目を逸らしていたもの

現在、『アトラン王国』、街中・・・

「それで……そのお母さんとお腹の中の赤ちゃんはどうなったの……っ!?」

十六年前の『ナナシ村』で自然的なパンデミックに巻き込まれた商人一家の妊婦のことについて、セッテは切羽詰まった表情でそう尋ねる。

「……緊急でやった帝王切開手術のおかげで赤ちゃんは無事だったけど……体力が弱っていたのか、母親はダメだった……」

「そんな……」

対する彩夏から出た結果に対し、セッテは愕然とした表情でそう言う。

「……ジュン君のお父さんから言われたよ。『あんたがもっと早く来て、感染の拡大を防いでくれていたら妻も助かっていた筈だ!!』ってね……」

当時のことを思い出したのか、彩夏は軽くうつむきながら、左腕の二の腕の部分を強く握りしめながらそう言う。

「で、でも、義母さんが薬を作ったから赤ちゃんは助かったんだし、他にもたくさん助かった人が……」

そんな彩夏に対し、セッテはそう言いながら擁護しようとする。

「……医療も戦闘も一緒で被害者からすれば、もっと早く来てくれていれば犠牲者は少なかった……そう言われるんだよ………」

「そんな……」

悲しそうな表情でそう言う彩夏の言葉にセッテはショックを受けながらそう言う。

(そういえば……私達も『レリック事件』の時……)

が、かつて、自身も含めた『ナンバーズ』と創造主であるスカリエッティが引き起こした事件、『レリック事件』又は『JS事件』の時、本局の動きが遅かったことで侵攻が上手く進んだことを思い出し納得してしまった。
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