先人からの言葉

大広間・・・

「世界を滅ぼした後も他の世界に流れていっちゃう技術や兵器………」

「とんでもねぇ話だな……っ!!」

「!?」

マリアの『ロストロギア』に関する説明を聞いて、響とクリスがそう言うなか、セレナは今、自分が抱えている、『サマエルの匣』を入れたポーチを見つめる。

(もしかして、この匣も……っ!?)

「さっき、彩夏さんが話していたジュエルシードもそのロストロギアの一つなんですか?」

「えぇ。ジュエルシードは碧眼の瞳のような形状と色を持った21個の宝石で一つ一つが強大な魔力を宿していて、周囲にいる生物が抱いた願望……願いを叶える性質を持っていると聞いたわ。」

セレナがそう思いながら戦慄するなか、そう尋ねる未来に対し、マリアはそう説明する。

「願いを叶える21個の宝石!?」

「まるでおとぎ話みたいデスね!!」

「ッ……そんな夢みたいなもん………あってたまるか………っ!!」

「確かに……代償は何なんですか?」

マリアのジュエルシードに関する説明を聞いて、響と切歌がそう言い、クリスが若干苛立ちを露にしながらそう言うなか、月音は真剣な表情でそう尋ねる。

(ウィザードの『賢者の石』だって多くの魔力を必要としたが故に生み出される過程でたくさんの人々が犠牲になった……世界は違えど、ジュエルシードだって例外じゃない。世界を滅ぼす程の“力”があるなら尚更だ……)

「代償……というより叶え方に問題があるって言えばいいのかしらね……」

月音がそう推測するなか、マリアはそう答える。

「?」

「?叶え方?」

「デスか?」

「えぇ……フェイトから聞いた話だけど、ジュエルシードは魔力を封印されていない状態だと近くに生物がいるだけでその生物が抱いた願望に勝手に反応して叶えさせるの。それもどこかずれているっていうか歪んだ形でね。」

「一匹の子猫が『大きくなりたい』と思えば、成猫まで成長させるのではなく、怪物並みに巨大化させる。仲良しな二人の少年少女が『二人きりになりたい』と思えば、二人の足元から巨大な木を発生させてその天辺に二人を乗せて上へと伸びていったりとかな。」

マリアの『叶え方に問題がある』という答えに首を傾げる月音、響、切歌の三人に対し、マリアとイタチはそう説明する。

「「えぇ………」」

「なにその規模が大きいイマジン……」

そんな二人の説明に響と切歌が引くなか、月音も引きながらそう言う。

「ハハハッ!なかなか洒落が効いた宝石だな!!」

「思いっきり力業じゃねぇか!!」

「『願いを叶えてる』とは言いませんよ。それ……」

「本当にそういった謂われのあるもんは録なもんがねぇなっ!!」

「イタチさんの世界にもジュエルシードがあったんですか?」

エボルトが笑い、シュガーとフラン、クリスがそうツッコミを入れるなか、未来はそう尋ねる。

「あぁ、まぁな……」

「?あれ?イタチさんの世界……?」

「ッ……色々あってバラバラになってしまったの。それで一部がイタチさんが担当している次元世界にも落ちてしまったの。」

対するイタチがそう答えるなか、未来とイタチの会話に違和感を感じたセレナに対し、マリアは慌ててそう説明して誤魔化す。

「?」

「………」

「とりあえずジュエルシードやロストロギアに関する説明はこれくらいで良いかしら?」

そんなマリアの様子にセレナは不思議そうな表情で首を傾げ、イタチが神妙な表情を浮かべるなか、マリアはそうイタチや響達に尋ねる。

「あぁ、話を戻すが、聖杯とやらは性質としてはジュエルシードと同じものだという認識で良いんだな?」

「はい。」

「膨大な魔力で願いを叶える点から歪んだ形で叶える点まで一緒だよ。」

そんなマリアの言葉にそう返しながら、改めてそう確認するイタチに対し、セイバーと彩夏はそう答える。

「とはいえ、ジュエルシードに比べると聖杯の規模はもっと大きい。それこそ万物を叶えると云われているし、それが邪悪に汚染されてしまえば、より悲惨な形で願いを叶えるんだ………」

続けて彩夏は真剣な表情でそう説明した。
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