目を逸らしていたもの

三日後、昼、彩夏の部屋・・・

「ッ……このパターンもダメかっ!!」

ガンッ!!

抗ウイルス薬の試作作りに取り掛かってから三日目の昼、既に何百回目かわからなくなった検証の結果に苛立った彩夏は思わず机を叩きながらそう声を荒げる。

ガチャッ!!

「『紅き閃光者』様……」

「!?村長………」

「あの……この事態を打破する薬の生成は難しいのでしょうか………?」

そんななか、部屋に入ってきた村長が不安げな表情でそう尋ねてくる。

「ッ……すいません。なんとかしたいとは思っていますが……マリーさんや他の方は……?」

「マリーは傷口からの変色が左腕全体に拡がっている以外は特に異変はありません……マリーは……」

彩夏からの問いに村長は暗い表情を浮かべながらそう答える。

「ッ………」

(ということは今日も誰か……っ!!)

「……今日は誰が……」

そんな村長の様子に新たな犠牲者が出たことを察した彩夏は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらそう尋ねる。

「今日はシゲゾウさんが……」

「ッ……」

(これで十三人目………)

「昨日と同様、騎士団の方々が対応した後、遺体は『霊安壕れいあんごう』に運ばれました……」

「わかりました、ちょっと行ってきます。」

村長からの話を聞き、彩夏はそう言いながら部屋を後にした。
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