まぁ、そういう訳で申し訳ないが、オラクル細胞についてはここまでで良いだろうか？』

月音がそう言って呟くなか、スカリエッティは改めてそう確認してくる。

「あ。はい、お願いします。」

「「………」」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

対する月音がそう返事すると同時に二体のぬいぐるみを食べるのを再開する。

『では、続いて『ソロモン因子』について、説明するが……ネビュラガスのことは知っているね？』

「はい。ビルドの世界にあるスカイウォールから発生したガスですね。人体に注入すると細胞分裂が起こされて、スマッシュという怪人に変えます。そして、戦兎さん達の使うフルボトルの成分の元にもなっているものです。」

そんな二体を他所にそう確認してくるスカリエッティに対し、月音は真剣な表情でそう答える。

『そう。そのネビュラガスにソロモンが『オラクル宇宙』と呼ばれる次元に存在する、有機物・無機物問わずに侵食し凶暴化させる特性を持つ因子…ダーカー因子を組み合わせて開発したものがソロモン因子だ……』

『一度でも触れれば侵食され、ソロモンを強化していくと同時に奴の傀儡へと変質させる厄介な因子だ。』

「なるほど……厄介な因子ですね……」

『あぁ、この因子とオラクル細胞、そしてTウイルス系統のウイルスを掛け合わされて作られたウイルスだ……適合でもしていなければ、怪物に変異するのは優に想像できる……』

『先日、スカリエッティが説明した通り、フェイト執務官が変異しなかったのは不幸中の幸いだな。』

ソロモン因子についての説明を聞いた後、真剣な表情でそう言う月音に対し、スカリエッティとⅥ世も真剣な表情でそう言う。

「「………」」

その間、バナナパフェを食べ終えたぬいぐるみ二体は慣れた手つきで協力しながら、空（から）になったグラスを台所へと運んでいく。

(慣れている……)

『正直、このウイルスだけならフェイト執務官のNS（ニューシード）でどうにかできたんだろうが……』

「？あのぅ……昨日も少しだけ話に出ましたが、そのにゅーしーどって何ですか？魔力とかとまた違うんですか？」

そんな二体を見ながらシャトラが密かにそう思うなか、ため息混じりにそう言うスカリエッティに対し、月音は首を傾げながらそう尋ねる。

『シャトラ君。』

「ふむ……話すにも長い上にまだ解明されてない部分もあるからな………一言で言うなら『極限状態の人間が発現する異能』。イメージによって左右される強力な魔法のようなものだ。」

スカリエッティにそう振られたシャトラは真剣な表情でそう説明する。

「！？イメージに左右される強力な魔法……」

「本来なら他所からの干渉系や毒に強い耐性があり、即座に無力化できる筈なんだが………」

『だが、今回はウイルスと共に組み込まれていたこのナノマシンが発する力場によって、フェイト執務官のNSが抑制されているようだ……』

ヴゥンッ！！

スカリエッティがそう言った次の瞬間、今度は小さなマシンが映し出された空間モニターが展開される。

「ナノマシン……」

『仮の名として『Satan（サタン）』とでも名付けようか……このSatanにはNSを抑制する力場…A-NS（アンチ・ニューシード）力場と云える特殊な力場を発生させるプログラムが施されていた……』

『同時に投与された人間の脳内物質に干渉して、ある衝動を増幅させるプログラムも施されていることがわかった……』

「ある衝動？」

Ⅵ世が口にした『ある衝動』について、月音は首を傾げながらそう言う。

『……所謂（いわゆる）破壊衝動というやつさ……』

そんな月音に対し、スカリエッティは苦々しい表情でそう言った。