揺れるココロ

「……そういえば、ツキトとアキ、それと……」

「あ。私はレイラと言います。ツキトの婚約者です。」

「レイラね。三人とも、なんか距離ができているように見えるけど、何かあったのかしら?」

そんな月音の様子に気付いた梨紗がそうツキト達三人に話を振る。

「すいません。こちら側のことなので……」

「……そうか……」

「……あ。そういえば、ここには機械を弄ったり、作ったりできる場所があるんだっけ?」

「あぁwwwあるぜwww『デバイスルーム』って部屋がwww」

(あ。彩ちゃんの草、久しぶりに見たかも……)

「明日からで良いから、俺にも使わせてくれないか?ちょっと作ってみたいものがあるんだ。」

久しぶりに出た彩夏の草に梨紗がそう思うなか、戦兎がそう頼み込む。

「良いよぉー♪」

「………」

「ツキト、悪いけどちょっと手伝ってくれないか?」

「え?あ。はい……」

「………」

戦兎がそうツキトを誘うなか、月音は一口サイズに切った、ホワイトアスパラの肉巻きを丈夫な爪楊枝に刺してりゅーきに渡す。

「♪」

りゅーきはそれを美味しそうに食べる。

「どれ、私も……」

そんななか、月音もそう言いながらホワイトアスパラの肉巻きを一口食べてみる。

(ふむ、確かに龍我さんと戦兎さんの言うようにこの豚肉自体に辛味があって味噌ベースのタレとも合うな……ホワイトアスパラも甘味があって良い。私の知るホワイトアスパラは春か夏が旬なんだがこっちのは『スノウノップス』って名前だし、今が旬なのかも……)

「ところでさっきからずっと気になってけどwwwその普通に食事ができるぬいぐるみは何ぞ?www」

ホワイトアスパラ……正確にはスノウノップスのレッドピッグ肉巻きに舌鼓を打ちながら、月音が冷静に味を分析するなか、彩夏がそうりゅーきについて、尋ねる。

「あ!私達も気になってたデェース!!」

「確か、学園では使い魔みたいなものだって答えてたけど……」

続いて、切歌と美咲もそう言いながらりゅーきを見る。

他の者達も同じようにりゅーきを見る。

「?」

「月音、りゅーきのことをそういう風に説明したのか?」

「この世界ならその説明が一番誤魔化しが利くと思ったので……」

そんな周りからの視線にりゅーきが首を傾げるなか、そう尋ねる龍我に対し、月音はそう答える。

「という訳で生みの親の戦兎さん、後の説明をお願いします。」

「生みの親!?」

「この子、貴方が作ったんデスか!?」

「あ、あぁ、まぁ、俺一人で作った訳じゃないんだけどな……」

興奮しながらそう尋ねる響と切歌に若干気圧けおされながらも戦兎はそう言いながら、りゅーきの誕生秘話について、話し始める。

「まず、こいつの名前はりゅーき。仮面ライダー龍騎をモチーフに俺が五代雄介という人から教わりながら縫って作ったぬいぐるみに、フィリップって奴と相談しながら作った、AIを組み込んだガイアメモリというアイテムを挿入して作ったんだ。月音の護…手伝いをさせるためにな。」

「へぇ~。」

「あははは♪可愛いお手伝いさんデス♪」

「なるほど……貴方と似たようなものですね、ティオ。」

「にゃん。」

戦兎からの説明に響と切歌が目を輝かせながらそう言うアインハルトに対し、ティオはそう言う。

「まぁ、ティオは飲食はできないんだが……りゅーきはどうして飲食ができるんだ?」

「……ガイアメモリを利用した影響……としか言えないな。制作者である俺自身もこいつが飲食できることを知ったのは作った後だし。後、設計当初は稼働エネルギーに限りがあったんだが、こいつはどうやら摂取したカロリーを稼働エネルギーに変換できるらしい。」

そんなアインハルトにそう言ってからそう尋ねるシャトラに対し、戦兎はりゅーきを見ながらそう答える。

「おぉっ!じゃあ、ご飯を食べてたらずっと動いていられるデスね♪」

「って言っても箸やフォークとかは上手く使えないから手掴みできるやつか、一口サイズのやつを丈夫な爪楊枝とかで刺して食べるしかないんだけどな。」

そんな戦兎からの説明に笑顔でそう言う切歌に対し、戦兎はさらにそう説明する。

「なるほど……他に何かある?」

「そうだなぁ……ぬいぐるみだから洗ってやることもできるが、基本は手洗いがお勧めだってことだな……」

「まぁ、りゅーき自身は洗われるの大の嫌いだけどな……」

りゅーきを興味深そうに見ながらそう尋ねる夢羽に対し、戦兎と龍我がそう説明する。

「………」

「セッテ。とりあえずノゾミにご飯を持ってってあげたらどうかしら?」

そんななか、未だにうつむいているセッテに対し、梨紗がそう言って促す。

「!?私が……ですか……?」

「えぇ。流石に飲まず食わずは身体にも精神的にも悪いわ。」

梨紗はそう言いながら卵雑炊が乗ったお盆を手渡す。

「そうです……ね……」

対するセッテはそう言いながら受け取ったお盆を持ってノゾミの部屋へと向かう。

「ひなた、貴女もお願いして良いかしら?」

「わかりました。」

直後、梨紗に頼まれたひなたもそう言いながら席を立ち、セッテの後を追う。

「姉さん、ノゾミは大丈夫なのか?」

「……正直、かなり不安定ね………戦う意義を見失いかけてる。自身の在り方も………」

「かなり不味いな、それは………でも、その答えは………」

「そう…他でもない自分自身で見つけなきゃならない。それまでに時間が待ってくれると良いのだけれど………」

「だよなぁ………」

そんな二人の後ろ姿を見ながら、シャトラと梨紗は密かにそう話した。
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