目を逸らしていたもの
「ジィール商会?この村にある商会ですか?」
騎士が口にした『ジィール商会』について、彩夏は首を傾げながらそう尋ねる。
「あ、いえ、この村に拠点を置いている訳ではなく、一家で行商人を営む小さな商会なんですが、今はこの村に訪れていたがために今回の事態に巻き込まれてしまいまして………」
「その一人息子がどうしてこんな所に?」
そんな彩夏に騎士がそう説明するなか、別の騎士がそう少年に尋ねる。
「お花……具合が悪そうにしているお母さんにあげたくて………」
対する少年はそう言いながら手にしていた花を掲げる。
「ッ!?これはっ!!?」
少年が掲げて見せたその花を見て、彩夏は驚愕と困惑が入り雑じった表情を浮かべる。
その花は朧気な記憶ではあるが6年前、自身がトリップ転生する前にプレイしたことのあるゲームで見た、数々のバイオハザードを引き起こしたウイルスの大元であるウイルスを生み出す花に酷似していた。
(これってまさか、始祖花!?ということはやっぱりTウイルスの路線は近い筈……っ!!)
「これって何処で見つけたの!?」
「え、えっと、あっち……」
動揺を隠せないままそう尋ねる彩夏の様子に困惑しながら、少年はそう言いながら指差す。
「誰か!森の地図を持ってませんか!?」
「は、はいっ!!」
彩夏がそう尋ねると、一人の騎士が困惑しながらも地図を取り出して広げる。
「えっと……現在、我々がいるのはこの地点ですね……」
「君、え~と……」
「……ジュン……」
「ジュン君、地図はわかる?」
「……わかる……」
「じゃあ、その花はどこら辺で採れたか、わかる?」
騎士に地図を広げてもらい現在地を確認した後、彩夏は少年改めジュンにそう尋ねる。
「え~と……ここら辺……」
「!?最初にゾンビとなった村人が確認された場所と近いですね……」
「ッ………」
(やっぱりこの花が……っ!!)
「『紅き閃光者』様。この花に何か原因があるのでしょうか?」
対するジュンが指差した場所が、最初のゾンビが確認された場所と近いということに胸の内にある疑惑を更に募らせる彩夏に対し、騎士の一人はそう尋ねる。
「それはまだわかりませんが、念のためにこの周辺は人が立ち入らないようにしてください。」
「わかりました。」
「ジュン君。せっかく採ってきたその花、ちょっとお姉ちゃんに譲ってくれないかな。」
「え?でも、この花は………」
「今すぐには無理だけど、お母さんには代わりに良いものをあげるから。」
「……本当?」
「うん。約束だよ。」
彩夏はそう言いながら左手の小指を差し出す。
「……わかった……」
ジュンもそう言いながら左手の小指を差し出し、彩夏の小指と絡ませる。
「絶対、約束だからね。」
「うん。約束。」
そうして二人は指切りをする。
「それでは、この子はご自宅まで安全にお送りします。」
「お姉ちゃん、またねぇ~。」
「うん、またねぇ~。」
そうしてジュンは一人の騎士に連れられてその場を後にする。
「……念のためにあの子にも隠密で一人、監視を着けといてください。」
「わかりました。」
彩夏は騎士の一人にそう指示ながらジュンから譲り受けた花を外気に触れないように透明な筒状の特殊ケースに入れ、霊安壕で採取した血液と皮膚片と同じように白い金属製の鞄に仕舞う。
「私はすぐさまこの花と今回の事態の関連性について、調べてみます。」
「了解しました。先程の少年や家族に対する監視や花が群生しているであろう地点への封鎖の手配はお任せください。」
そうして彩夏もその場を後にし、急ぎ村長宅へと向かった。
騎士が口にした『ジィール商会』について、彩夏は首を傾げながらそう尋ねる。
「あ、いえ、この村に拠点を置いている訳ではなく、一家で行商人を営む小さな商会なんですが、今はこの村に訪れていたがために今回の事態に巻き込まれてしまいまして………」
「その一人息子がどうしてこんな所に?」
そんな彩夏に騎士がそう説明するなか、別の騎士がそう少年に尋ねる。
「お花……具合が悪そうにしているお母さんにあげたくて………」
対する少年はそう言いながら手にしていた花を掲げる。
「ッ!?これはっ!!?」
少年が掲げて見せたその花を見て、彩夏は驚愕と困惑が入り雑じった表情を浮かべる。
その花は朧気な記憶ではあるが6年前、自身がトリップ転生する前にプレイしたことのあるゲームで見た、数々のバイオハザードを引き起こしたウイルスの大元であるウイルスを生み出す花に酷似していた。
(これってまさか、始祖花!?ということはやっぱりTウイルスの路線は近い筈……っ!!)
「これって何処で見つけたの!?」
「え、えっと、あっち……」
動揺を隠せないままそう尋ねる彩夏の様子に困惑しながら、少年はそう言いながら指差す。
「誰か!森の地図を持ってませんか!?」
「は、はいっ!!」
彩夏がそう尋ねると、一人の騎士が困惑しながらも地図を取り出して広げる。
「えっと……現在、我々がいるのはこの地点ですね……」
「君、え~と……」
「……ジュン……」
「ジュン君、地図はわかる?」
「……わかる……」
「じゃあ、その花はどこら辺で採れたか、わかる?」
騎士に地図を広げてもらい現在地を確認した後、彩夏は少年改めジュンにそう尋ねる。
「え~と……ここら辺……」
「!?最初にゾンビとなった村人が確認された場所と近いですね……」
「ッ………」
(やっぱりこの花が……っ!!)
「『紅き閃光者』様。この花に何か原因があるのでしょうか?」
対するジュンが指差した場所が、最初のゾンビが確認された場所と近いということに胸の内にある疑惑を更に募らせる彩夏に対し、騎士の一人はそう尋ねる。
「それはまだわかりませんが、念のためにこの周辺は人が立ち入らないようにしてください。」
「わかりました。」
「ジュン君。せっかく採ってきたその花、ちょっとお姉ちゃんに譲ってくれないかな。」
「え?でも、この花は………」
「今すぐには無理だけど、お母さんには代わりに良いものをあげるから。」
「……本当?」
「うん。約束だよ。」
彩夏はそう言いながら左手の小指を差し出す。
「……わかった……」
ジュンもそう言いながら左手の小指を差し出し、彩夏の小指と絡ませる。
「絶対、約束だからね。」
「うん。約束。」
そうして二人は指切りをする。
「それでは、この子はご自宅まで安全にお送りします。」
「お姉ちゃん、またねぇ~。」
「うん、またねぇ~。」
そうしてジュンは一人の騎士に連れられてその場を後にする。
「……念のためにあの子にも隠密で一人、監視を着けといてください。」
「わかりました。」
彩夏は騎士の一人にそう指示ながらジュンから譲り受けた花を外気に触れないように透明な筒状の特殊ケースに入れ、霊安壕で採取した血液と皮膚片と同じように白い金属製の鞄に仕舞う。
「私はすぐさまこの花と今回の事態の関連性について、調べてみます。」
「了解しました。先程の少年や家族に対する監視や花が群生しているであろう地点への封鎖の手配はお任せください。」
そうして彩夏もその場を後にし、急ぎ村長宅へと向かった。