目を逸らしていたもの
三日後、教会の一室・・・
「うぅ……っ!?はぁ……はぁ……」
「ッ……」
それから完成させたウイルス薬で感染した村人達を回復させていってから三日後の昼頃、教会の一室にて、顔色を青くしながら、苦しそうにしながらベッドに横たわる水色のロングヘアーの女性…ジュンの母親であるキラリ・ジィールの膨れた腹部を目にした彩夏は思わず息を呑む。
(まさか、ジュン君のお母さんが妊娠していたなんて……!!)
「ッ……」
彩夏はそう思いながら自分の手にあるウイルス薬が入った注射器を見つめる。
(この三日間でこのウイルス薬が妊娠中の母親に及ぼす影響がどれくらいなのか、まだ調べられてない……)
「うっ!?うぅぅぅっ!?あぁっ!?……っ……」
「!?」
彩夏がそう思案するなか、キラリは高熱に魘されながら苦しみの声を上げた後に意識を失う。
ポゥ……
直後、ベッドの近くにある机の上にある、『人魔界大戦』から六年の間に彩夏達、『メイキングシスターズ』が開発した医療用の水晶が映し出しているキラリの心拍数が更に低下する。
ズズズ……
更に右腕の噛み跡から始まり、右足まで進行していた土色への変色が進む。
「ッ!!」
(これ以上迷っている暇はない!!)
「必ず……助けるから……っ!!」
そんなキラリの状態を見て、彩夏はそう思いながら、小さな声でそう言いながら右腕にある傷跡に注射針を刺し、抗ウイルス薬を投与する。
「うっ!?うぅ……っ!?」
シュウウウ……
すると次の瞬間、キラリはマリーやこれまでの患者達と同様に苦悶の表情を浮かべると同時に変色していた肌の色が蒸気を上げながら元に戻っていく。
「うっ……すぅ……すぅ……」
肌の色が完全に元に戻ると苦悶の表情を浮かべていたキラリの寝顔が穏やかなものへと変わり、呼吸も落ち着く。
水晶が映し出している心拍数も安定する。
「……ふぅ……」
そんなキラリの様子を見て緊張の糸が切れたのか、彩夏はそう言いながら近くにある椅子に凭れかかるように腰を下ろす。
「……せめて、『万能やっくん』を使えたら……」
腰を下ろした後、彩夏は静かにそう呟く。
六年前、彩夏はあらゆる病気や傷を回復させる万能薬…『万能やっくん』の開発に成功し、『メイキングシスターズ』の仲間の一人であり、友人である梨紗の故郷である『地球 』で十七歳以前の記憶を失い、下半身不随と盲目の状態で治療不能と診断されていた梨紗の母親の失われた記憶以外の病状を全快させた過去があった。
が、それによって不治の障害から回復したことに対しての世間の反応を目の当たりにした梨紗から『現行の医療技術を遥かに凌駕した技術の産物であり、場合によっては医療バランスの崩壊による破滅を招きかねない』と指摘され、現在まで使用を禁じられていた。
「……あの時の梨紗っち、凄く疲れた顔してたな…………開発者として、世界への影響も考えないといけない、か…………」
椅子に凭れかかりながら、天を仰ぐようにしながらそう呟いた後、彩夏は改めて横になっているキラリの顔色を窺う。
キラリはこれまでの患者達と同様に穏やかに眠っていた。
(とりあえずは大丈夫みたいだね……)
「……おやすみ……元気な赤ちゃんを産んでね………」
そんなキラリの寝顔を確認した後、彩夏は小さい声でそう呟きながら部屋を後にする。
廊下・・・
「お姉ちゃん!!」
「『紅き閃光者』様……妻の容態は………」
廊下に出た彩夏に対し、ジュンと父親である金髪に眼鏡を掛けた男性、タイト・ジィールがそう話しかける。
「薬を投与した結果、容態は安定しました……今は穏やかに眠っています……」
「そうですか……よかった……」
「ッ……」
「『紅き閃光者』様!?大丈夫ですか!?」
そんななか、よろけた彩夏に対し、その場にいた騎士がそう話しかける。
「大丈夫です……一時間ほど仮眠を取りますのでここはお願いして良いですか?」
「はい。わかりました。」
そうして彩夏は仮眠室へと向かっていった。
「お姉ちゃん……」
「奥様のお顔をご覧になられますか?」
そんななか、騎士がそうタイトに話しかけてくる。
「はい、お願いします。」
「では、こちらで防護服の着用をお願いします。」
「わかりました。行くぞ、ジュン……」
「あっ、うん……」
そうしてジィール親子は騎士の案内で近くにある、防護服がある部屋へと向かった。
「うぅ……っ!?はぁ……はぁ……」
「ッ……」
それから完成させたウイルス薬で感染した村人達を回復させていってから三日後の昼頃、教会の一室にて、顔色を青くしながら、苦しそうにしながらベッドに横たわる水色のロングヘアーの女性…ジュンの母親であるキラリ・ジィールの膨れた腹部を目にした彩夏は思わず息を呑む。
(まさか、ジュン君のお母さんが妊娠していたなんて……!!)
「ッ……」
彩夏はそう思いながら自分の手にあるウイルス薬が入った注射器を見つめる。
(この三日間でこのウイルス薬が妊娠中の母親に及ぼす影響がどれくらいなのか、まだ調べられてない……)
「うっ!?うぅぅぅっ!?あぁっ!?……っ……」
「!?」
彩夏がそう思案するなか、キラリは高熱に魘されながら苦しみの声を上げた後に意識を失う。
ポゥ……
直後、ベッドの近くにある机の上にある、『人魔界大戦』から六年の間に彩夏達、『メイキングシスターズ』が開発した医療用の水晶が映し出しているキラリの心拍数が更に低下する。
ズズズ……
更に右腕の噛み跡から始まり、右足まで進行していた土色への変色が進む。
「ッ!!」
(これ以上迷っている暇はない!!)
「必ず……助けるから……っ!!」
そんなキラリの状態を見て、彩夏はそう思いながら、小さな声でそう言いながら右腕にある傷跡に注射針を刺し、抗ウイルス薬を投与する。
「うっ!?うぅ……っ!?」
シュウウウ……
すると次の瞬間、キラリはマリーやこれまでの患者達と同様に苦悶の表情を浮かべると同時に変色していた肌の色が蒸気を上げながら元に戻っていく。
「うっ……すぅ……すぅ……」
肌の色が完全に元に戻ると苦悶の表情を浮かべていたキラリの寝顔が穏やかなものへと変わり、呼吸も落ち着く。
水晶が映し出している心拍数も安定する。
「……ふぅ……」
そんなキラリの様子を見て緊張の糸が切れたのか、彩夏はそう言いながら近くにある椅子に凭れかかるように腰を下ろす。
「……せめて、『万能やっくん』を使えたら……」
腰を下ろした後、彩夏は静かにそう呟く。
六年前、彩夏はあらゆる病気や傷を回復させる万能薬…『万能やっくん』の開発に成功し、『メイキングシスターズ』の仲間の一人であり、友人である梨紗の故郷である『
が、それによって不治の障害から回復したことに対しての世間の反応を目の当たりにした梨紗から『現行の医療技術を遥かに凌駕した技術の産物であり、場合によっては医療バランスの崩壊による破滅を招きかねない』と指摘され、現在まで使用を禁じられていた。
「……あの時の梨紗っち、凄く疲れた顔してたな…………開発者として、世界への影響も考えないといけない、か…………」
椅子に凭れかかりながら、天を仰ぐようにしながらそう呟いた後、彩夏は改めて横になっているキラリの顔色を窺う。
キラリはこれまでの患者達と同様に穏やかに眠っていた。
(とりあえずは大丈夫みたいだね……)
「……おやすみ……元気な赤ちゃんを産んでね………」
そんなキラリの寝顔を確認した後、彩夏は小さい声でそう呟きながら部屋を後にする。
廊下・・・
「お姉ちゃん!!」
「『紅き閃光者』様……妻の容態は………」
廊下に出た彩夏に対し、ジュンと父親である金髪に眼鏡を掛けた男性、タイト・ジィールがそう話しかける。
「薬を投与した結果、容態は安定しました……今は穏やかに眠っています……」
「そうですか……よかった……」
「ッ……」
「『紅き閃光者』様!?大丈夫ですか!?」
そんななか、よろけた彩夏に対し、その場にいた騎士がそう話しかける。
「大丈夫です……一時間ほど仮眠を取りますのでここはお願いして良いですか?」
「はい。わかりました。」
そうして彩夏は仮眠室へと向かっていった。
「お姉ちゃん……」
「奥様のお顔をご覧になられますか?」
そんななか、騎士がそうタイトに話しかけてくる。
「はい、お願いします。」
「では、こちらで防護服の着用をお願いします。」
「わかりました。行くぞ、ジュン……」
「あっ、うん……」
そうしてジィール親子は騎士の案内で近くにある、防護服がある部屋へと向かった。