目を逸らしていたもの

『霊安壕』内部・・・

松明の灯りが照らす石段を下りること十数分後、彩夏は石でできた台座一つ一つに顔に白い布を被せられ、仰向けにした状態で胸の前で手を合わせられた遺体が安置された大広間のような空間に辿り着く。

「シゲゾウさん……これ、お孫さんからだよ……」

辿り着いた後、彩夏はそう言いながら手前の台座に安置されていた老人……シゲゾウの遺体の頭の近くにラベンダーを供え、手を合わせる。

「……シゲゾウさん。貴方の身体、調べさせて下さいね……お孫さんの将来のためにも………」

彩夏はそう言って断りを得てから遺体の首筋に注射器を打つことで血液を抜いて専用の試験管に保存。続いて右腕にあった、他の感染者に噛まれてできたものと思われる傷口からナイフで皮膚片を切り取ってから別の試験管に保存して採取する。


その後、彩夏は試験管を保温性のある白い金属製の鞄に入れ、シゲゾウを含む『霊安壕』で眠っている人達に今一度手を合わせてからその場を後にし地上へと向かった・・・
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