目を逸らしていたもの

『霊安壕』、出入り口付近・・・

「シゲゾウさんの検死が終わりました。」

「「『紅き閃光者』様!!」」

「“ピュアシャイン”と『鑑定』をお願いします。」

「はいっ!“ピュアシャイン”!!」

パァァァ……

『霊安壕』から出てきた彩夏の指示に従い、魔法使いが彩夏に身体に付着している汚れを取り除く光の初級魔法、“ピュアシャイン”をかけ、騎士が彩夏から事前に手渡されていた、『鑑定機能』のあるタブレットのような形状の端末を取り出し、彩夏に状態異常がないかを確認する。

ピピッ!!

「鑑定結果、出ました……お身体に付着している菌やウイルス反応なし。状態異常も反応なし。体温と心拍数も正常値で問題ありません。」

「ありがとうございます。」

端末の画面に表示された鑑定結果を読み上げる騎士に対し、彩夏はそうお礼を言いながら魔法使いに浄化してもらった防護服を脱ぐ。

「それでは引き続きお願いします。」

「「はいっ!!」」

そうして彩夏はその場を後にする。

(そういえば、これまでの実験で『タオレン草』と『一角狐』の角、『スマッシュスマッシュルーム』が不足し始めてたな……)

その直後、彩夏は薬を調合するのに必要な素材が不足していることを思い出す。

一角狐:雷を蓄えた一本角を持つ狐。上位種は金の毛並みをしている。角が薬の原材料になり、細胞間の電気信号を誤認させ、非活性化させる性質を持つ。

スマッシュスマッシュルーム:人の頭程の大きさのマッシュルーム。持つ菌が異物を攻撃する白血球のような性質を持ち、摂取すると人体を体内から攻撃する毒になる危険性もある。

タオレン草:嵐の中でも倒れずに耐え続ける翠のほうれん草のような草。葉には活性化している細胞に作用して沈静化させる酵素が分泌されている。

(……村長の所に戻る前にできるだけ採集していくか……)

次の瞬間、彩夏はそう思いながら近くの森の中に入っていった。
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