目を逸らしていたもの
「零斗についてはこれぐらいで良いか……次は……」
シャトラはそう言いながら今度はデスガンの姿が映し出された画像を展開する。
「……これ……本当に人間?」
「人間だな。『『死』に取り憑かれた』が頭にくるが……こいつはデスガン。本名はザザ・ステルベン。先に説明した白馬零斗や御劔燐と同じ転生者で前世では仮想と現実の区別がつかず、現実でPKを気取って四人の人間を殺害した殺人鬼だ。」
「殺人鬼……」
「奴は仮想 でもPKをしていた。普通のゲームなら、それも醍醐味だろう。だが、奴がしていたのはゲームオーバーと死が直結していた、謂わばデスゲームと化したVRMMOだった……」
「ゲームオーバーと死が直結したゲーム……」
「だから、奴が実際に何人殺したかはわからないんだ。私の父も当時、プレイヤーとしてそのゲームの中にいたが、かなり手を焼いたと聞いている……」
「なるほど……ですが、ゲームオーバーすると現実で死ぬというのはどうしてなんですか?聞く限りだとバグスターが関係しているようにも思えないし……」
「それはこれが原因さ。」
ヴゥンッ!!
首を傾げながらそう尋ねる月音に対し、シャトラはそう言いながら新たに空間モニターを展開する。
そのモニターには頭がすっぽり入る程の大型のヘルメットのようなマシンが映し出されている。
「?これは……?」
「これは『ナーヴギア』。先程話したVRMMO、『ソードアート・オンライン』をプレイするのに使われた機器だ。プレイヤーは現実でこれを装着してベッド等で横たわった状態でゲームに接続することでプレイすることができる。」
ナーヴギアを見ながら首を傾げる月音に対し、シャトラは説明を始める。
「原理としては延髄付近で肉体から脳への神経パルスがブロックされ、同時にナーヴギアが作り出した五感情報を電磁パルスで脳に送り込むことによって仮想世界にフルダイブすることができる。」
「え~と……」
「要するに意識が完全にゲームの世界に入り込み、現実の肉体は所謂植物状態になるシステムだ。」
「あー、と……つまり、精神の死が肉体に影響するってやつですか……?」
「いや。このナーヴギアにはある三つの条件の内、どれか一つでも満たされれば起動する厄介なシステムが搭載されているんだ。」
「三つの条件?」
「一つ、仮想世界内のアバター のHPが0になる。
一つ、現実でナーヴギアと電源若しくはゲームとの回線が切れてから一定時間が経過した場合。
一つ、現実で第三者によってナーヴギアを強引に外そうとした場合。
この三つの内、どれが一つでも満たされればナーヴギアから定格以上の高出力の電磁パルスが送られて脳が焼かれてしまうんだ……電子レンジのようにな……」
「……は?」
「まぁ、そんな反応になるのも無理はない……普通の感覚で見ればイカれてるとしか言えない、悪魔の発明だ………」
「………」
ナーヴギアの狂気のシステムに月音が思わず真顔になるなか、腕のなかにいるりゅーきもおやつを咥えたまま固まる。
(……戦兎さん達が近くにいなくて良かった……)
「どうしてこんな馬鹿げた発明を……」
「真意は開発者しか知らないし、その開発者もラスボスとして討たれて死んだ以上、真相は闇の中だ。悪魔のような開発とは言ったが、ナーヴギアは当時最先端の技術で、多くの人が期待を持っていた。規格情報からも、電子レンジにして人を殺せる等、誰も考えつかなかった。
その上、開発者は世界的にも天才と評される程の人物だった。だから事件が起きるまで、誰も疑っていなかったそうだ。」
りゅーきを撫でながらそう尋ねる月音に対し、シャトラは父親から聞いた当時のことを語る。
「それでも、彼が産み出した技術は引き継がれた。ナーヴギアも多少性能を落としつつも安全性を確保したアミュスフィアが作られた。最先端医療機器のメデュキボイド…………結局はダイナマイトと同じだ。発明は、使い手によって天使にも悪魔にもなる……」
「………」モグモグ
「!使い手によって天使にも悪魔にもなる……」
りゅーきが再び食べ始めるなか、月音はそう言いながら取り出したディリンクのライドカードを見つめる。
(戦兎さんのハザードトリガーも最初はただの暴走装置でしかなかったけど、諦めなかった戦兎さんがフルフルラビットタンクボトルを作ったことで真にビルドの強化アイテムになったし。その後もエボルトの野望を阻止するために活躍したもんな……)
「『ソードアート・オンライン』がクリアされた後もPK…『殺人』の快楽に魅入られてしまった人間が何人もいる。その内の一人がデスガンだ。」
月音がそう思っているなか、シャトラはそう説明した。
シャトラはそう言いながら今度はデスガンの姿が映し出された画像を展開する。
「……これ……本当に人間?」
「人間だな。『『死』に取り憑かれた』が頭にくるが……こいつはデスガン。本名はザザ・ステルベン。先に説明した白馬零斗や御劔燐と同じ転生者で前世では仮想と現実の区別がつかず、現実でPKを気取って四人の人間を殺害した殺人鬼だ。」
「殺人鬼……」
「奴は
「ゲームオーバーと死が直結したゲーム……」
「だから、奴が実際に何人殺したかはわからないんだ。私の父も当時、プレイヤーとしてそのゲームの中にいたが、かなり手を焼いたと聞いている……」
「なるほど……ですが、ゲームオーバーすると現実で死ぬというのはどうしてなんですか?聞く限りだとバグスターが関係しているようにも思えないし……」
「それはこれが原因さ。」
ヴゥンッ!!
首を傾げながらそう尋ねる月音に対し、シャトラはそう言いながら新たに空間モニターを展開する。
そのモニターには頭がすっぽり入る程の大型のヘルメットのようなマシンが映し出されている。
「?これは……?」
「これは『ナーヴギア』。先程話したVRMMO、『ソードアート・オンライン』をプレイするのに使われた機器だ。プレイヤーは現実でこれを装着してベッド等で横たわった状態でゲームに接続することでプレイすることができる。」
ナーヴギアを見ながら首を傾げる月音に対し、シャトラは説明を始める。
「原理としては延髄付近で肉体から脳への神経パルスがブロックされ、同時にナーヴギアが作り出した五感情報を電磁パルスで脳に送り込むことによって仮想世界にフルダイブすることができる。」
「え~と……」
「要するに意識が完全にゲームの世界に入り込み、現実の肉体は所謂植物状態になるシステムだ。」
「あー、と……つまり、精神の死が肉体に影響するってやつですか……?」
「いや。このナーヴギアにはある三つの条件の内、どれか一つでも満たされれば起動する厄介なシステムが搭載されているんだ。」
「三つの条件?」
「一つ、仮想世界内の
一つ、現実でナーヴギアと電源若しくはゲームとの回線が切れてから一定時間が経過した場合。
一つ、現実で第三者によってナーヴギアを強引に外そうとした場合。
この三つの内、どれが一つでも満たされればナーヴギアから定格以上の高出力の電磁パルスが送られて脳が焼かれてしまうんだ……電子レンジのようにな……」
「……は?」
「まぁ、そんな反応になるのも無理はない……普通の感覚で見ればイカれてるとしか言えない、悪魔の発明だ………」
「………」
ナーヴギアの狂気のシステムに月音が思わず真顔になるなか、腕のなかにいるりゅーきもおやつを咥えたまま固まる。
(……戦兎さん達が近くにいなくて良かった……)
「どうしてこんな馬鹿げた発明を……」
「真意は開発者しか知らないし、その開発者もラスボスとして討たれて死んだ以上、真相は闇の中だ。悪魔のような開発とは言ったが、ナーヴギアは当時最先端の技術で、多くの人が期待を持っていた。規格情報からも、電子レンジにして人を殺せる等、誰も考えつかなかった。
その上、開発者は世界的にも天才と評される程の人物だった。だから事件が起きるまで、誰も疑っていなかったそうだ。」
りゅーきを撫でながらそう尋ねる月音に対し、シャトラは父親から聞いた当時のことを語る。
「それでも、彼が産み出した技術は引き継がれた。ナーヴギアも多少性能を落としつつも安全性を確保したアミュスフィアが作られた。最先端医療機器のメデュキボイド…………結局はダイナマイトと同じだ。発明は、使い手によって天使にも悪魔にもなる……」
「………」モグモグ
「!使い手によって天使にも悪魔にもなる……」
りゅーきが再び食べ始めるなか、月音はそう言いながら取り出したディリンクのライドカードを見つめる。
(戦兎さんのハザードトリガーも最初はただの暴走装置でしかなかったけど、諦めなかった戦兎さんがフルフルラビットタンクボトルを作ったことで真にビルドの強化アイテムになったし。その後もエボルトの野望を阻止するために活躍したもんな……)
「『ソードアート・オンライン』がクリアされた後もPK…『殺人』の快楽に魅入られてしまった人間が何人もいる。その内の一人がデスガンだ。」
月音がそう思っているなか、シャトラはそう説明した。