ナカムラ家、ノゾミの部屋・・・

「ハッ！？」

ノゾミにとっては朝から様々な出来事が起きた翌日の朝、ベッドの上で体育座りの体制のまま眠っていたノゾミは飛び起きるように目を覚ます。

「はぁ……はぁ……」

(今のは……夢……)

ノゾミはそう思いながら額の汗を拭う。

「あっ……着替えるの……忘れてた……」

汗を拭った後、改めて昨日の事件の後、着替える気力もなく、制服姿のまま一夜を過ごしていたことに気付いたノゾミはそう言いながら今の自分の制服姿を見下ろす。

制服はすっかりヨレヨレになり、下のYシャツや下着は汗でびっしょりになっていた。

「………」

(『選民思想』………)

「……そういえば……あの二人が言ってたこともそうだったのかも………」

そんななか、ノゾミはそう言いながらハルシオン世界で『あの二人』……呼道勇騎と椿勝利の二人も遠回しながらも指摘していた、『選民思想』についての言葉を思い起こそうとする。

ズキィィィンッ！！

「痛～～～～～っ！！？」

が、順番に思い起こす筈が二人の言葉が二人の険しい表情と共に同時に頭の中を駆け巡ったことで曖昧になってしまい、同時に襲いかかってきた頭痛にノゾミ両手で頭を押さえながら蹲（うずくま）る。

(なんでこんなに痛いの……！？)

「姫！大丈夫ですか！？」

ノゾミがそう思いながら、頭を押さえながら蹲るなか、慌てて人化したノゾミの魔武器の銃剣、 サクラがそう言いながら正面からそっと包み込むようにノゾミの両肩を掴む。

「姫！気をしっかりして下さい！姫っ！！」

両肩を掴んだ後、サクラはそう言いながら落ち着かせようとする。

「ッ！！」

ドンッ！！

「！？」

対するノゾミは突然の頭痛からパニックに陥ったのか、サクラを突き飛ばしてしまう。

ドサッ！！

サクラは突き飛ばされた勢いでベッドから滑り落ち、尻餅を着いてしまう。

「！？ご、ごめんなさい！サクラッ！！」

突き飛ばしてしまった直後、すぐさま正気に戻ったノゾミはそう謝罪しながら、ベッドから降りて駆け寄ろうとする。

ガクッ！！

「！？」

「！？姫っ！！」

ガシッ！！

が、突然、左半身が石のように動かなくなり、前のめりに倒れ込んだノゾミをサクラがすんでのところで受け止める。

「大丈夫ですか？姫……」

「………」

「姫？」

「………」

(『私達は貴女にとって『有益』なものじゃなかったのか？』)

受け止められた後、先程までの頭痛で呆然としているノゾミの脳裏に夢で死者達に言われた言葉が過る。

「……私は……間違っていたの……？」

「姫？」

「サクラ、私は間違っていたの……っ！？」

次の瞬間、恐怖からかノゾミは悲痛な表情でそう尋ねる。

「姫………」

そんな主の姿にサクラは胸が締め付けられる想いに駆られる。

「………その答えは、姫自身が見つけ出さなければなりません。」

「サクラ………」

「思い返してください。そして、ご自分で答えを出してください………私は、どんな答えでも姫と共にいます。」

「………」

(『結局は自分で出さなきゃいけない答えもある。人間（ヒト）としてできること・・・それは自分自身で決めるしかないんだ・・・』

『ノゾミ、今一度よく考えなさい。自分が今まで何のために、何と戦い、何を考え、何を選択してきたかを………』)

優しく包み込むように抱きしめながらそう言うサクラの言葉に、ノゾミは『安らぎの縁側』でお世話になっていた頃に梨紗に言われた言葉と、昨晩、マリアに言われた言葉を思い起こす。

(自分で、出さなきゃいけない答え……わからない、わからないよ。梨紗さん………私は間違っていたの…？マリアさん……)

「……わからない………わからないよ……私の答えが………」

「姫………」

思い起こした後、今にも泣き出しそうな表情を浮かべながらそう吐露するノゾミに対し、サクラはそれ以上何も言わずに静かに抱きしめた。