目を逸らしていたもの

翌日、彩夏の部屋・・・

「………」

あの後、自室に戻ってからも不安からか、徹夜でフェイで何度も分析作業を繰り返した彩夏は疲労から机に突っ伏すように眠りに就いていた。

ガチャッ!!

「『紅き閃光者』様!!」

「!?どうしました!?」

が、慌てた様子でそう言いながら入ってきた騎士に飛び起きながらそう尋ねる。

「昨日、『紅き閃光者』様が薬を投与なさった、村長のご息女が」

「ッ!?」

「『紅き閃光者』様!?」

が、そう言う騎士の言葉の最中、彩夏は思わず部屋を飛び出し、慌ててマリーの寝室へと急ぐ。

(まさか、失敗した!?あれだけ何度も検証したのにまさか……っ!!?)

ガチャッ!!

「マリーさん……ッ!?」

不安と焦りを隠せないまま、彩夏はそう言いながら入る。

が、彩夏の目に入ってきたのはベッドの上で上半身を起こし、父親に抱きしめられている娘の姿だった。

「………」

「あ……『紅き閃光者』様!!」

「『紅き閃光者』様!!娘が……っ!!」

その光景を見て思わず固まっている彩夏に対し、マリーは笑顔でそう話しかけ、村長も涙を流しながらも笑顔でそう話しかける。

「はぁ……はぁ……さ、先程は村長のご息女が無事に目を覚ましましたということをお伝えに来たんですが………」

「……は、はは……そ、そうだったんですか………」

「「「『紅き閃光者』様!?」」」

その直後、後から追いかけてきた騎士の言葉で緊張の糸が切れたのか、その場でへたりこんだ彩夏に対し、マリーと村長、騎士の三人はそう言いながら駆け寄る。

「大丈夫ですか!?『紅き閃光者』様!!」

「………」

駆け寄った後、そう言いながら顔を覗き込んでくるマリーの容態を、彩夏は冷静に観察する。

昨日までは蒼白かったのがすっかり健康的な顔色に変わり、息づかいもまだ少しだけ荒いものの安定していた。

(良かった……薬の開発が成功したんだ……)

「……大丈夫です。ちょっと腰が抜けちゃっただけで……」

マリーの容態を診て内心安堵しながら、そう言いながら立ち上がる。

「『紅き閃光者』様。」

「……薬は昨夜までにある程度の量を精製できてますのですぐに他の方達への投与の準備にかかります。こちらは素材のリストですので確保の方をお願いします。」

立ち上がった後、彩夏はそう言いながらリストを記したメモ紙を騎士に手渡す。

「は、はい!!」

「『紅き閃光者』様……どうか村をお救い下さいませ……」

「お願いします……」

メモ紙を受け取った騎士がそう言いながら退出するなか、村長は手を合わせながら、頭を深々と下げながらそう言う。

娘のマリーも同じように深々と頭を下げながらそう言う。

「ッ……最善を尽くします……」

対する彩夏は真剣な表情でそう言いながら退出した。
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